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317.IFの世界編 誠一の選択肢2

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「ああっ!なんでこんな小さい小鬼が話せるだよ。
しかも俺の名前を知っている?アルの言う通りだったな、特異種か」

『こいつらを殺せるなら、殺せ。無理なら、逃げろ』

いくら啓示を受けて、力が増そうともヴェルを倒せるわけがなかった。
しかし、事情が良く呑み込めないまま、死ぬわけにはいかなかった。

「はっ早い」

補助魔術を展開し、啓示を受けて尚、ヴェルを振り切ることができなかった。
視線が一度も切れることがなかった。

「ないわー。おまえ、ホントに何者だ」

「えっ?」

「むっ?」

ヴェルは自分の言葉に首を傾げた。

「いやいや、アルな訳ないし。どうかしてるな、俺。
おまえ、大人しくしてろ」
ハルバートでヴェルは、誠一の膝を砕いた。
仲間の足音が聞えて来た。

黄金の鎧に身を纏ったアルフレート・フォン・エスターライヒ、
漆黒のローブに身を纏ったシエンナ・モリス、
普段と変わらぬ鎧のロジェ・エンゲルス、
軽装の胸や太腿の強調された軽装を
身に纏うキャロリーヌ・エンゲルスであった。
サリナだけいなかった。ロジェは何かに憑かれたように無表情だった。

ヴェルを振り切ることができなかった時点で
誠一がこの場を逃げ出すことは無理であった。

「ヴェル、よくやった。
仲間を犠牲してでも逃亡しようとする狡猾な小鬼を
捕まえる事できました」
アルフレートの綺麗な声が響いた。
アルフレートはキャロリーヌの腰に手を回して、引き寄せていた。
誠一に見せつけるように左手でキャロリーヌの顎を上に向けて、
キスをしようとした。キャロリーヌは、それを拒否した。

「キャロ、君がいくら僕を否定しようとも
『純潔の婚約者』という誓約が僕らを縛って離さないことは
理解しているよね」
左手が腰を離すと、キャロリーヌの胸を荒々しく掴み揉んだ。
キャロリーヌは激しくそれを拒否した。
誠一は不愉快だった。それが表情に現れているかどうか分からなかったが、
眼前のアルフレートは誠一と視線が合うと楽しそうに微笑んだ。

「アル、そんなことは後にして。それよりこの小鬼はどうするのよ?
それなりに身体強化されてるよ」
ぶすっとした表情でシエンナが杖を構えて、警戒していた。

「シエンナ、君を蔑ろにするつもりはないさ。
今晩にでも、この小鬼の前で可愛がってあげるさ」

誠一はシエンナの方を見た。シエンナと誠一は視線が交わった。

「はっ?そんなのいらないし、そんなことしてないでしょ」
動揺を隠しきれない程に慌てているシエンナだった。
シエンナは、誠一を見つめて、目を離さなかった。
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