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721.初の戦略・戦術11

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「なっなぜ、貴様は立っていられる。
この数百人の生贄によって構築された陣でなぜ、立っている」

「生憎とジェイコブとやらに膝を付く気になれないのでな。
それに最上級の迷宮ではこの程度のことはよくある事。
しかしまあ、噂程に無能ではないな」

悠然と陣を歩いてジェミロの方へ向かうマリアンヌだった。

歩きながら、マリアンヌは右手を身体の中心に当てると
身体の中心より現れた剣の柄を握り、引き出した。
「ここで惨殺された民草の無念。君らに代わって私が晴らそう」

マリアンヌは神剣を地面に突き刺した。
大地が揺れ、ひび割れた。そして魔術陣が砕けた。
「神剣の裁きは貴様に降る。逃げるなよ。
仰々しく己の命をベッドしたと言ったのだからな」

「やっやれ。コロセ。ここに居る奴ら全員、コロセ」
ジェミロの叫びで家屋の屋根に身を潜めていた弓兵が
一斉に姿を現した。

弓兵など気にした素振りもなく、優雅に歩き続ける
マリアンヌだった。
そして、誠一の方を振り向きもせずに
マリアンヌが誠一を叱責した。

「アルフレート・フォン・エスターライヒ。
いい加減覚悟を決めろ。綺麗ごとを並べるだけで、
己の手を汚さずに得られる勝利などない」

「ちっ本当は鬼谷殿やロジェの役どころだろうに
あいつらはアルフレートに甘すぎる」
言い訳じみたことをぶつぶつと言いながらも
歩みを止めないマリアンヌだった。

「おっおい、アル」
ヴェルが心配そうに語り掛ける。

「あっアル」
シエンナも心配そうに語り掛ける。

心の片隅を支配してやまない誠一の倫理観を
抉り出された。
俺に人を殺せるか、常に自問自答していた。
無論、何度も戦に参加している誠一であった。
誠一の知らぬ所で攻撃した相手が
死んでいるかもしれなかった。
しかし、明確な殺意をもって人を攻撃したことはなかった。
仲間にそれを無意識に押し付けていた。
仲間がヤルから良いだろう。動けなくする程度でいいだろう。

それをマリアンヌが全否定し、決断を促した。

誠一は立ち上がった。身体は怠く、ふらついていた。
今、自分はどんな顔をしているのだろうか、
鏡があれば見てみたいものだった。

敵軍より悲鳴じみた声が聞えて来た。

戦場で武器を離す危険な行為であったが、
キャロリーヌは誠一の両肩に両手を置いた。
「アル、見失わないで」

「大丈夫。僕はここに目的があっている。
目的のためには犠牲は付きものだし、
節を曲げることも必要さ。ヴェル、ジェミロを生け捕るよ。
彼には罪を償って貰う。裁くのはここの民衆だ、行くぞ」

それらの一連の会話はほんの僅かな時間であった。

そして、その終わり際にジェミロの叫びに応じて、
数百の矢が放たれた。

「露払いは引き受けるわ。行ってきなさい」

ほんとキャロには敵わないと感謝しつつも
振り向かずにメイスを軽く振り上げた。

誠一の動きに応じる様にシエンナは、
全てを遮る氷の壁を展開した。

「氷壁よ。襲い来る全ての侵入を防げ」

「全ての敵を乱れ討つ、五月雨討ち」
キャロリーヌが敵弓兵に向けて、弓の技を放った。
高度な技を見せられて、それだけで格の違い感じて
敵弓兵は萎縮してしまった。
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