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567.それぞれの思惑6

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「ヴェル、デートの最中に彼女を
ほっぽり出したら駄目だろう」
アミラが喜ぶようなことを言ってみた誠一だった。

しかしそれをヴェルが速攻でぶち壊した。
アミラの視線が痛い誠一だった。
「はっ何言ってんだよ。デートじゃなく散歩だよ、散歩。
そんなことより学院長に聞いてきただろう。
アル、そいつに会いに行くつもりか?!」

いやいやいや、デートより大事な用事はないでしょ
と心の中で叫ぶ誠一であった。
しかし、その叫びが二人に伝わることは無かった。
ヴェルは件の自分に興味深々、アミラはジト目で
誠一を見るだけで一言も発しなかった。
ヴェルのお陰で無用の恨みを買っている様な気がしてならなかった。

「アルフレートさん、それで褒賞は
しっかりと受け取れたですか?」
どうでもいいといった雰囲気を醸し出しているアミラであった。

「そうだ!ちょっと昼飯でも食べながら、話そうぜ」
ヴェルがぐいぐいと距離を詰めてくる。

「ヴェル、近いって!行くからちょっと離れて」

「はあ」
アミラの盛大なため息が聞こえた。

料理店に入り、適当に料理を注文してから
褒賞の件をかいつまんで二人に説明した。

「それってどういうことだよ。何か騙された気分だな」

「夢幻登楼ですか。咲き乱れる花々を
一度は見てみたいと思いますが、難しいです」

2人がこの件の感想を言い終えると自然と会話が途切れた。

昼時の喧騒の中で黙々と食事を取る3人。
「それでアル、結局どうするんだ?
流石に最上級の遺跡を二か所も攻略とか
本当に生涯をかけることになってもおかしくないぞ。
まあ、俺は付き合うけどさ」
現時点でのヴェルの気持ちに偽りがないことは
誠一も重々承知していた。

「私は最後まで付き合えるか確約できないです。
すみません」
ぺこりと頭を下げるアミラに誠一は不愉快な気分にならなかった。
将来どうなるかなんて誰にも分からない。
誠一はアミラの言う事が当たり前だと思った。

「まーアル。アミラのことは勘弁してやってくれ。
リシェーヌにも会ったことないし、
そもそも竜公国に戻るかもしれんからさ」
誠一は頷いた。

「竜公国には戻らないです。
あなたとの子を宿してしまったら、家庭を守らないとです」
アミラは食事を止めて、じっとヴェルを見つめた。
獲物を威嚇する爬虫類のごとくシュルシュルという音が
誠一には聞こえたような気がした。

「おっおう、アミラ。あまり将来のことを決めすぎるなよ。
なるようにしかならないからな」
挙動不審者のごとき動きをするヴェルであった。
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