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445.ジェイコブ遊撃軍4

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「おおおおっ」
 ヴェルの雄叫びが森に響いた。
ヴェルは横なぎにハルバートを大きく振るった。
風圧が盗賊たちを襲った。
驚いた盗賊たちは一度、立ち止まってしまった。
瞬間、盗賊たちを風の刃が切り裂いた。

「踊れぇ、風の刃。エアスライサー」

誠一の魔術に切り裂かれた盗賊たちは、その場へ倒れた。

「殺さずですか。甘いです。聞くと実見するでは違います」
首領の言葉に呼応するようにサリナが短剣で
倒れている盗賊たちの息の根を止めた。

「アルフレート、甘いよ。でもまあ、私たちのリーダーだしね。
その甘さと弱さは仲間がカバーするよ」

4人ほどの死体が転がるのを首領が確認した。
そして、再度、拍手をした。
「力を示すのも一つの策です。よろしい、第二の試験も合格です」

「それがどうした」
誠一は首領をにらみつけた。
部下を仲間を犠牲にするやり方に到底、賛同することはできなかった。

「おまえに試される筋合いはないぞ。そもそも何が目的だよ」
ヴェルが誠一の胸の内を代弁していた。

「我らが主があなたにお会いしたいようです。
その資格があなたにあるかどうか、私が試しています」

こいつの丁寧な言葉遣いは、どこか歪で人を苛つかせた。

「誰だよ、会いたいといっているのは?」

首領は隠す気はないようであった。変わらずの態度と言葉であった。
「我らが主たるバッシュ様です」

誠一は自分が今、どんな顔をしているのか分からなかった。
頭にぐるぐると様々な思いが巡り、言葉に詰まっていた。

「はあ、何で隻腕のバッシュがアルフレートに用があるのよ」
サリナの疑問は当たり前であった。
盗賊ギルドにすら、そのようなことを匂わす情報は全くなく、
降って湧いたような話であった。
そもそも闇の勢力にとって、アルフレートに
どのような価値があるのかサリナには思い当たる節が全くなかった。

「おいおい、それはご遠慮願いたいな。
俺らが仮にバッシュと対面するとしても
それはそいつを倒す時くらいだろ」
ヴェルの主張も最もであった。
十何年前に王国へ暗殺が横行した暗黒期と
それに伴う主城の大崩壊のことを思えば、
ヴェルトール王国の民として、当たり前の感情であった。

遠くの方から悲鳴や怒号が時節、風に運ばれて来た。
それらの声は次第に少なくなっていた。

「僕があなたに接触した時点、仲間を退かせたのか。
それでここを包囲したのか」
やっとの思いで声を誠一は絞り出した。

首領は上から目線を崩さすに誠一の慧眼を讃えた。

「ご明察です。よろしい第三の試験も合格です。
ついでに言いますとあのアホウの集団はあなたが
ここで消えようと気にしません。
今頃、動けぬ者を放って、一目散にあそこから移動しています」

誠一は否定できなかった。
彼らからの援軍を期待することはできない。
地の利を活かした100名近い者たちに
包囲されているならば、突破を図ることは容易でないと判断した。

「それであなたはどうしたのだ」

「あなた以外には興味はないようです。
しかし、お仲間を屠って、連れて行くのは下の下の策です。
お仲間と合流しまして、我らが砦にお越しください」
威圧された訳でもなかったが、選択権が誠一にはなかった。
誠一はヴェルとサリナへ砦に向かうことを伝えた。

ジェイコブ遊撃軍では、弓勢と魔術による攻撃が
次第に弱くなってくると、動けぬ者や行軍に難のある者たちを
蹴散らして、この場から一目散に移動を開始した。

「脱落者は放っておけ。行軍速度が鈍る」

「ここで精鋭に絞り込まれだけだ。縋りつくものは振り払え」

「無だ飯を食わせるいわれはない。いくぞ」

好き勝手なことを言い放ち、ジェイコブ遊撃軍は
かつてないほどの速度でこの場を去った。
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