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483.対決4
しおりを挟む「やるな、ヴェル」
「そっちこそな。
神隠しの山の時の早さなら、一撃で終了だったぜ。
手を抜くなよ、アル」
「無理無理、アレは身体が壊れる。あの時は運が良かっただけさ」
「ぬかせ!俺は己の極める技で倒す!フレイムチャージ」
誠一は呆れてしまった。
確かにロマンを語った自分も悪かったが、
ヴェルが弱点の多いこの技にここまで拘るとは
当初思ってもいなかった。
「仕方ない。その技を葬るか。
水よ世界を覆い尽くせ、ウォーターボール」
シエンナほどではないが、それなりに大きい水球が
ヴェル目がけて放たれた。
炎は水によりかき消さて、突撃してくるヴェルが現れた。
しかしその勢いは止まらずに誠一に向かって来た。
ハルバートの穂先を中心に水が蒸発して、白い煙が舞い上がっていた。
白い煙に覆われた練兵場に一点、紅い光が誠一に向かっていた。
その紅い光と共に声が誠一に聞えた。
「うおおおぅーフレイムランサー」
ヴェルが叫んだ直後、彼の世界がぐにゃりと歪んだ。
歪んだ世界でヴェルは不快な空気に纏わり憑かれた。
ヴェルの一挙手一投足が誠一に把握された。
「ちっ、無音の世界か」
呟く自分の言葉すらヴェルは正確に認識することができなかった。
纏わりつく空気が触れているのかどうかをヴェルには
正確に把握することができなかった。
ごくりと飲み込んだ唾になんの味も感じることができなかった。
「くそ、5感のうち3つかよ。これ、無理ゲーだろ」
ヴェルの視界は誠一を捉えていた。鼻も利いていた。
しかし、普段と違う感覚がどうにもヴェルの動きに精彩を欠かせた。
誠一は、先程の直線的な動きから陽炎のように
ゆらゆらとした動きに変わっていた。
「ったくラッセルさんの技の応用かよ」
愚痴りながらもハルバートを繰り出すが、
誠一を捉えることは出来なかった。
ヴェルは、ハルバートで少し腕を切った。
「我が鮮血を触媒として顕現せよ炎よ。
燃えよ燃え上がれ、燎原の火よ、全てを喰ら尽くせ」
炎が誠一の行動範囲を規制した。
誠一の目の前には、ヴェルの正面まで通じる路が
ただ一つあるだけであった。
誠一とヴェルの瞳が交わった。
二人の戦いは、終わりに近づいていた。
「やるなあ、ヴェル」
誠一は素直に感想を述べた。
「俺だって、お前の背中をただ追ってただけじゃないんだぞ」
お互いに笑うと、2人が同時に技を繰り出した。
「うおおおぅ。荒ぶる炎よ、全てを燃やし尽くし、世界を再生しろぉー。
フレイムチャージ」
不死鳥のようなフォルムの炎がヴェルと共に誠一へ襲いかかった。
「ぬおおおぅ。鋭き風よ、全てを斬り尽くし、世界を切り崩せぇー。
エアチャージ」
切り刻まれた空気の断層が可視化できるほどの風の刃が誠一と共に
ヴェルへ襲いかかった。
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