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307.奥殿3

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「一先ず、障子という障子と玄関を開けましょう。
風通しを良くして、その後、うーむ、どうしたものでしょうな」
剣豪は良い知恵が浮かばずに呻っていた。
部屋には害虫が蠢いていそうであった。

「一旦、換気しましょう。その後、庵を内部から煙で燻しましょう。
虫の死骸で溢れそうですが、それが一番ですよ」

「あの天狗め、掃除をさぼりおって」
剣豪がめっちゃ憤っていた。
憤りながらも庵の小窓等を開けて周る剣豪であった。

室内の中心付近に囲炉裏が見えた。
数時間の換気の後で誠一はそこへ枯れ木を放り投げた。
「ファイヤー」
魔術を唱えて、頭部にずしんと痛みが走った。
恐らくコールバーサークの後遺症がまだ残っているのだろう。
枯れ木は燃え上がり、煙が室内に充満した。
小窓を一つ開けているため、そこから派手に煙が吹き出していた。

 剣豪は障子を開けて、ひょいひょいと枯れ木を囲炉裏に放った。
何かしらの技によって、綺麗に炎の中心に刺さっていた。
何だろこの言いようのない技の無駄使いに誠一は釈然しなかった。

「要は使いようです。
使いどころを違わねば、どんな技でも役に立ちます」

言っていることはまともだったが、短刀の投擲技で枯れ木を
ひょいひょいと投げつける様を見せつけながら言われても
全然、説得力を感じない誠一だった。

一体、どのくらい燻したのか分からなかったが、
囲炉裏の炎が小さくなると、再び、障子、窓を開けて、換気を始めた。

剣豪は草履を誠一に渡した。虫の死骸が転がる室内に二人は上がった。
「あれは何でござる?」
そこかしこを指差して、剣豪は誠一に尋ねた。

天井に吊るされているライトらしきものが誠一にも目に入った。
丸形の白色のガラス管らしきものの中心から紐が垂れ下がっていた。
確かロストテクノロジー特集とかいう番組で
見たようなおぼろげな記憶が誠一にあった。
誠一や千晴の生きている時代から500年くらい前に
一般家庭で使われていたライトであった。

ぷちん、突然、剣豪が紐を引いた。
するとライトが光り薄暗い部屋を明るくした。
「ちょっと、先生。何かする前に一言、お願いします。驚くでしょ!」

「ふむ、如何なる魔術か分からぬが、明るくなりましたな」

明るくなった部屋を眺めると、片隅に
これまたロストテクノロジーに類するものが置かれていた。

それはクリーム色のプラスチックに覆われた長方形の
ガラスで構成されていた。
その物体の下には、何かを差し込むスロット部が
あるクリーム色の長方形の箱があった。
それらの前には、誠一に馴染のあるアルファベットの
記載されたボダン群とネズミのような形で二つのボタンを
持つものが長方形の箱にケーブルで繋がっていた。
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