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725. 初の戦略・戦術15

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「アル、野郎が逃げやがる。
そのでかぶつはおまえに譲る。いいな!」

誠一はローランに目を向けると自然、目が合った。
ローランの表情は先程と打って変わって、
へらへらした様相から様変わりしていた。
しかし、誠一は怯むことはなかった。
アルフレート・フォン・エスターライヒという
素体の持つ能力と才能に頼ったままであれば、
誠一は気圧されていただろう。
だが、鈴木誠一という男のこの世界での
数年の苦行と努力、経験が彼に恐れを抱かせなかった。

「おう、任されたよ。
あまり時間がかけられないけど、大丈夫?
そっちの男は中々、素早そうだけど大丈夫?」

「俺の眼から逃れられるような奴に
滅多に会うことはないぞ」
自信満々のヴェルであった。

目で追えても身体がついてこなければ、
無意味だと誠一は言いたかったが、
目の前の巨躯が既に動き出していた。
誠一は焦ることなく目の前の難敵へ冷静に対処した。

「丁度良い距離だ。死ねよ、回転賽の目切り」
ローランの斧が幾度も上下左右に鋭く動いた。
並みの戦士であれば、賽の目に刻まれていたであろう。
誠一が一歩下がれば、ローランは斧を振りながら
一歩進んだ。
しかし、斧は空を斬るだけで、誠一を捉える事はなかった。

「頃合いですね。それなりに僕もこのメイスを
振り続けてきたつもりです」
誠一はローランが斧を振り切ったタイミングで
7面メイスを思いっきり振り上げて、脳天目がけて
振り下ろした。

「一点必中、叩き潰せ。星球降下撃」

振り下ろされた7面メイスは、
ローランの眉間を叩いた。
頭部を守っていたヘルムは拉げ、
ローランの頭は前後左右に不規則に揺れていた。
足取りはおぼつかなく、ふらふらと数歩よろめくと、
そのままばたりと倒れた。

「アル、終わったか、止めは後続に任せとけよ。急ぐぞ」

デルヒムは全身血だらけでピクピクしながら、
横たわっていた。

誠一とヴェルはジェミロを追って走り出した。

走り出して直ぐに誠一たちはジェミロに追いついた。
日頃の不摂生が祟って、ジェミロはふらふらしながら、
走っていた。倒す前に既に虫の息のようであった。
二人の眼には歩くよりその速度は遅く見えたが、
当の本人は必至の形相であった。

「あの野郎、幾重にも罠を仕掛けてやがるな。
アル、殺気をビンビンに放っている敵兵が
家屋に隠れていやがる」

誠一は感心していた。
あれが演技だとすると、大したものだと思った。
迫真の演技とは今のジェミロのことを
指すのだろう感じてしまった。

「ホント大したものだよ。
演劇の途にでも進んでいれば、
人々に迷惑をかけずにいたものを」

背中を晒すジェミロがピクリとした。
立ち止まると、肩を怒らせながら振り向いた。
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