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423.閑話 とある決意の情景1
しおりを挟む「ちょっと佐藤さん、出張の経費処理まだなんですか?
早く入金して貰わないと困るんですけど」
「はっはあ、入金は15日と30日のみですから、
昨日今日の入金はありません」
「そういうのいいから。佐藤さん、ちょっと融通が利かないよね。
他の経理は柔軟に対処してくれてるど、そういうの孤立するよ」
内線越しに施工部の課長の無理難題なクレームと怒声を
千晴は聞いていた。
今まで無かったようなクレームというより、無茶ぶりであった。
出張が何かと多い施工部では、交通費等の経費精算が多々あった。
無論、個人の手持ちからの支払いであり、額によっては直ぐにでも
精算したい気持ちも分からないでもないが、
社則は社則であり守って貰わないと困るものであった。
内線から漏れる怒声が清涼の耳にも入ったのだろう。
清涼が千晴に代わる様にサインを出した。
持て余していた千晴は素直にその指示に従った。
二三、言葉を交わすと清涼は受話器を置いた。
「佐藤さん、いつも通りに処理してください。
それと坪内さん、ちょっとミーティングルームに来てください」
千晴の同僚の女性が清涼に伴われて、会議室に連れていかれた。
ひそひそと他の社員が話していた。その話が千晴の耳にも入った
「あーあー島崎とつるんで、坪内さん、色々とやってたからな」
「仕方ないんじゃない。上手く立ち回っていたつもりでしょうけど、
島崎がああなったら、そりゃあね、上手くいかなくなるでしょうよ。
自業自得ってやつでしょうね」
「それで他部署の連中から気に入られて島崎の評価も上々、
誰も庇う気なくなるだろ。清涼様様だろ」
「だよな」
私は何も聞いてないし聞かない。
耳に栓をしたごとく聞こえないふりをして、
業務に集中する千晴であった。
昼食は相変わらず食堂でぼっちであった。
突き刺さるようなグループからの視線を感じながらも
とにかく女子グループと視線を合わせないように注意して、
食事を取り終えるとそくささとデスクに戻った。
椅子に座っていた千晴の椅子に後ろからがつんと
何かがぶつかった。丁度、清涼はトイレで席を外していた。
千晴が振り向くと顔を歪ませた坪内が立っていた。
「調子に乗ってるんじゃないわよ。
男に媚びやがって、熊須さんから聞いたわよ。
あんた、清涼とできているらしいわね。
ふん、男に愛想振り撒いて、腰振るって媚びてんじゃないわよ、この屑」
ガツンともう一度、坪内が椅子を蹴り飛ばすと、
当たりどころが悪かったのか、ぎゃっと叫ぶと
坪内は部屋を出て行った。
千晴は泣きそうな気分であった。
一体、自分が何をしたのだろうか全く分からなかった。
どう考えても莉々子の嫉妬が原因としか思えなかった。
そうは思ってもほとぼりが冷めるまで大人しく
目立たないように過ごすしかなかった。
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