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665.氷竜10
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「ふむ、鞘が見当たらないと思ってはいたが、
まさか、その肉体が鞘であったか。
これはこれでまた、面白き技でござる」
剣豪は愉快そうであった。
「ふん、貴様の持つ刀に比べれば、
大したものではないだろうよ。
さっさと刀を抜け。参戦しろよ」
マリアンヌはバスターソード程のサイズの剣を
片手で軽々と弧を描くように動かすと、
氷竜に向かって動き出した。
「氷塔、1、2,3番。ちょっと早過ぎるわよ。4,5番」
シエンナの唱える魔術により氷竜の前に
次々と隆起する氷の塊は、氷竜の爪によって瞬時に破壊された。
「くそっシエンナのあれが瞬殺かよ。
こりゃあ、かすっただけでも大怪我だぞ」
ヴェルは竜尾を避けながら、傷ついた氷竜の右前足を
狙うが全く近づくことができなかった。
氷竜の攻撃を受けるとこはそのまま死を意味していた。
誠一たちは避ける事しか対処の手段がなかった。
「はああっ落ちよ堕ちよ無数の矢よ、
この地を覆い尽くせ、五月雨討ち」
キャロリーヌの技は無数の矢を氷竜に空から振り落とした。
氷竜は不快気に空を仰ぎ、炎を吐いた。
矢玉は瞬時に燃え尽きて、黒い灰は白い雪に
混じって舞い落ちて来た。
「くっ炎も吐けるのか」
誠一は呻いた。誠一の声を捉えた氷竜が嘲笑った。
『当たり前であろう。竜種が炎を吐くのは自然の摂理』
吹雪は後天的に得た能力ということを誠一は理解した。
しかし理解しただけで、何の解決にもならないことを
誠一は認識していた。
最前線で動き回るロジェやアミラ、サリナに
吹雪でなく炎が襲いかかった。
広範囲に放たれた竜のブレスを避けて逃げる場所はなかった。
「あー全くもう。ウォーターシールド。
氷壁よ、襲い来る全ての侵入を防げ。アイスシールド。
我、告げる深青の魔石よ。込めた我が力をここに顕現せよ」
光さえも闇さえも吸い込むような深青色の魔石が
内包する魔力の全てを吐き出す様に青く輝いた。
シエンナが日々、込めていた魔力が一気に
解放されて、ウォーターシールドとアイスシールドを
強化した。
「あの氷竜のブレスを防げるのは今の一回だけよー」
シエンナが全員に届くように声高く叫んだ。
氷竜の動きが止まっていた。
氷竜は渾身の一撃とも言える力を込めて発した炎が
防がれるとは想像だにしていなかった。
黒ずみすら残らぬほどに焼き尽くし、
その場に存在していたことすら認識できない程に
燃やし尽くし、魂すら燃やしつく程の炎のはずであった。
『一匹すら、この世から消滅させることができぬとは、
微睡みの刻が長すぎたということか』
氷竜は嘆息した。
まさか、その肉体が鞘であったか。
これはこれでまた、面白き技でござる」
剣豪は愉快そうであった。
「ふん、貴様の持つ刀に比べれば、
大したものではないだろうよ。
さっさと刀を抜け。参戦しろよ」
マリアンヌはバスターソード程のサイズの剣を
片手で軽々と弧を描くように動かすと、
氷竜に向かって動き出した。
「氷塔、1、2,3番。ちょっと早過ぎるわよ。4,5番」
シエンナの唱える魔術により氷竜の前に
次々と隆起する氷の塊は、氷竜の爪によって瞬時に破壊された。
「くそっシエンナのあれが瞬殺かよ。
こりゃあ、かすっただけでも大怪我だぞ」
ヴェルは竜尾を避けながら、傷ついた氷竜の右前足を
狙うが全く近づくことができなかった。
氷竜の攻撃を受けるとこはそのまま死を意味していた。
誠一たちは避ける事しか対処の手段がなかった。
「はああっ落ちよ堕ちよ無数の矢よ、
この地を覆い尽くせ、五月雨討ち」
キャロリーヌの技は無数の矢を氷竜に空から振り落とした。
氷竜は不快気に空を仰ぎ、炎を吐いた。
矢玉は瞬時に燃え尽きて、黒い灰は白い雪に
混じって舞い落ちて来た。
「くっ炎も吐けるのか」
誠一は呻いた。誠一の声を捉えた氷竜が嘲笑った。
『当たり前であろう。竜種が炎を吐くのは自然の摂理』
吹雪は後天的に得た能力ということを誠一は理解した。
しかし理解しただけで、何の解決にもならないことを
誠一は認識していた。
最前線で動き回るロジェやアミラ、サリナに
吹雪でなく炎が襲いかかった。
広範囲に放たれた竜のブレスを避けて逃げる場所はなかった。
「あー全くもう。ウォーターシールド。
氷壁よ、襲い来る全ての侵入を防げ。アイスシールド。
我、告げる深青の魔石よ。込めた我が力をここに顕現せよ」
光さえも闇さえも吸い込むような深青色の魔石が
内包する魔力の全てを吐き出す様に青く輝いた。
シエンナが日々、込めていた魔力が一気に
解放されて、ウォーターシールドとアイスシールドを
強化した。
「あの氷竜のブレスを防げるのは今の一回だけよー」
シエンナが全員に届くように声高く叫んだ。
氷竜の動きが止まっていた。
氷竜は渾身の一撃とも言える力を込めて発した炎が
防がれるとは想像だにしていなかった。
黒ずみすら残らぬほどに焼き尽くし、
その場に存在していたことすら認識できない程に
燃やし尽くし、魂すら燃やしつく程の炎のはずであった。
『一匹すら、この世から消滅させることができぬとは、
微睡みの刻が長すぎたということか』
氷竜は嘆息した。
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