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652.指名依頼2
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今の状況を目の当たりにした受付の女性は
ヴェルと誠一が前に立つと、あからさまに怯えた。
「掲示板に依頼票が全くないんだけど、全く依頼ないの」
ヴェルがぞんざいな態度で尋ねた。
「いえ、その依頼はありますが、
その非常に危険な依頼が一件あります」
受付の女性の身体が若干、震えていた。
「おう、それでいいから。見せてよ」
ヴェルが依頼内容の開示を求めた。
誠一は、後方から沢山の嫌な視線を感じた。
無論、ヴェルも感じているはずだった。
しかし、全く気にした素振りもせずに話を続けた。
その視線を諸に受ける女性の震えは更に大きくなった。
一枚の依頼票を震えながら差し出した。
誠一とヴェルは依頼表に目を通した。
『霊峰氷山の山脈にある氷の雫の入手
・指名依頼:アルフレート・フォン・エスターライヒ
(備考)依頼未達の場合、2級降格』
「おい、アル。これって氷竜の涙の事だろ。
これいいじゃん!しかも指名依頼だぞ」
誠一はこの依頼の出された経緯にどうもきな臭さを感じた。
「うーん、どうしよう。どうも何か怪しくない?
降格条件が明示されているよ。
それにB級へ昇格してそれほど間がないのに指名依頼があるとか
あり得なさそうだけどね。しかも依頼者が伏せられている」
ヴェルも依頼表の細部に目を通し始めた。しかし、結論は同じだった。
「まっいいじゃんね。どうせA級を目指すなら、避けて通れないし」
ヴェルは、話を続けた。
「それに『戦神に集いしなんちゃら』をぶちのめした時に
ある程度、A級に必要となる実力は分かったじゃんかよ。
今の俺らなら挑戦する価値があるだろ」
誠一は決断した。
「この依頼を受けます」
息を飲んだまま、受付嬢は固まってしまった。
誠一たちの後方ではごくりと唾を飲み込む者、
凝視する者、様々であったが、誰一人声を上げなかった。
淀んだ空気はそのままにその場で身動き一つしない者たちに
纏わりついた。
「あっああ、あい」
受付嬢は何とか依頼受理の処理を行った。
誠一は爽やかな笑顔を彼女に零した。
「あなたが気にすることはありません。
これは僕がクランのリーダーとして、
そしてそれをサポートする右腕の男が決めた事です。
そこには誰の意図も誰かの悪意も反映されていません。
依頼達成の連絡をお待ちください」
「はひ」
ほのかに頬を染める受付嬢だった。
「ったく姉貴とシエンナで満足しろよな、この軟派野郎が」
ヴェルが誠一の肩を軽く叩くと立ち上がった。
「まっお姉さん、そんな感じだからよ。
この程度の依頼、さっさと片づけると
依頼者に伝えておいてくれ。それとだ!」
ヴェルは振り返って、冒険者たちを睨みつけた。
「ここにいる腰抜けどもに言うぞ。
この受付嬢に何かしらの嫌がらせをしてみろ。
戻っていたら、ただで済むと思うなよ」
ヴェルの気迫に抗する者は誰もおらず、
視線を泳がすばかりだった。
誠一はそっと受付嬢の方を見た。
受付嬢の熱い眼差しを見て、誠一は、ったく軟派野郎は
どっちだよと誠一は毒づいた。
ヴェルと誠一が前に立つと、あからさまに怯えた。
「掲示板に依頼票が全くないんだけど、全く依頼ないの」
ヴェルがぞんざいな態度で尋ねた。
「いえ、その依頼はありますが、
その非常に危険な依頼が一件あります」
受付の女性の身体が若干、震えていた。
「おう、それでいいから。見せてよ」
ヴェルが依頼内容の開示を求めた。
誠一は、後方から沢山の嫌な視線を感じた。
無論、ヴェルも感じているはずだった。
しかし、全く気にした素振りもせずに話を続けた。
その視線を諸に受ける女性の震えは更に大きくなった。
一枚の依頼票を震えながら差し出した。
誠一とヴェルは依頼表に目を通した。
『霊峰氷山の山脈にある氷の雫の入手
・指名依頼:アルフレート・フォン・エスターライヒ
(備考)依頼未達の場合、2級降格』
「おい、アル。これって氷竜の涙の事だろ。
これいいじゃん!しかも指名依頼だぞ」
誠一はこの依頼の出された経緯にどうもきな臭さを感じた。
「うーん、どうしよう。どうも何か怪しくない?
降格条件が明示されているよ。
それにB級へ昇格してそれほど間がないのに指名依頼があるとか
あり得なさそうだけどね。しかも依頼者が伏せられている」
ヴェルも依頼表の細部に目を通し始めた。しかし、結論は同じだった。
「まっいいじゃんね。どうせA級を目指すなら、避けて通れないし」
ヴェルは、話を続けた。
「それに『戦神に集いしなんちゃら』をぶちのめした時に
ある程度、A級に必要となる実力は分かったじゃんかよ。
今の俺らなら挑戦する価値があるだろ」
誠一は決断した。
「この依頼を受けます」
息を飲んだまま、受付嬢は固まってしまった。
誠一たちの後方ではごくりと唾を飲み込む者、
凝視する者、様々であったが、誰一人声を上げなかった。
淀んだ空気はそのままにその場で身動き一つしない者たちに
纏わりついた。
「あっああ、あい」
受付嬢は何とか依頼受理の処理を行った。
誠一は爽やかな笑顔を彼女に零した。
「あなたが気にすることはありません。
これは僕がクランのリーダーとして、
そしてそれをサポートする右腕の男が決めた事です。
そこには誰の意図も誰かの悪意も反映されていません。
依頼達成の連絡をお待ちください」
「はひ」
ほのかに頬を染める受付嬢だった。
「ったく姉貴とシエンナで満足しろよな、この軟派野郎が」
ヴェルが誠一の肩を軽く叩くと立ち上がった。
「まっお姉さん、そんな感じだからよ。
この程度の依頼、さっさと片づけると
依頼者に伝えておいてくれ。それとだ!」
ヴェルは振り返って、冒険者たちを睨みつけた。
「ここにいる腰抜けどもに言うぞ。
この受付嬢に何かしらの嫌がらせをしてみろ。
戻っていたら、ただで済むと思うなよ」
ヴェルの気迫に抗する者は誰もおらず、
視線を泳がすばかりだった。
誠一はそっと受付嬢の方を見た。
受付嬢の熱い眼差しを見て、誠一は、ったく軟派野郎は
どっちだよと誠一は毒づいた。
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