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686.閑話 とある休日の昼間の情景3

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「清涼さん、ありがとうございます。
色々とすみません。ううん、ありがとう」

「全然、気にしないでいいよ。
そうだね、強いて言うならば、
今はプライベートだし、喬史でいいよ」

千晴は一瞬、呆けてしまった。
その言葉に含まれる彼の思いが
分からない程の子供ではなかった。

千晴は喉を震わして、裏返った声を発した。
「ふっふええ」

何故か清涼が電話越しに呻いていた。
「うっうう」

お互いに電話越しに奇妙な音を奏でていた。

「こほん、その喬史さん」
わざとらしく咳払いをして千晴が話始めた。

「千晴、喬史ね」

「はいはい、喬史。本当に島崎を覚えていないの?
喬史が課長代理に昇格する前の総務・経理部の課長よ」

「千晴、何を言っているんだい。
僕の前任は下川さんだろ。
少し前に健康を崩して退職しだろう。
千晴、もしその島崎という男が暴行を加えようとしたなら、
僕も同行するから、警察に行こう」

千晴も下川のことは良く知っていた。
千晴が入社して一年ほど総務・経理部の課長職に
就いており、指導を受けた上司だった。
しかし、島崎のスキンシップという名の暴力と
役員への讒言により陥れられた。
その結果、心の病を発症して、
退職に追い込まれ人物であった。
風の噂では今でも病に悩まされていると聞いていた。

「下川さんは勿論、知っていますけど。
確か数年前に心の病を患って、退職されましたよね。
確か今でも療養中だと聞いてますよ」

「千晴、少し記憶に混濁か改竄でもされたのかな。
下川さんは、確かに会社を休みがちだったけど、
退職したのは、つい最近だろ。
それに心の病って一体何のことさ、誰に聞いたんだ。
そもそも下川さんは健康を害して、
その治療のためだろう」
清涼の課長代理への昇格とほぼ下川の退職時期は
一致していた。
記憶を改竄されているのはどっちなのだろうか、
千晴は考え込んでしまった。

「千晴、大丈夫かい?
疲れているなら、少し休んだ方が良い。
何かあればいつでも連絡くれていいから」

「うん、ありがとう。少し休みます」
電話を切ると、千晴はベッドに横になった。
千晴は思い出すだけでも身体が自然に震えてしまうが、
島崎が暴行を加えた時のことを思い返した。
確かあの時、『ヴェルトール王国戦記』が何故か起動していた。
そして、何かの拍子に音声入力モードに切り替わっていた。
何故か突然、パッドが発光して、島崎がおかしくなってしまった。

「いやまさかね。そんなことある訳がないよね」
千晴はそう呟いたが、その考えを否定するように
かぶりを振った。
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