上 下
518 / 872

511.閑話 とあるアパートの情景3

しおりを挟む
「ちっなんだかな。
おまえも部屋を覗いていたんだから、余計なこと言うなよ」
そう言って、チャラ男は興が削がれたような表情で
部屋に戻ろうとした。

「ちょっと、待ちなさいよ」
千晴が逆にチャラ男の肩を掴んだ。

チャラ男は軽く千晴の腕を振り払った。
しかし、千晴はその場に派手に転んでしまった。

「えっ」
チャラ男の戸惑いに拍車をかけるべく、千晴は叫んだ。

「きゃあ」

「えっいや、そんなに強くした覚えは」

「痛い。痛い。ううっ痛い」
千晴は痛い振りをして中々、立ち上がろうとしなかった。
どこか遠くから視線を千晴は感じた。
今度は千晴にもチャラ男の言っていたことが分かった。
音声までは取れないだろうと思い、千晴はこの機を最大限に利用した。

「ねえ、君。分かるわよね。誰だか知らないけど写真撮られているわ。
どう見ても暴力をあなたからふるわれたしか思えないわよね」
チャラ男は青ざめていた。そして、頷くのみだった。

「ちょっと手を貸しなさい。立ち上がるから。
少し聞きたい事があるだけで素直に教えてくれれば、
何かあってもあなたに不利な証言はしないから」
チャラ男は言われるがまま手を貸して、千晴を立ち上がらせた。
二人はそのまま駅の方へ向かい、
全国チェーン展開されている珈琲ショップに入った。

千晴はチャラ男に適当に何か頼むように促すと、
チャラ男はおずおずと注文をした。
びくびくしながらも一番安いブレンドでなく、
サンドイッチ、ドーナツそして限定フラッペを
チャラ男は受け取っていた。
千晴は、Mサイズのホット珈琲を注文した。
ちぐはぐなペアの様子に店員や客の視線を集めたが、
あまり気にせずに席についた。

「その聞きたいことって何ですか?」

千晴は珈琲を一口飲み、じろりとチャラ男を睨みつけた。
サンドイッチを頬張る口の動きが止まった。
イニチアチブは完全に我にありと千晴は判断して、極上の笑みを浮かべた。

「ひいいいっもぐもぐ、ひいっ」

チャラ男は食べながら小さく悲鳴を上げた。
口の中を見せられた千晴は、不快になった。
「ちょっと、落ち着きなさいって。
少しお隣さんのことを知りたいだけだから」
そう言って千晴は部屋番号を伝えた。

「はあ、そんなことですか。
と言ってもそこの部屋の住人については良く知らないです。
多分、さっきセックスしていた方の部屋の奴も
知らないと思います」
そこからチャラ男は饒舌に語り出した。
どうにも気味悪く感じていたようで、
様々なについて悪態をつきながら話した。
 何かが住んでいたことは確かなようであった。
しかし、隣人の姿を見たことは一度もないようだった。
一度、怖いもの見たさに呼び鈴を鳴らしたことがあったが、
無反応であった。
いつの頃から隣人がそうなったか記憶があいまいで
気味悪かったため、出来る限り関わらないように
しているとのことだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

病弱幼女は最強少女だった

如月花恋
ファンタジー
私は結菜(ゆいな) 一応…9歳なんだけど… 身長が全く伸びないっ!! 自分より年下の子に抜かされた!! ふぇぇん 私の身長伸びてよ~

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

リケジョの知識で異世界を楽しく暮らしたい

とも
ファンタジー
私、遠藤杏奈 20歳。 某私立大学 理工学部の3年生。 そんなリケジョの卵だったんだけど、バイトに行く途中、交通事故に巻き込まれて… …あれ、天国で目が覚めたと思ったのに、違うってどういうこと? 異世界転生?なにそれ?美味しいの? 元の世界には戻れないっていうし、どうやら転生者の先輩もいるそうだから、仕方がないので開き直って楽しく生きる方法を考えよう。 そんな杏奈がのんびりまったり、異世界ライフを楽しむお話。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる
ファンタジー
目覚めるとそこは地球とは違う世界だった。 怒る女神にブサイク認定され地上に落とされる俺はこの先生きのこることができるのか? 初投稿でのんびり書きます。 ※23年6月20日追記 本作品、及び当作者の作品の名称(モンスター及び生き物名、都市名、異世界人名など作者が作った名称)を盗用したり真似たりするのはやめてください。

処理中です...