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495.使節団8

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空疎な笑いを上げるレドリアン導師の隣に
もう一人、魔術師が現れた。
黒いとんがり帽子に黒いローブ、黒い杖、
肌すらも黒く塗りつぶしている男であった。

「確か君たちは魔術院の学生だね。
ならば師は同じくファウスティノということになるのかな。
まあ、君たちの世代は彼から直接の指導は受けていないかな」

「あなたは一体、」
誠一の言葉を制して、シエンナが黒ずくめの男を睨みつけた。
「闇に堕ちた不世出の天才デルガドでしょ。
ダンブル派に与していたとの噂は本当だったってことね」

デルガドは不思議そうに誠一たちに語りかけた。
「死霊術も魔術分野の一つさ。忌避すべき理由はない。
歴代の学院長の狭量を批判すべきだ。
それに神はこの研究の成果として、私に賢者の称号を与えた。
そう神すら認めているのだ」

「あなたは研究と称して、一体、
どれだけのことをしてきたと思ってるの!」
自分の理想とする賢者像を汚されたためにシエンナは激怒した。

「おいおい、賢者なんてのは多かれ少なかれ俺と大して変わらんぞ。
まあいい、それより陛下はアルフレート、
貴様の鎧が真紅に染まることをお望みだ。
無論、誰の血かは言わずとも分かるだろう」
デルガドは黒い杖をかざして、魔術を唱え始めた。
隣のレドリアン導師も何かしらの魔術を唱えていた。

「レドリアンの杖は折っておけば良かった!」
シエンナの絶叫にレドリアンが過剰に反応したが、
それで魔術が中断されることはなかった。

「シエンナの皮肉が通じなかったか!アル、どうする?」
ヴェルは周囲を警戒しながら、ハルバートを構えた。

わらわらと立ち上がった死体は、腐食した肉を
地に落としながら誠一たちに近づいてきた。

「撤収。可能な限り後退だ。ヴェル、後方に道を作って。
キャロとシエンナがそれに続いて。僕が最後尾」
誠一の叫び声にヴェルが反応した。

「おうっ!おりゃー。ってあれ?」
ヴェルの横なぎの一撃で死体は腐った臓物を飛散させて、
その場に崩れてしまった。

「一本の矢よ。その矢尻へ神の拳を顕現させよ。
フォストゴッテスっー」
キャロリーヌが矢を放ち、それが地に到達すると
誠一たちの退路を蠢いていた死者の軍勢は吹き飛んでしまった。

「ちっ対軍の技を放てる奴がいたか。
だが、この我が大軍を相手にして、
奴らの体力・気力がどこまで保つかな」
デルガドは余裕綽々であった。
屈強な戦士、優秀な魔導士であっても
その体力や魔力は無限ではなかった。戦い続ければ、いずれ尽きる。
単純明快にデルガドは圧倒的な数の差を用いて
消耗戦を誠一たちに強いていた。
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