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468.護衛6
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「うだつの上がらぬ辺境の子爵が王を僭称だと。
ほっ本当なのか?確かに王を名乗ったのか?」
レドリアン導師は声の震えを完全に隠すことはできなかった。
「正確に申し上げますとジェイコブの部下が
彼を王と呼んでいました」
誠一の答えにレドリアン導師は幾分、落ち着きを取り戻した。
騒ぎが大きくなる前に野盗として、討伐しようと頭の中で算段した。
つねに頭痛の種を持ち込む誠一たちを一瞥すると、
レドリアン導師は目の前の余計な事しかしないでしゃばりを
締め上げることにした。
「今回は大目に見てやるが、おまえらの仕事は護衛だ。
余計な事をして、護衛の対象を危険に晒すな。
その程度の事をいちいち、俺に言わせるな」
レドリアン導師にしては珍しく声を荒げていた。
毎度の事だが、ヴェルが首を傾げて、誠一やシエンナを見ていた。
余計な一言がこの場の雰囲気を悪化させると思い、
誠一は機先を制して、頭を下げた。
それに倣いロジェたちも頭を下げた。
ヴェルも周りの行動を見てから同じように頭を下げた。
珍しいことにその後、何事もなく誠一たちは執務室を後にした。
レドリアン導師が言い含めたのだろう。
誠一たちは衛兵に追い立てられるようにして北関を出発した。
誠一たちは急ぎ移動して、守備隊長たちへ合流するように努めた。
誠一たちの予想よりかなり早く合流することができた。
「隊長、只今、到着いたしました」
合流すると誠一は守備隊長に直ぐさま挨拶をした。
「ふむ、到着したか。では通常の護衛任務についてくれ。
若干だが、隊の旅程は遅れ気味だ。少しペースを上げる」
誠一は頭を下げて仲間の元へ戻った。
戦時とは思えない程、平穏無事に日々が過ぎていった。
護衛任務をこなしながら、誠一たちは剣豪より指南された訓練に
興じていた。
誠一たちに影響されて、訓練をするような酔狂な兵はいなかったが、
誠一たちから一定の距離を保ちつつ、奇異の目を向けていた。
旅程も半ばを過ぎたころから、誠一は元の世界で
自分がどうなっているのか情報を得る為に接触を試みていた。
プレーヤーがいつログインしているかを知る術がなく、
夜になると常にプレーヤーに話しかけていた。
その思いが報われて、プレーヤーと話す機会を得ることができた。
『こんばんは、誠一さん』
プレーヤーの声が誠一の心に浮き上がって来た。
『こんばんは、そちらも夜でしょうか?』
『ええ、そうですよ。丁度、食事が終わったところです。
誠一さんは、もう寝る時間では?』
『いえ、夜営の警戒任務中ですが、この辺りは安全ですね』
とりとめもない話がしばらく続いた。
ほっ本当なのか?確かに王を名乗ったのか?」
レドリアン導師は声の震えを完全に隠すことはできなかった。
「正確に申し上げますとジェイコブの部下が
彼を王と呼んでいました」
誠一の答えにレドリアン導師は幾分、落ち着きを取り戻した。
騒ぎが大きくなる前に野盗として、討伐しようと頭の中で算段した。
つねに頭痛の種を持ち込む誠一たちを一瞥すると、
レドリアン導師は目の前の余計な事しかしないでしゃばりを
締め上げることにした。
「今回は大目に見てやるが、おまえらの仕事は護衛だ。
余計な事をして、護衛の対象を危険に晒すな。
その程度の事をいちいち、俺に言わせるな」
レドリアン導師にしては珍しく声を荒げていた。
毎度の事だが、ヴェルが首を傾げて、誠一やシエンナを見ていた。
余計な一言がこの場の雰囲気を悪化させると思い、
誠一は機先を制して、頭を下げた。
それに倣いロジェたちも頭を下げた。
ヴェルも周りの行動を見てから同じように頭を下げた。
珍しいことにその後、何事もなく誠一たちは執務室を後にした。
レドリアン導師が言い含めたのだろう。
誠一たちは衛兵に追い立てられるようにして北関を出発した。
誠一たちは急ぎ移動して、守備隊長たちへ合流するように努めた。
誠一たちの予想よりかなり早く合流することができた。
「隊長、只今、到着いたしました」
合流すると誠一は守備隊長に直ぐさま挨拶をした。
「ふむ、到着したか。では通常の護衛任務についてくれ。
若干だが、隊の旅程は遅れ気味だ。少しペースを上げる」
誠一は頭を下げて仲間の元へ戻った。
戦時とは思えない程、平穏無事に日々が過ぎていった。
護衛任務をこなしながら、誠一たちは剣豪より指南された訓練に
興じていた。
誠一たちに影響されて、訓練をするような酔狂な兵はいなかったが、
誠一たちから一定の距離を保ちつつ、奇異の目を向けていた。
旅程も半ばを過ぎたころから、誠一は元の世界で
自分がどうなっているのか情報を得る為に接触を試みていた。
プレーヤーがいつログインしているかを知る術がなく、
夜になると常にプレーヤーに話しかけていた。
その思いが報われて、プレーヤーと話す機会を得ることができた。
『こんばんは、誠一さん』
プレーヤーの声が誠一の心に浮き上がって来た。
『こんばんは、そちらも夜でしょうか?』
『ええ、そうですよ。丁度、食事が終わったところです。
誠一さんは、もう寝る時間では?』
『いえ、夜営の警戒任務中ですが、この辺りは安全ですね』
とりとめもない話がしばらく続いた。
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