転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

443.ジェイコブ遊撃軍2

軍としての態は既に瓦解していたが、
一団から離れる者は皆無であった。誰しもが感じていた。
王国の恵みを与える森とは何かが違うと。

木々は捻じれて成長しており、原生林であるため、
木々の成長は様々であり、それは当たり前であった。
しかし、何故かその捻じれからは悪意しか感じられなかった。

夜には、動物の薙ぎ声もせず、昆虫が蠢いている雰囲気もなかった。
風もなく毎晩のように静寂が世界を支配していた。
それは人にとって決して心地良いものではなかった。

昼には、その木々が彼らの目に映った。
木々の幹はどす黒く、葉は一様に深い紫色であり、
何かの病気に犯されているようであった。
土は灰色であり、鉱山地方で目にするような色であった。

「嫌な景色ね。本当に憂鬱になるわ」
キャロリーヌの愚痴にシエンナが賛同した。

「ほんと、いるだけで疲れるわ。
それに空気もじめじめしてるし、蒸し暑いわ」
そういっていつもより大きく胸元を
はだけさせているシエンナであった。

汗を拭いながら、愚痴を言い合う二人と対照的に
サリナは流れ出る汗を拭う素振りも見せずに周囲を警戒していた。
そんなサリナが馬車に近づいた。余裕なく二人の会話に割って入った。

「シエンナ、アルフレートと索敵を交代して。
精度を最大限にして周囲を警戒して」

「ふえ、ええ。サリナ、どうしたの」

「いいから、急いで。アルフレートより
あなたの方が索敵魔術は長けているでしょ。
気のせいならいいけど」

サリナの尋常ならざる態度にシエンナは慌てて、
魔術を展開した。キャロリーヌも弓を備えて、警戒した。

「むっ」
シエンナの眉間に皺が寄った。
シエンナの様子を見たサリナは確信したのだろう。
「周囲に警戒。囲まれてるよ」

一切の音を発することのなかった森がその声と共にざわめいた。

木々ざわめく音、空気を切り裂く音、地を蹴る音が
そこかしこから聞こえた。

「敵か！」
誠一は即座に防御魔術を展開した。
投擲、矢、魔術による遠距離からの攻撃を防ぐためであった。

「アル、どうすんだ！敵がまだ見えねえし、
前が停滞してるから進めないぞ」
先頭の状況が掴めない。敵の状況が掴めない。
聞こえてくるのは怒号と悲鳴のみで情報量が少なすぎた。

「ヴェル、ここから森に潜む敵を見つけられない？」

「無理だ。木々が邪魔だ」

「シエンナ、索敵で敵の場所を指示して。
その場所に魔術と矢で攻撃」

誠一が矢継ぎ早に指示を出した。
誠一の周囲の遊撃軍の兵たちも攻撃の飛来した方に向かって
矢や魔術を放ち始めていた。