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297.旅路15
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「今のは、危なかったでござるが、
一体、何時までその動きが保てることやら」
再び袋より取り出した両手に木刀を持ち、始めて剣豪が構えた。
タンタンターン、誠一はその場でステップを踏むと
弾かれたような勢いで最短距離にて剣豪に向かった。
剣豪もまた、誠一に向かって最短距離で動いた。
両者の動きを目視出来る者は、この場では誠一だけであった。
剣豪すら誠一の動きを目で追うことはできなかった。
誠一が振り下ろした7面メイスは大気を震わせて、
床を叩き壊して、大地を震わせた。
剣豪の両手にあるべき木刀は粉々に砕け散っていた。
「ふむ、鍛え上げた身体があれば、魔術による底上げで
縮地の如き技を繰り出せるということか」
剣豪が笑って、そう評していたが、誠一は応じることができなかった。
全身の筋肉が軋んでいた。筋肉と言う筋肉が痛みを訴えていた。
身体中が空気を欲しており、痛みに叫ぼうにも呼吸の乱れが
それを邪魔していた。
「ところで最初のステップには一体何の意味があるのですかな?
非常に読みやすいリズムでござるな」
リズムを取るためだよ。
昔、読んだ漫画の主人公がステップを踏んでたんだよ。
だから何となくやってみたんだ。
ノリだよ、ノリ!と答える余裕もない誠一は心の中で叫んだ。
軋む身体に耐えながら、左右に大きくステップを踏み、
その速度を徐々に上げていった。
ロジェたちには誠一の残影が目に映り、恰も分身をしているように見えた。
「ほう、これはこれは東方の島に伝わる忍びの技のようでごさる。
しかし、それとは随分と違ってござるな。
エスターライヒ家の長子は大道芸にも通じてござる。これは愉快、愉快」
うざっ、うざ過ぎる。
だが、剣豪の瞳にも残影が映っており、
彼の目を欺いていることは把握できた。
誠一は、アドレナリンがドバドバ分泌しているにも関わらず、
身体の痛みを酷く感じていた。
最後の攻撃だと誠一は感覚的に理解していた。
残影と共に誠一は剣豪に突撃した。
剣豪は、右手の木刀を頭上に水平に構え、
左手の木刀を腰の付近で水平に構えた。
先ほどと違い剣豪は受けに回っていた。
剣豪が構えただけ張り詰めた空気が場を支配した。
その空気を切り裂くように誠一は高速で左右に動きながら、
少しずつ剣豪との距離を詰めいていった。
剣豪は目を閉じた。
「見えぬなら、見なければいいのですよ。
惑わされるだけ馬鹿らしい」
聴覚と触覚、ステップ毎に響く足音と
動く毎に揺らぐ大気の震えで誠一の位置を
剣豪は把握した。
一体、何時までその動きが保てることやら」
再び袋より取り出した両手に木刀を持ち、始めて剣豪が構えた。
タンタンターン、誠一はその場でステップを踏むと
弾かれたような勢いで最短距離にて剣豪に向かった。
剣豪もまた、誠一に向かって最短距離で動いた。
両者の動きを目視出来る者は、この場では誠一だけであった。
剣豪すら誠一の動きを目で追うことはできなかった。
誠一が振り下ろした7面メイスは大気を震わせて、
床を叩き壊して、大地を震わせた。
剣豪の両手にあるべき木刀は粉々に砕け散っていた。
「ふむ、鍛え上げた身体があれば、魔術による底上げで
縮地の如き技を繰り出せるということか」
剣豪が笑って、そう評していたが、誠一は応じることができなかった。
全身の筋肉が軋んでいた。筋肉と言う筋肉が痛みを訴えていた。
身体中が空気を欲しており、痛みに叫ぼうにも呼吸の乱れが
それを邪魔していた。
「ところで最初のステップには一体何の意味があるのですかな?
非常に読みやすいリズムでござるな」
リズムを取るためだよ。
昔、読んだ漫画の主人公がステップを踏んでたんだよ。
だから何となくやってみたんだ。
ノリだよ、ノリ!と答える余裕もない誠一は心の中で叫んだ。
軋む身体に耐えながら、左右に大きくステップを踏み、
その速度を徐々に上げていった。
ロジェたちには誠一の残影が目に映り、恰も分身をしているように見えた。
「ほう、これはこれは東方の島に伝わる忍びの技のようでごさる。
しかし、それとは随分と違ってござるな。
エスターライヒ家の長子は大道芸にも通じてござる。これは愉快、愉快」
うざっ、うざ過ぎる。
だが、剣豪の瞳にも残影が映っており、
彼の目を欺いていることは把握できた。
誠一は、アドレナリンがドバドバ分泌しているにも関わらず、
身体の痛みを酷く感じていた。
最後の攻撃だと誠一は感覚的に理解していた。
残影と共に誠一は剣豪に突撃した。
剣豪は、右手の木刀を頭上に水平に構え、
左手の木刀を腰の付近で水平に構えた。
先ほどと違い剣豪は受けに回っていた。
剣豪が構えただけ張り詰めた空気が場を支配した。
その空気を切り裂くように誠一は高速で左右に動きながら、
少しずつ剣豪との距離を詰めいていった。
剣豪は目を閉じた。
「見えぬなら、見なければいいのですよ。
惑わされるだけ馬鹿らしい」
聴覚と触覚、ステップ毎に響く足音と
動く毎に揺らぐ大気の震えで誠一の位置を
剣豪は把握した。
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