転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

404.不穏9

「おまえたち、客人に失礼だ。少し黙れ」
誠一の目の前に立つと、男は大上段に構えた。
「随分と素晴らしい人生のようだな、アルフレート。
羨ましいものだな。ファーリにいくら払った？」

彼の取り巻きなのか兄弟なのかが彼の言葉に唱和し、高笑いした。

突然、バラムが彼等と誠一たちの間に入った。

「殿下、ここはお控えください。陛下の催したパーティですぞ」

「家令ごときが口を挟むな。控えろ」
殿下と呼ばれた男の代わりに少し後ろに控えていた年少の少年が
かん高い声で叱咤した。

「ザガナス、バラムの言うことも一理ある。
しかし少し黙れ。俺はこいつと話している」

誠一は殿下と呼ばれた男に黙礼した。

「その立ち振る舞い美しいな。しかし、くだらない。
等身大以上に己を大きく見せようとするのは頂けない。
しかもこのようなめでたき場では特にだ」

「私にはそのような意図は全くございません」

「そうそう、詩への不興は、私に寄せて頂きたく。
それと確かに私はアルフレート様に買収されました」
いつのまに近づいていたファーリが突然、口を挟んだ。
物音一つしない広間にざわめいた。

そして、王太子に阿る者たちが声高らかに誠一を糾弾した。
その声に王太子グレイガーは満足した。
後はあの男の隣にいる女を寝室で蹂躙するだけであった。

「買収とは、所詮は廃嫡者か」
「このような素晴らしき場にそぐわぬ半端者よ」

「容姿だけの軽薄者が！」

それらの心無い野次から誠一を守ろうと
キャロリーヌが誠一の前に出た。
彼女の美貌を前に彼らの声が少し小さくなったような気がした。
そして、非難轟々の怒声の中にその声を躱す様に
広間の隅々までファーリの声が通った。

「そうそう、アルフレート様から金貨1枚で買収されました。
さてさて、ここのステージに立つために皇国が用意した金銭と
陛下を讃えるための詩作の費用をここで明かすのは
野暮というものですね」

グレイガーの顔が醜悪に歪んでいた。
彼の兄弟が恐ろしそうに彼の表情を覗いていた。
踵を返すと、彼は父であるグリード・ダンブル、
この世に唯一無二の皇帝の前で跪いた。

「あのように結束を乱す者は我らが皇国の将として
相応しくないかと具申いたします」

ダンブルは気だるそうに視線を膝まずく息子に向けた。
「どうでもいい。お前が口を出すことではない。
それよりもグレイガー、お前も何かしらの功績を
アルフレートのように示せ」

ダンブルは右手を重そうに振ると、玉座を立った。
パーティを楽しむようにとシャービスに言づけると、広間を去った。