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633.神堕ちの儀9

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誠一はヴェルの勘違いを理解した。
そして、話を続けようとした時、ヴェルが遮った。
「ふふふ」

「アル、気色悪い笑い声を出すなよな」

前方から舌打ちが聞えた。
多分、興味津々で聞き耳を立てているシエンナが
話の腰を折られてイラっとしたのだろう。

「まあ、ヴェル、それはいいとして。
今回の依頼は魔物に逃げられると、
めんどくさいことこの上ない。探さないといけないからね。
だから、魔物を捕獲出来る様に魔石に空郭牢を込めておいたのさ。
まあ、ちょっと熱中してしまって、練り込んだ魔力は
結構な量になってしまったけどね」

ヴェルの興奮は一気に醒めたようだった。
「なんだよう、それか!
まあ、それも悪くないけどよ、いつ魔石を放り投げたんだ」

「どこぞの誰かさんがいきなりファイアスライサーを
放った直後だけど」
にっこりと笑う誠一を見ると、ヴェルは氷の上で後ずさりした。
「うっ。そっそうか。あの時、アルは腕を振り回してたもんな」

「まあ、それはいいけど、ヴェルは
もう少し戦況を見る目を養わないとね。
君の目は優秀だけど、ただ周囲を見るだけでは
節穴と同じだよ」

ヴェルは更に後ずさりした。
その時、つるっと見事にヴェルの足が滑った。

「ヴェル、危ない!」
咄嗟にアミラがヴェルの腰を掴んだ。
しかしそれは絶妙にバランスを取っていたヴェルにとって、
致命的であった。

どぼん、お約束とも言える派手な音と
水しぶきを上げて、2人は湖に落っこちた。
やれやれと思いながら、誠一は手をヴェルへ差し伸べた。
再び、派手な水しぶきが舞い上がった。

ヴェルのしてやったりという表情を見ると、
どうにも起こる気にもならず、笑ってしまった。

湖に落ちた三人は震えながら、対岸に着くと、
キャロリーヌのお説教を受けながら、
サリナが手際よく準備した焚き火と
シエンナの煎じた熱く苦い薬湯で身体を温めた。

「アル、今日はここで野営ね。
まったく3人とも少しは反省して」
キャロリーヌの次にシエンナが愚痴とも説教とも
とれることをねちねちと言い始めた。
耐性のある二人は適当に受け流していたが、
アミラだけは真剣に受け止めているようで
頭を何度も下げていた。

 その日は湖の側で誠一たちは夜を過ごすことにした。
誠一は夜警の当番が最後のために夕食後、
早めに眠りにつこうとしたが、中々、寝付けなかった。

「アル、早く寝ろよ」
ヴェルが焚き火に薪をくべながら、呟いた。

「中々、寝付けなくてね」

「ああ、そうか。そう言う日もあるよな。
俺なんて、学院の筆記試験前はガクブルで
全く寝られないからな」
ちょっと違う気もしたが、誠一は軽く頷いて、
再び瞳を閉じた。
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