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354.交流9

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その夜も誠一は帳簿の確認と日課の訓練を終えて、
部屋の質素なベッドでいつも通り潜り込んだ。
街を灯す明かりが夜空の星々以外になくなった頃、
誠一の部屋をノックする音が聞えた。

コンコン、コンコン。

誰だろう。もしかしてキャロリーヌかシエンナが部屋を
訪れて来たのだろうか。
ほんの少し誠一はそれを期待して、ドアに近づいた。

「どちら様ですか?」
誠一の声は上擦っていた。想像以上に緊張してしまった。
そして、ドアの外からの答えを待った。

「ダンブル陛下からの使いの者です。
この地へアルフレート様にお会いに来ました陛下の代理人より
書状を預かってまいりました」

誠一は先ほどとは違った緊張感に瞬時に支配された。
頭の中がぐるぐるとフル回転していた。
いつか接触を図ってくるだろうと思っていたが、
この時期だとは予想していなかった。

誠一はドアを開けた。
「このような時間に訪問するとはちょっといただけませんね」
誠一は有利に立つために機先を制した。暗闇から声が聞えた。

「はっ、大変申し訳ありません。
しかしながら、まだ、ことを公にしたくないのは
お互い様でございます故に人目に付かぬようにいたしました。
明日、アルフレート様のご都合の良いお時間に
書状へ認めました場所に来訪して頂きたく。
できれば、従者にもご内密にして頂けると助かります」
言うだけ言うと暗い廊下に直立する者は、
片膝を床に付け、両手で封書を誠一に向けて差し出した。

誠一が受け取ると直立して、一礼すると音もなく闇に消えていった。

翌朝、誠一はロジェたちに昨晩のことを相談した。
彼らは従者でなく仲間であったため、口止めされていたが、
他言無用と強く前置きして話した。
サリナは泊まり込みで訓練を受けているためにこの場にはいなかった。

「然るべき人物をダンブルは、派遣してきているようだな。
アルフレート君、ここは会うしかないな。
場所は貴族たちが好んで屋敷を構える所だ。
何かあった場合、どうにも上手くない。
キャロと俺が護衛で一緒に向かうかな」

ロジェの提案にヴェルが質問した。
「となると市場は俺、一人ということになるのか?」

「そう言うことになるな。それでいいかな、アルフレート君?」

「ええ、構いません。シエンナ、悪いけど、
商会でこの屋敷の持ち主等々の情報を集めておける?
今日の面会には間に合わないけど、後で確認をしたい」
誠一の提案にシエンナが質問した。

「それは問題ないけど、色々と大丈夫?」
気づかわし気に誠一とヴェルを交互にシエンナが見た。

「ヴェルは大丈夫でしょう。
アミラが手伝ってくれるし、もうほとんど売り捌けたから。
僕の方はまあ、ロジェさんとキャロもいるし、
左程の危険はないと思うよ。
ヴェル、出納簿を付けるのを忘れないでね」

「分かってるって。それより、気を付けろよ」

お互いの安否を気遣うと、各々、行動を開始した。
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