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683.氷竜28
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誠一の表情を見たアミラは、慌てて、フォローを入れた。
「ヴェルはあれです、指示したことと
微妙に違う事をするからスケードが逆に疲れるからです。
私には一応、建前上は騎士だから、その立場を
スケードが尊重したからです」
そう言われると誠一は納得せざるを得なかった。
アミラの説明が至極真っ当であったためだった。
「そうだぞ、決していちゃついてたからじゃないぞ」
「ちょっ、ヴェル」
慌ててヴェルを止めようとしたアミラだったが、
既に時遅しであった。
誠一は自分の見解が正しかったと認識した。
「まあいいけど、サリナにはちゃんと謝れよ。
僕は走り去ったシエンナを探しに行ってくるよ」
「大丈夫か?」
「まあ、歩く分には問題なし」
ゆっくりと誠一はシエンナの走り去った方へ歩き始めた。
少し歩くと誠一は額を木に当てて、
ぶつぶつとつぶやいているシエンナを発見した。
木の上の雪が落ちたのだろう。
シエンナの頭部や肩、背中に雪がかかっていた。
よく見ると木が小刻みに振動しているように
誠一の目には映った。
シエンナにしては珍しくかなり誠一が近づいても
気づいていない様だった。
「シエンナ」
「むっアル。ううっ違うから。
さっきのアレはちょっと違うからね」
振り向くと開口一番、シエンナがあたふたと弁解を始めた。
「うん、分かってるからさ。
サリナが1人真面目に作業しているから、
言ってくれたんだろ。
それにまた、ヴェルが反発してってところでしょ。
アミラも反省しているし、戻ろう」
「ヴェルは反省したの?」
釈然としない表情を誠一はシエンナから読み取った。
「ヴェルも当然、反省しているよ。
そもそも奴はシエンナから注意されて、直ぐに反省してるよ。
そういう男だしね。ただまあ」
誠一がそこで言葉を濁した。
しかしシエンナが続きを促した。
「ただまあ、何?」
「あの歳の男児な上にヴェルだし、
ちょっとアミラとのことを言われて、
からかわれていると思って、カチンときたんじゃないかな。
まあ、そういうことだから」
どうやらシエンナに思い当たる節があったのか、
沈んだ顔で俯いてしまった。
誠一はシエンナの左手を取ると歩き始めた。
「戻ろう、シエンナ。
向こうでは火を焚き始めて、昼食の準備を始めたからさ。
少し身体を温めよう。
どうであれ、今回、悪いのはヴェルとアミラだしね。
何事も経験、経験」
誠一は出来るだけ明るい雰囲気なるように努めた。
「うん、ありがと、アル。わっ」
誠一が雪の敷き詰める途を突然、
シエンナの握っている手を大きく振り回しながら、
スキップを踏み出した。
「わわっ、アル。ちょっともう」
苦笑しながらもそれに合わせてシエンナも
スキップを踏み出した。
強く踏み込まれた雪は、ぐっと沈み込んで、
直ぐに二人は足を取られて、転んでしまった。
「痛たたっ」
まだ、節々の痛む誠一は雪をベッドして、
大の字になり、呻いた。
同じように雪の上に寝転ぶシエンナは、
心配そうに誠一の顔を覗き込んだ。
誠一が大きく深呼吸をすると、
2人は顔を見合わせて大きな笑い声をあげた。
「ヴェルはあれです、指示したことと
微妙に違う事をするからスケードが逆に疲れるからです。
私には一応、建前上は騎士だから、その立場を
スケードが尊重したからです」
そう言われると誠一は納得せざるを得なかった。
アミラの説明が至極真っ当であったためだった。
「そうだぞ、決していちゃついてたからじゃないぞ」
「ちょっ、ヴェル」
慌ててヴェルを止めようとしたアミラだったが、
既に時遅しであった。
誠一は自分の見解が正しかったと認識した。
「まあいいけど、サリナにはちゃんと謝れよ。
僕は走り去ったシエンナを探しに行ってくるよ」
「大丈夫か?」
「まあ、歩く分には問題なし」
ゆっくりと誠一はシエンナの走り去った方へ歩き始めた。
少し歩くと誠一は額を木に当てて、
ぶつぶつとつぶやいているシエンナを発見した。
木の上の雪が落ちたのだろう。
シエンナの頭部や肩、背中に雪がかかっていた。
よく見ると木が小刻みに振動しているように
誠一の目には映った。
シエンナにしては珍しくかなり誠一が近づいても
気づいていない様だった。
「シエンナ」
「むっアル。ううっ違うから。
さっきのアレはちょっと違うからね」
振り向くと開口一番、シエンナがあたふたと弁解を始めた。
「うん、分かってるからさ。
サリナが1人真面目に作業しているから、
言ってくれたんだろ。
それにまた、ヴェルが反発してってところでしょ。
アミラも反省しているし、戻ろう」
「ヴェルは反省したの?」
釈然としない表情を誠一はシエンナから読み取った。
「ヴェルも当然、反省しているよ。
そもそも奴はシエンナから注意されて、直ぐに反省してるよ。
そういう男だしね。ただまあ」
誠一がそこで言葉を濁した。
しかしシエンナが続きを促した。
「ただまあ、何?」
「あの歳の男児な上にヴェルだし、
ちょっとアミラとのことを言われて、
からかわれていると思って、カチンときたんじゃないかな。
まあ、そういうことだから」
どうやらシエンナに思い当たる節があったのか、
沈んだ顔で俯いてしまった。
誠一はシエンナの左手を取ると歩き始めた。
「戻ろう、シエンナ。
向こうでは火を焚き始めて、昼食の準備を始めたからさ。
少し身体を温めよう。
どうであれ、今回、悪いのはヴェルとアミラだしね。
何事も経験、経験」
誠一は出来るだけ明るい雰囲気なるように努めた。
「うん、ありがと、アル。わっ」
誠一が雪の敷き詰める途を突然、
シエンナの握っている手を大きく振り回しながら、
スキップを踏み出した。
「わわっ、アル。ちょっともう」
苦笑しながらもそれに合わせてシエンナも
スキップを踏み出した。
強く踏み込まれた雪は、ぐっと沈み込んで、
直ぐに二人は足を取られて、転んでしまった。
「痛たたっ」
まだ、節々の痛む誠一は雪をベッドして、
大の字になり、呻いた。
同じように雪の上に寝転ぶシエンナは、
心配そうに誠一の顔を覗き込んだ。
誠一が大きく深呼吸をすると、
2人は顔を見合わせて大きな笑い声をあげた。
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