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588.狩猟祭13

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突然、莉々視が誠一の方へ向かって
ゆっくりと歩き出した。
歩きながら誰に向かってなのか高らかな声で話し出した。
「神を欺くことも反逆することも大いなる罪。
ただ神の御前にひれ伏すのみ。違える者には神罰が下るのみ」

立ち止まり莉々絵と莉々火を指差した。
「あれは神を侮辱する不信者の末路だ」

「はあ、仕方ない。悪神を欺けるはここまでか。
剣豪様、お願いがございます。
私が神罰に囚われるようでしたら、
一振りで頸を刎ねて頂けないでしょうか?」
莉々は剣を握り、莉々視の方を見た。
「あの娘は既に壊れていますので、此処で眠らせてあげます。
パーティのこと故に手出しは無用に願います」

「ふむ、あいわかった。その位の願いは受けよう。
あの娘は、狂信者や悪魔付きの類でござるか?」

「ふふふ、それならまだましでしょう。
女神を侮辱して惨い神罰が下ったのです。
それに耐え切れなくなって、心が壊れているのです」
 莉々の目から口、鼻から血が流れ出した。
啓示に抗い、異常な苦痛が莉々を襲っているはずであった。
その苦しみを以てしても己の意思を失っていなかった。

「その性根、まっこと見事なり。
願わくば、まっとうな状態で剣を
交わしてみたかったでござる」

「ふふふ、神剣を持った私ならば、
そうそう後れを取ることはないでしょう。
剣豪様とはいえ、それなりに楽しんで頂けたでしょうね」

 ここはプレーヤーの日々の鬱積した日常生活のひずみ、
内に潜む欲望が剥き出る世界なのか。
誠一は糞の様な啓示を下すプレーヤーを嫌悪した。

『千晴さん、お願いだ。
目の前の見るに堪えない茶番劇を終わらせるように
プレーヤーに伝えてくれ。
そして、彼女達をプレーヤーから解放させてくれ』
神の声は誠一の願いにいつまで経っても応えなかった。

 この光景はサリナの目にも映っていた。
莉々奈を抑えつける力が次第に弱くなっていた。

啓示に抗って、自我を失わない。

容易にその苦痛から逃れるため神にいいように
されていたサリナにとって、そのことは驚嘆に
値することであった。
サリナに長らく神の啓示が下されることはなかった。
既に神は自分から去ったのだろう。
ふとサリナがそう思った瞬間、自然と身体が動いていた。

「あっサリナ駄目だ。やめるんだ」
そんなアルフレートの声が聞えたような気がしたが、
サリナは動きを止めなかった。

サリナはネックレスを外すと莉々の首にかけていた。
「これを付ければ少しは楽になりますぅぅう、うわわっぁ」
突然、サリナの心は溢れんばかりの啓示で満たされた。
それらの言葉の奔流に抗える訳もなく、
サリナは毒の塗布された短刀を引き抜き、誠一に襲いかかった。
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