転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

697.気持ち2

誠一は、烈気の中心部に向かって、
ゆっくりと慎重に足を運んだ。
誠一の目にエヴァニアが映った。
誠一はほっとして、緊張が解けた。

その瞬間、誠一の右頬に一筋の血が噴き出た。

一瞬の間を置いて、誠一は激しい痛みを感じた。

「なっ何をする」
誠一は千晴より貰った回復薬を頬にかけた。
一瞬で傷は消失した。しかし、ズキズキとする痛みは残っていた。

「おバカな子だねぇ。
これほどの敵意を向けられて尚、警戒を解くとは。
首筋だったら、死んでいたところだよ」

「まさか帰宅直後、本当にここを訪れるとはねえ。
ファウスティノ、あなたの言う事が的を射たってことかい」

誠一の返答を待たずに話続けるエヴァニアであった。
しかし、誠一にはどう考えてもエヴァニアの怒りを
買った理由に思い当たる節がなかった。

ふわりとした空気が誠一とエヴァニアの間に現れた。
「もうよさぬか、エヴァニア。
賭けはわしの勝ちであろう。
矛を収めよ。それとも神に誓った賭けに
偽りありじゃということかのう」

エヴァニアが大きくため息をついて、肩を落とした。
「仕方ありません。ファウスティノ、賭けはあなたの勝ちです」

司祭が賭け事などしていいものだろうかと
誠一は思ってしまった。

「まったくこの坊やは真面目なのかどうなのか」
エヴァニアが誠一の内心を見透かしたように
再び、ため息をついた。

「いえ、賭け事と言っても射幸心を
極端に煽るものでなければ、
問題ないのではないでしょうか」
誠一は元の世界での長い歴史を誇るパチンコを
思い出していた。
いい歳をした大人が朝から並んでいる姿を
通学中に目の当りにしていた。
毎日のように同じ顔触れの大人が並んでいた。
ああにはなりたくないと思っていた。

「そうじゃのう。
エヴァニア、そう目くじらを立てるものではない。
英雄色を好むというではないか」
ファウスティノはエヴァニアを宥める様に言った。

「ふん、英雄ねぇ。
何もなしていなければ、それは単なる好色と言うんだよ」

いつの間にか誠一を除いた2人で言い争っていた。
その論点は誠一のスケベ根性についてだった。
どう話に割って入っても碌な事にならないことが
容易に想像できた誠一はだんまりを決め込んだ。

じろり、エヴァニアが誠一を睨みつけた。
「だんまりねえ。小利口な選択だよ。
だがそれは英雄の相じゃない。
ファウスティノ、リシェーヌの復活を
アルフレートには期待すべきでない」

いらっイライラ、誠一はいらっとした。
何故、この年老いた司祭は自分を目の敵にしているのだろう。
勝手に期待して、勝手に憤っている。

リシェーヌのことなど知ったことかと
誠一は激発して、叫びそうになった。
そんな誠一の瞳にリシェーヌの悲し気な顔が映った。
一瞬にして誠一は幾分かの冷静さを取り戻した。
危うく馬鹿な事を言う所だったと反省した。

誠一は落ち着きを取り戻すために
大きく息を吸い込み吐いた。

「僕は英雄のような大業を残せない。
だが彼女をリシェーヌを救うのは僕だ」

誠一は力強く断言した。