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634.神堕ちの儀10

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寝転がり瞳を閉じていたが、
頭に色々なことが浮かび上がって来た。
リシェーヌのことが浮かび上がれば、
次には学生時代のこと、そしていままでの冒険の事。

ふと誠一は暫く千晴から連絡がないことに思い至った。
仕事が忙しくて、ROM専なのか、それとも飽きて
放置なのかと誠一の頭に浮かんだ。
 
元の世界に戻れることに望みが薄いことに誠一は薄々、
気づき始めていた。自分がプレイをしていた時、既に
『ヴェルトール王国戦記』のサイトは一時の勢いを
失って、サイトは過疎気味であった。
突然、ゲームサイトが閉鎖されて、消失することは
避けたかった。
せめて閉鎖の告知あれば、その時期を知りたかった。
こちらの世界からそれを妨害することはできないだろうが、
千晴を介して何かしらのアクションや対応が
出来るかもしれないと一縷の望みは持っていた。

「まったく今日はなんて日だ」
妙な思いばかりが心に浮かび上がってくることに
嫌気が差した誠一はむくりと立ち上がった。

「おいおい、アル、どうした?
一日中、薄暗い場所にいて、一日の感覚があいまいで寝れないのか?
それとも昼の戦闘で暴れ足りなかったか?」

「いやそういう訳じゃなくて、どうも寝付けなくてね」

「まあ好きにしろよ。
だけど寝不足で足を引っ張るのはなしだぞ」

焚き火で映し出された誠一の頭部の影が揺れた。
そのまま誠一の影は薄暗い闇に紛れ込んだ。

「まったく起き上がったり寝転んだりと忙しい奴だな」

ヴェルは嘆息すると一日中変化することのない
薄暗い闇の方へ目を向けた。

洞窟の闇には薪の燃える音と
どこかで湖面に落ちる雫の音が響くだけだった。

しかし、その音のにギリギリという音が混じり始めた。
すぐさま夜警のヴェルとサリナは周囲を見渡して警戒したが、
目を見合わせた。

「ったく姉貴の歯軋りかよ」

「違うわよ、ヴェル。アルフレートみたいよ」

2人は誠一に目を向けた。

「珍しいわね」

「珍しいな」

「起こさなくて大丈夫よね」

「起こさなくて大丈夫だよ」

再び二人は周囲に警戒の目を向けた。
そのうち洞窟の静寂のためにヴェルは強烈な眠気に襲われた。
眠気に抗っていたが、ヴェルの視線は足下の地面に
釘付けになっていた。

「あああっ」

突然、頭を抱えて立ち上がった誠一の影が
地面に釘付けとなっていたヴェルの視界に入った。
虚ろなヴェルの目が影を捉えた。その瞬間であった。

「あああっ」

「なんだどうした何が起こった」

歴然の冒険者とは言えないがそれなりに経験を積んだヴェルは
一瞬で眠気を吹き飛ばし、叫び声の方へ目を向けた。
サリナは既に誠一に近づいていた。
無論、他のメンバーも起き上がっていた。
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