650 / 825
狂乱の王
しおりを挟む
ヴェルトール王国はダンブルの反乱を契機に
乱世の様相を呈していた。
王国に与する者、ダンブルの元に馳せ参じる者、
世の趨勢を日和見する者、機と見て独立する者、様々であった。
そんな中で王を僭称する一人の男が突然、
倒れてベッドに臥せっていた。
近臣たちは王を囲み、固唾を飲んで見守った。
純粋に王の回復を望むのばかりではなかったが、
どの臣下も表面上は深刻そうに表情を繕っていた。
呻き声は次第に小さくなり、王が寝息を立てはじめると
侍従と侍女に任せて、近臣たちは下がった。
翌日、王は目覚めると、朦朧とした中で玉座に座った。
王の無事を喜ぶ臣下たちは、様々な表情と言葉で祝った。
「王ヨ、よくぞご無事」
「おおっ、王の帰還だ」
「我が王は、不死身だ」
王は手渡された銀色のコップを見つめたままだった。
臣下は王の言葉を待ち、静まった。
王は一口、液体を口に含むと、立ち上がり
侍従に伴われて寝室に戻った。
王は寝室で一人になると、自分の手で身体中を触り、
鏡の前で裸になった。
「見知らぬ身体だ。これはどういうことだ」
素っ裸でベッドに転がると、
脳に浮かび上がる記録を読み上げた。
この王と呼ばれる男の人生の記憶以外に
クラスSR、残虐・拷問行使・舞踊・礼儀作法・
剣士・鈍足・精力絶倫・騎乗・貴族の矜持・享楽主義といった称号や
能力値が浮かび上がって来た。
「なんだ一体、なんなんだ、これは。
くそっ佐藤の野郎、何をしでかしやがった」
喚きたてていると、ドアをノックする音が聞えた。
「なんだ、何のようだ」
「お食事を用意いたしました」
言われて、腹が妙に減っていることに気が付いた。
入るように促すと、若い侍女が入室した。
侍女を眺めると、ごくりと唾を飲んだ。
佐藤程ではないが、男好きする女であった。
それはつまり、自分の好みの女であった。
記録によれば、俺は王でこの城で
やりたい放題できるはずであった。
テーブルに食事を配膳する侍女に近づくと、
腕を掴み、ベッドに引きずり込んだ。
侍女は少し抵抗する素振りを見せた。
「お戯れを。病み上がりにございます」
嫌がる侍女に己の欲望の赴くままに振舞った。
一通り欲望を満たすと王は薄笑いを浮かべた。
「くっくっ。記録によれば、王か。
うざったい上司もいなければ、
へつらうための会長や社長もいない。
生意気な部下にはやりたい放題だな。
悪くないな、コレも」
島崎の脳に何かが流れ込んできた。
称号『狂乱の王』を所得しました。
島崎は唸り声をあげて、嫌がる女をもう一度、
ベッドに引き込んだ。
ここに『狂乱の王』が誕生した。
乱世の様相を呈していた。
王国に与する者、ダンブルの元に馳せ参じる者、
世の趨勢を日和見する者、機と見て独立する者、様々であった。
そんな中で王を僭称する一人の男が突然、
倒れてベッドに臥せっていた。
近臣たちは王を囲み、固唾を飲んで見守った。
純粋に王の回復を望むのばかりではなかったが、
どの臣下も表面上は深刻そうに表情を繕っていた。
呻き声は次第に小さくなり、王が寝息を立てはじめると
侍従と侍女に任せて、近臣たちは下がった。
翌日、王は目覚めると、朦朧とした中で玉座に座った。
王の無事を喜ぶ臣下たちは、様々な表情と言葉で祝った。
「王ヨ、よくぞご無事」
「おおっ、王の帰還だ」
「我が王は、不死身だ」
王は手渡された銀色のコップを見つめたままだった。
臣下は王の言葉を待ち、静まった。
王は一口、液体を口に含むと、立ち上がり
侍従に伴われて寝室に戻った。
王は寝室で一人になると、自分の手で身体中を触り、
鏡の前で裸になった。
「見知らぬ身体だ。これはどういうことだ」
素っ裸でベッドに転がると、
脳に浮かび上がる記録を読み上げた。
