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571.それぞれの思惑10

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「先生、私に改めてご指導ご鞭撻をお願い申し上げます」
剣豪の性格をそれなりに知っているラムデールは
殊勝な態度で頭を下げた。
それを横目にファブリッツィオを同じように
頭を下げたが、やや尊大であった。

「まあいいでしょう。
ファブリッツィオはもう少し物を頼む時、殊勝なりなさい。
少々、おごりが見えます。後で読みなさい」
二人の分も用意してあったのだろう。剣豪は二人に巻物を手渡した。

「アル、武器の強化ってことは、
ソルテールのラッセルさんのところに行くのか?」
ヴェルの問いに誠一は即答せずに思案した。
悪くないが、彼の製作する武器はどうも斬新過ぎる
というか使い手を選ぶ物ばかりであった。
ロジェやキャロリーヌの武器は奇を衒わずに
強化された武具の方が良いと考えていた。

「うーん、どうしようかな」

「じゃあ、アル。一層のこと神様におねだりしてみたらどうだよ」
ヴェルのこの何気ない発言に
剣豪を除いた他のメンバーの顔が引き攣った。

誠一は凍り付いた場の雰囲気を察したが、
ヴェルを窘めることはしなかった。
「それもありだね。今度、頼んでみるよ」

「ちょっと待て待て、2人ともちょっと待て。
おかしいぞ、神様に頼むとか。
アルフレート、本当にやめてくれ。
どれほどの神罰が下るか分からない」
ラムデールは二人の何気ない会話に割って入り、諫めた。

「流石にアル。それはちょっと神様への信仰を疑うわよ。
いくら親しいからといって、節度は持たないと」
シエンナは天井に向けって必死に祈っていた。

「おっおい、本当に下賜されるのか。貰えるならな」
遠慮がちであるがファブリッツィオは誠一に頼んだ。

ロジェとキャロリーヌは呆れた顔で誠一とヴェル、
そしてファブリッツィオを眺めた。
祈りを中断したシエンナは3人が怯む様な形相で睨みつけた。

「ふははははっ、これは愉快愉快、まっことに愉快。
これ以上、愉快なことはないでござる」

剣豪は心の底から笑っていた。

「しかし、その神への不遜な態度は外では控えて頂きたい。
無用な諍いを起こしますでござる」

「すみません、気を付けます」
未だにこの世界の神の在り様に慣れない誠一であったが、
剣豪の助言には素直に頭を下げた。

「それでどうするんだ、アルフレート君」
ロジェが上手く話題を転じた。

「やはりソルテールに向かいましょう。
そして、鉱山群の最奥地に聳え立つ『霊峰氷山』の
攻略を目指します。
可能ならばその頂きに鎮座する神殿に
納められている神剣を入手します」
室内は静まり返っており、誰も誠一に質問や意見を
投げかけなかった。
「無論、無理と判断したら攻略途中でも引き返します。
比較的名の知れた最上級の遺跡がどのようなモノか
知るために向かうだけです」

 反対の発言も無ければ、賛成の声もなく、
同神妙な顔つきで次の誠一の言葉を待った。
微妙な雰囲気のまま、具体的な旅程は明日以降に
打ち合わせることを誠一は伝えて、今夜のミーティングは
解散となった。
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