転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

259.宴5

「アルフレート君、助かった。この恩は必ず返す」
誠一はいたく感動してるロジェに対して、
軽く小首を傾げた。
どうにもこの紙切れがそこまでのものであることへ
いまだ慣れずに違和感しかなかった。

それを謙虚とロジェは受け取ったのだろう。
「アルフレート・フォン・エスターライヒ。君に捧げる。
先達の冒険者として、君が望む限り力を貸そう。
我が誓いは永遠だ」

誠一は軽く頷いた。
そもそも自分の魅力や力でもないのに
そこまで評価されてもどう答えていいのか分からなかった。

「私は、アルフレート・フォン・エスターライヒ。
あなたにこの生涯を捧げます。
苦しき時も悲しき時もあなたの側で支える事を誓います」
キャロリーヌは戦士から腕を振り払うと誠一の下に向かい、
唇を合わせた。
祈りに交じってやっかみと祝福の声が大広間に響き渡った。

『婚約者１キャロリーヌ』の称号を得ました。
そんな言葉が誠一の脳裏に響いた。そして、嫌な説明が流れた。

裏切れば、評判は地に落ちるため、注意が必要。

裏切れば、各能力値が呪われて、低下する。
　
いつ婚約したんだと心の中でつっこみを入れるが
何の答えも返ってこなかった。
キャロリーヌを鑑定すると、誠一を見つめる彼女も
称号を得たようだった。
『純潔の婚約者』これまた、何か胡散臭い称号であった。

純潔を破れば、評判は地に落ちるため、注意が必要。

婚約者に裏切られれば、死ぬ。

婚約者から甘い言葉と態度を受けると、
一時的に書く能力が格段に上昇する。

何だか釈然としない気分であったが、キスの効果によって、
キャロリーヌの能力が異常に高くなっていた。

「アル君って呼ぶのも変かな。アル。何か少し恥ずかしいな」
キャロリーヌは、そう言って『戦神に集いし英雄』の方を向いた。
「キャロリーヌさん」

キャロリーヌは、誠一の言葉を制した。
「うん、分かってる。お互い突然の事で良く分からないよね。
このことであなたを縛ったりしないから。
お互いの気持ちを確かめ合う前にこれはちょっとずるいよね」
誠一にはキャロリーヌの背中しか見えていなかった。
これが大人の対応なのだろうかと思ったが、
彼女が少し震えているのが分かった。
自分に過度な負担をかけまいとして言葉を絞り出しているんだ。
誠一はそんな彼女の気持ちにどう応えて良いか分からなかった。
公衆の面前あったが、後ろから彼女を抱きしめた。
始めて会った頃は、彼女より小さかった自分だったが、
今は少し背が高くなっていた。

「アル、ありがとう。
ちょっと、目の前のあいつらを倒してくるね」
火照っている彼女の身体が誠一より離れていった。
外野の拍手喝采とヴェルの大声がうるさかったが、
何も耳に入らなかった。
愛おしそうに彼女を離すと、
誠一も『戦神に集いし英雄』と戦う構えをとった。