この王と呼ばれる男の人生の記憶以外に
クラスSR、残虐・拷問行使・舞踊・礼儀作法・
剣士・鈍足・精力絶倫・騎乗・貴族の矜持・享楽主義といった称号や
能力値が浮かび上がって来た。
「なんだ一体、なんなんだ、これは。
くそっ佐藤の野郎、何をしでかしやがった」
喚きたてていると、ドアをノックする音が聞えた。
「なんだ、何のようだ」
「お食事を用意いたしました」
言われて、腹が妙に減っていることに気が付いた。
入るように促すと、若い侍女が入室した。
侍女を眺めると、ごくりと唾を飲んだ。
佐藤程ではないが、男好きする女であった。
それはつまり、自分の好みの女であった。
記録によれば、俺は王でこの城で
やりたい放題できるはずであった。
テーブルに食事を配膳する侍女に近づくと、
腕を掴み、ベッドに引きずり込んだ。
侍女は少し抵抗する素振りを見せた。
「お戯れを。病み上がりにございます」
嫌がる侍女に己の欲望の赴くままに振舞った。
一通り欲望を満たすと王は薄笑いを浮かべた。
「くっくっ。記録によれば、王か。
うざったい上司もいなければ、
へつらうための会長や社長もいない。
生意気な部下にはやりたい放題だな。
悪くないな、コレも」
島崎の脳に何かが流れ込んできた。
称号『狂乱の王』を所得しました。
島崎は唸り声をあげて、嫌がる女をもう一度、
ベッドに引き込んだ。
ここに『狂乱の王』が誕生した。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです
かものはし
ファンタジー
この力は危険だからあまり使わないようにしよう――。
そんな風に考えていたら役立たずのポンコツ扱いされて勇者パーティから追い出された保井武・32歳。
とりあえず腹が減ったので近くの町にいくことにしたがあの勇者パーティにいた自分の顔は割れてたりする?
パーティから追い出されたなんて噂されると恥ずかしいし……。そうだ別人になろう。
そんなこんなで始まるキュートな少年の姿をしたおっさんの冒険譚。
目指すは復讐? スローライフ? ……それは誰にも分かりません。
とにかく書きたいことを思いつきで進めるちょっとえっちな珍道中、はじめました。
長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
気づいたら隠しルートのバッドエンドだった
かぜかおる
ファンタジー
前世でハマった乙女ゲームのヒロインに転生したので、
お気に入りのサポートキャラを攻略します!
ザマァされないように気をつけて気をつけて、両思いっぽくなったし
ライバル令嬢かつ悪役である異母姉を断罪しようとしたけれど・・・
本編完結済順次投稿します。
1話ごとは短め
あと、番外編も投稿予定なのでまだ連載中のままにします。
ざまあはあるけど好き嫌いある結末だと思います。
タグなどもしオススメあったら教えて欲しいです_|\○_オネガイシヤァァァァァス!!
感想もくれるとうれしいな・・・|ョ・ω・`)チロッ・・・
R15保険(ちょっと汚い言葉遣い有りです)
未来人が未開惑星に行ったら無敵だった件
藤岡 フジオ
ファンタジー
四十一世紀の地球。殆どの地球人が遺伝子操作で超人的な能力を有する。
日本地区で科学者として生きるヒジリ(19)は転送装置の事故でアンドロイドのウメボシと共にとある未開惑星に飛ばされてしまった。
そこはファンタジー世界そのままの星で、魔法が存在していた。
魔法の存在を感知できず見ることも出来ないヒジリではあったが、パワードスーツやアンドロイドの力のお陰で圧倒的な力を惑星の住人に見せつける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる