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441.合流2
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「どうどう、ほら、水でも飲んで落ち着けって」
それはサリナを気遣ってのことであろうが、
毎度のことながら選択肢を誤るヴェルであった。
サリナがフッーフッーと息を荒げるが、
受け取った水を一息に飲み干して、ヴェルを暗い目で睨みつけた。
暫く睨みつけていたが、諦めたかのように
大きくため息をついた。
「ふー。ヴェルがしょうがないわね。
悪気がある訳じゃないし。
まっ悪気が無ければ何でも許される訳じゃないけど、
仕方ないわね。
キャロリーヌに免じてここは許してあげるわ」
気になる発言があったような気がしたが、
誠一は聞かなかったことにしてスルーした。
シエンナも加わり、ヴェルの無神経さがやり玉に挙げられていた。
それを見ていた誠一は笑ってしまった。
決して消し去ることのできない先日の惨劇は、
夢の一時から続く現実世界での喧騒が誠一に思い出させる余裕を
与えなかった。
「おい、アルフレート、聞こえんのか?」
今度は一体、何だと思いながら誠一は、声の方を振り向いた。
「おい、アルフレート、聞こえているだろう」
名前を連呼されて、周囲の注目を浴びる誠一であった。
声の主はジェイコブであった。
「おい、アルフレート、聞こえるように言うぞ。
現地での軍の編成の結果、おまえは、俺の下だ。
いいな、ジェイコブ将軍と呼べよ」
ジェイコブは胸を出来る限り張って誠一に伝えた。
声は普段より2トーン程度高く、のけぞっていたために
普段より腹が出っ張っていた。
誠一を顎で使うかのように上下に振っていた。
これらの態度は、威厳を保つためとジェイコブが
思っているのだろうが、周囲から失笑が漏れていた。
笑いはジェイコブの脳で都合よく変換されて、
誠一が小さく丸まって恭順の意を示している様を
笑っていることになっていた。
十分に満足したジェイコブは、高笑いを一つすると
かん高い声で宣誓した。
「おい、アルフレート、心して聞け。
我が軍は、本軍と別に行動する。
『オペレーションアーチロード』の遊軍として
更に大きく迂回して、賊軍の本拠地を叩く!」
誠一は戦慄した。足を引っ張る面々と弱卒を
一か所に集めて、捨て駒の囮として使うつもりだと想像した。
どう言い包められたのか、ジェイコブは抜擢されと勘違いして、
意気揚々であった。
「ふうう、捨て駒ね。捨て駒よね、これって!アル、どうするの?」
捨て駒の扱いに盛大に嘆息するシエンナであった。
誠一は大いに盛り上がるジェイコブたちから離れた場所に集まった。
「ところでアルフレート君、本国へこの件を連絡はしたのか?
ここから先は、本国との伝達は途絶えるぞ」
「ええ、報告はしましたけど、あれだけの人を集めて
公言していますから。ヴェルトール王国に尾っぽを
振る犬が大いに功績を誇って報告しているでしょう」
「どの犬が尾っぽを大きく振り回してるいのか見ものだよな」
ヴェルは自分の物言いがえらく気に入ったのか大笑いしていた。
キャロリーヌの無言の圧がヴェルを黙らせた。
「そうだね。僕も大いに功績を誇張して報告したよ。
僕らも大いに尾っぽを振るっていることだよ、ヴェル」
「まじかよ、アル!なんかそれ、やだな」
ヴェルはがっくりと肩を落とていた。
「間諜なんてそんなもんよ、ヴェル」
上から目線でサリナが諭した。更にロジェが全員を諭した。
「明日からの行軍の為にいい加減、身体を休めろ」
毎度のロジェのお説教に一同、適当に返事をした。
それはサリナを気遣ってのことであろうが、
毎度のことながら選択肢を誤るヴェルであった。
サリナがフッーフッーと息を荒げるが、
受け取った水を一息に飲み干して、ヴェルを暗い目で睨みつけた。
暫く睨みつけていたが、諦めたかのように
大きくため息をついた。
「ふー。ヴェルがしょうがないわね。
悪気がある訳じゃないし。
まっ悪気が無ければ何でも許される訳じゃないけど、
仕方ないわね。
キャロリーヌに免じてここは許してあげるわ」
気になる発言があったような気がしたが、
誠一は聞かなかったことにしてスルーした。
シエンナも加わり、ヴェルの無神経さがやり玉に挙げられていた。
それを見ていた誠一は笑ってしまった。
決して消し去ることのできない先日の惨劇は、
夢の一時から続く現実世界での喧騒が誠一に思い出させる余裕を
与えなかった。
「おい、アルフレート、聞こえんのか?」
今度は一体、何だと思いながら誠一は、声の方を振り向いた。
「おい、アルフレート、聞こえているだろう」
名前を連呼されて、周囲の注目を浴びる誠一であった。
声の主はジェイコブであった。
「おい、アルフレート、聞こえるように言うぞ。
現地での軍の編成の結果、おまえは、俺の下だ。
いいな、ジェイコブ将軍と呼べよ」
ジェイコブは胸を出来る限り張って誠一に伝えた。
声は普段より2トーン程度高く、のけぞっていたために
普段より腹が出っ張っていた。
誠一を顎で使うかのように上下に振っていた。
これらの態度は、威厳を保つためとジェイコブが
思っているのだろうが、周囲から失笑が漏れていた。
笑いはジェイコブの脳で都合よく変換されて、
誠一が小さく丸まって恭順の意を示している様を
笑っていることになっていた。
十分に満足したジェイコブは、高笑いを一つすると
かん高い声で宣誓した。
「おい、アルフレート、心して聞け。
我が軍は、本軍と別に行動する。
『オペレーションアーチロード』の遊軍として
更に大きく迂回して、賊軍の本拠地を叩く!」
誠一は戦慄した。足を引っ張る面々と弱卒を
一か所に集めて、捨て駒の囮として使うつもりだと想像した。
どう言い包められたのか、ジェイコブは抜擢されと勘違いして、
意気揚々であった。
「ふうう、捨て駒ね。捨て駒よね、これって!アル、どうするの?」
捨て駒の扱いに盛大に嘆息するシエンナであった。
誠一は大いに盛り上がるジェイコブたちから離れた場所に集まった。
「ところでアルフレート君、本国へこの件を連絡はしたのか?
ここから先は、本国との伝達は途絶えるぞ」
「ええ、報告はしましたけど、あれだけの人を集めて
公言していますから。ヴェルトール王国に尾っぽを
振る犬が大いに功績を誇って報告しているでしょう」
「どの犬が尾っぽを大きく振り回してるいのか見ものだよな」
ヴェルは自分の物言いがえらく気に入ったのか大笑いしていた。
キャロリーヌの無言の圧がヴェルを黙らせた。
「そうだね。僕も大いに功績を誇張して報告したよ。
僕らも大いに尾っぽを振るっていることだよ、ヴェル」
「まじかよ、アル!なんかそれ、やだな」
ヴェルはがっくりと肩を落とていた。
「間諜なんてそんなもんよ、ヴェル」
上から目線でサリナが諭した。更にロジェが全員を諭した。
「明日からの行軍の為にいい加減、身体を休めろ」
毎度のロジェのお説教に一同、適当に返事をした。
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