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266.宴12

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「ぎゃあー痒い、痒すぎる」
痒み薬の濃度の高い水が付着したのか、
ヴェルは盛大に転げ回っていた。

「ヴェル、服を脱いで!急いで」
誠一の言葉に急ぎ、服を脱ぎ捨てた。
誠一は、ウォーターボールを展開して、ヴェルを洗い流した。
再びヴぇるが服を着ようとしたため、誠一が急いで止めた。
その意図に気づいたヴェルは、憤慨した。
「何で俺がこんな目に!
おっさんどもの前で素っ裸とか、何の罰ゲームだよ!
アル、これはおまえのせいだからな。貸だぞ」
キャロリーヌの外套に身を包み、恨みがましい目を
誠一に向けるヴェルだった。
茶番と化した大広間の決闘は、周りを囲む冒険者たちの
笑いの渦に囲まれていた。

ガイダロフは、涎を流しながら、血走った目を誠一に向けていた。
「がああ、アルフレートとか言ったな。
痒い、貴様は我らががあぁクラン『戦神に集いし英雄』を
敵に回し、痒い。覚えておけ、かふぅ、かゆ、コロス」

誠一は最後のコロス以外の言葉がよく聞き取れなかったが、
兎に角彼らが、自分に憎しみを向けて敵対したことだけは理解できた。

「ぐぅ、ゼリアム、ゲヒュト、バルドー。
神の声が聞えているだろう。
がふゅ、そこの転がっている二人を連れてけ。
がふう、行くぞ」

群衆に混じって、ジョッキ片手に楽しんでいた剣豪が
ガイダロフの前に突然、姿を現した。

「ふむ、クラン『戦神に集いし英雄』が
アルフレート様と敵対するのですな。
ならば、アルヤンに伝えなさい。
いつでもお相手しようと」

「ふん、どうにも気になる剣気が混じっていると
思ったら、オニヤ、貴様だったが。
貴様如きボスが出張るほどのこともない。
ふん、そう言うことか!益々、アルフレートを
コロス理由ができたな」
痒みに苦しんでいる男とは思えぬほどの
はっきりとした口調であった。

ゲヒュトがガイダロフの言葉を繋いだ。
「我らが最強クランの一角を相手に束の間の平穏を
楽しんでおくんだな。
死んだ方がマシとはどういう事か知ることになるだろうよ」

言うべきことを言ったのだろうガイダロフたちは、
冒険者や傭兵を押しのけて、大広間から消えていった。

彼等の恫喝など、意にも介さずにへらへらと笑う剣豪だった。
誠一は、冗談じゃないと思った。
預かり知らぬ所で勝手に彼らの怒りに拍車をかけてしまった。
彼らの因縁に巻き込まれるなんてまっぴらごめんであった。
後々からしゃしゃり出るくらいなら、端っこで酒でも
飲んでいればいいものをと恨みがましい目で剣豪を見た。

「アルフレート様、あまり気になさるな。
拙者の因縁など、大したことありませぬ。
それに捨て台詞を吐いた奴らの一体、
何人と相まみえることになるやら」
笑いを収めて、彼等の消えていった方を
見つめている剣豪だった。

 拍手喝さいの大騒ぎは次第に収束に向かい、
冒険者たちは今のことを酒の肴にまた、呑み始めた。
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