転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

371.打ち上げ１

　宿には既にヴェルとシエンナが戻っていた。
そして、ヴェルの側にぴたりとアミラが寄り添っていた。
ヴェルの左腕には布が巻かれていた。

「ヴェル、それは一体？」
アミラが誠一の言葉に反応して、びくりとした。
そして、恐る恐るヴェルを覗き込むように見つめていた。

「おう、アル！これか！これはだな、名誉の負傷ってやつだ。
心配すんな、大した怪我じゃない」
これ見よがしにぶんぶんと左腕を振り回すヴェルであった。

「わかったわかったって、ヴェルのその怪我が
大したことないのは分かったから、事情を話して」
ヴェルが説明を始めたが、どうにも要領を得ずに如何に戦い、
己の雄を示したかの話ばかりであった。
いまいち誠一は理解できなかったが、
アミラが目を輝かせて聞き入っていた。
一体、二人の間に何があったのだろうか、
事のあらましより気になってしょうがなかった。

「あーもう、アル、ヴェルの言っていることは
まあ、大袈裟ではあるけど、大筋で間違ってないわ。
肝心要の部分が良くわからないと思うから、説明するわ」
シエンナが要点を纏めて、説明した。

「バロック一家か。なるほどね。
ほぼ売り物を捌けたし、このまま放置でもいいのかな。
事を荒立てるべきかどうすべきか。
グレートウォールに入城する前にバロック一家から
尻尾を巻いて逃げ出したと噂されるのも面白くないね」
誠一は思案していた。
放置しておけば、それを嵩に来てあることないことを
言いふらして、一家の立場の向上に努めそうであった。
かといって、彼等の屋敷にこの人数で向かっても
数で押し切られそうであった。

「アルフレート君、バラム殿の用意する兵を率いて屋敷へ向かおう。
それまで彼らがちょっかいをかけてきたら、適当にあしらおう」
ロジェの意見に概ね誠一は賛成した。
竜公国がこの件に関与しないようにグロウに働きかけて貰うように
アミラに誠一は言い含めた。

誰かの腹の音がなった。全員が昼食をまだ、取っていなかった。
キャロリーヌが宿で昼食を提供して貰えるように交渉すると、
快く了解して貰えた。
昼食時も甲斐甲斐しくヴェルの世話をするアミラであった。
ヴェルも満更でも無さそうに相好を崩していた。

「ねえ、シエンナ。二人の間に何かあったの？」

「うーん、私も最初から見ていた訳ではなかったけど、
いわゆる吊り橋効果ってやつでしょ」

先程のヴェルの武勇伝を聞いた限りではそんな感じはしたが、
ここまで一気に距離が詰まるものかと誠一は不思議に思った。