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368.交渉4

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「アルフレート。中々な実力を持っているようだな。
どうだ!キャロリーヌを賭けて勝負しようではないか」

誠一は思った。底が浅すぎる。

ジェイコブの狙いはキャロリーヌの前で自分を叩きのめして、
その歓心を買うつもりだったが、上手くいかずに
速攻で方針を変えたようであった。

「お断りします。キャロリーヌは大切な仲間です。
ジェイコブ様ほどの使い手とそのような約束事は出来かねます」
誠一は即答したが、若干、身体が怠くなった気がした。
思い当たる節は、キャロリーヌを仲間と表現したからであろう。
げにも恐ろしき「婚約者1キャロリーヌ」の強制力を実感していた。

一方、誠一の言葉自体はジェイコブの虚栄心を満たし、
表情は少し和らいだが、どうにもキャロリーヌを
諦めきれずにあの手この手で賭けに持ち込もうとしていた。

根負けした誠一はジェイコブの提案を受け入れた。
「わかりました。ただし、私は生粋の剣士や戦士ではありませんので、
魔術行使を認めていただけませんか?」

「はあはあ、はぁはぁ、いいだろう。10分後に勝負だぞ、いいな」
取り巻きの用意した椅子に座り、何事か指示を出していた。

「ちょっと、アル!婚約者を賭けるってどういつもりなの。まったく!」
ふくれっ面のキャロリーヌであった。

「アルフレート君。気を付けろよ。
恐らく何かしら勝算あってのことだろうからな」
ジェイコブの指示で屋敷に向かった取り巻き数人を見ながら、
ロジェが誠一の肩を叩いた。

「恐らくアミュレットや護符といった能力を
底上げするアイテムでも身に付けるんでしょうね。
こちらは魔術をこっそり展開して能力を底上げしておきます」

ジェイコブの武装を見て、ロジェが非難の声をあげた。
「何故、真剣を手にしているんだ!これは手合わせの延長だろう」

「その言葉遣い、キャロリーヌの兄であるから、一度は許そう。
二度目はないぞ、心しておけ。それとだこれは真剣勝負だ。
10分間の休憩にアルフレートも準備できたであろう。
それをしなかったのは、本人の責任であろう。
戦場の心得がなっておらん。お灸を据えてやろうぞ」
ジェイコブはほそくほほ笑んでいた。
お抱えの魔術師によれば、魔術を展開するような魔道具は
持ち合わせていないようであった。
魔術の使えない魔術師に魔術の封印・刻印された魔道具で
身を固めた自分が負ける訳ないと高を括っていた。

「前に出ろ、アルフレート」

誠一はゆっくりと動きながら、彼を観察した。
ジェイコブの全ての指に指輪がはめられていた。
首飾りが4個ほど首にかけられていた。
盾と剣には所狭しと刻印がなされており、
全身を覆う鎧には魔石がいくつも埋め込まれていた。

どれもが一級の品物であったが、いくつかの魔具の効果が反発し合い、
相乗効果は望むべくもなかった。
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