255 / 908
257.宴3
しおりを挟む
「おりゃー」
掛け声と共にロジェを踏みつける盗賊に
ヴェルが飛び蹴りを放ったが、難なく躱されていた。
「ヴェル、どうしてここに?」
「アル!そこの女と話は済んだか?
突然、いなくなったから慌てたぞ。
どこかにしけ込むか、いなくなるなら
一声かけろって。心配するだろうが」
そんなこと言われた覚えもなかったが、
戦の後の高揚で自分が聞き逃したのかもしれないと思った。
「すまん、聞き逃したのかも」
「ん?言ってないけど、そんなの当たり前だろ。
ったくアルは変なところが抜けてるから、世話が焼けるよな」
「まーた、おまえらか。くだらん戯言は他所でしろ。
此処は傭兵と冒険者が集う場所だ。世間の常識は通用しない。
実力が全てだ。死にたくなければ、さっさと去れ」
リーダーの男は余程、不愉快だったのか吐き捨てるように
言うと両手の指をボキボキと鳴らした。
「キャロリーヌに手を出すな。
その薄汚い手をさっさと離せ」
誠一の言葉に周囲は喝采を上げた。
これ以上ない盛り上がりにお互い引くに引けない状況と
なってしまった。
「アルフレート君、彼等は強い」
ロジェが立ち上がり、誠一に声をかけた。
「ええ、良く分かっています。
だけど、二人にあのような狼藉を加えているのを
黙って見て入れませんでした」
「君の気持は嬉しいが、冒険者の世界は実力が全てだ。
ある程度のことは許されてしまう」
ロジェの言わんとすることは理解できたが、
感情がそれを許容できなかった。
「あなたが踏みつけられるのもキャロリーヌが凌辱されるのも
許容できることではありませんでした」
「アル君」
キャロリーヌはそれだけ言うと、頬を桜色に染めて、
誠一を見つめていた。
「こりゃあ、シエンナには悪いが、
アルを兄貴と呼ぶ時が来そうだな」
くだらないことを側でほざくヴェルの言葉を
スルーする誠一だった。
「おいおいおーい。
てめーにゃそこの使い捨てをくれてやっただろう。
それで満足しとけ。キャロリーヌはそこへ置いていけ。
でなければ、五体満足でいられるとオモウナヨ」
盗賊の脅しを撥ねつけた誠一だった。
「よっしゃーそれでこそ、アルだ!
俺の親友だ。いくぞ、アルー」
余計なことを側でほざくヴェルの言葉を
スルーする誠一だった。
「これはこれは、司祭。
神、アルデットより賜った啓示を無視する輩は、
我らがクラン『戦神に集いし英雄』の敵対勢力であることは勿論、
アルデット教の大敵でもありますな」
リーダーの男が司祭らしき人物に声をかけた。
その声は大きく、広間の隅々まで十分に届いたようであった。
周りの喧騒は、一瞬で止んだ。広間には物音一つしなかった。
掛け声と共にロジェを踏みつける盗賊に
ヴェルが飛び蹴りを放ったが、難なく躱されていた。
「ヴェル、どうしてここに?」
「アル!そこの女と話は済んだか?
突然、いなくなったから慌てたぞ。
どこかにしけ込むか、いなくなるなら
一声かけろって。心配するだろうが」
そんなこと言われた覚えもなかったが、
戦の後の高揚で自分が聞き逃したのかもしれないと思った。
「すまん、聞き逃したのかも」
「ん?言ってないけど、そんなの当たり前だろ。
ったくアルは変なところが抜けてるから、世話が焼けるよな」
「まーた、おまえらか。くだらん戯言は他所でしろ。
此処は傭兵と冒険者が集う場所だ。世間の常識は通用しない。
実力が全てだ。死にたくなければ、さっさと去れ」
リーダーの男は余程、不愉快だったのか吐き捨てるように
言うと両手の指をボキボキと鳴らした。
「キャロリーヌに手を出すな。
その薄汚い手をさっさと離せ」
誠一の言葉に周囲は喝采を上げた。
これ以上ない盛り上がりにお互い引くに引けない状況と
なってしまった。
「アルフレート君、彼等は強い」
ロジェが立ち上がり、誠一に声をかけた。
「ええ、良く分かっています。
だけど、二人にあのような狼藉を加えているのを
黙って見て入れませんでした」
「君の気持は嬉しいが、冒険者の世界は実力が全てだ。
ある程度のことは許されてしまう」
ロジェの言わんとすることは理解できたが、
感情がそれを許容できなかった。
「あなたが踏みつけられるのもキャロリーヌが凌辱されるのも
許容できることではありませんでした」
「アル君」
キャロリーヌはそれだけ言うと、頬を桜色に染めて、
誠一を見つめていた。
「こりゃあ、シエンナには悪いが、
アルを兄貴と呼ぶ時が来そうだな」
くだらないことを側でほざくヴェルの言葉を
スルーする誠一だった。
「おいおいおーい。
てめーにゃそこの使い捨てをくれてやっただろう。
それで満足しとけ。キャロリーヌはそこへ置いていけ。
でなければ、五体満足でいられるとオモウナヨ」
盗賊の脅しを撥ねつけた誠一だった。
「よっしゃーそれでこそ、アルだ!
俺の親友だ。いくぞ、アルー」
余計なことを側でほざくヴェルの言葉を
スルーする誠一だった。
「これはこれは、司祭。
神、アルデットより賜った啓示を無視する輩は、
我らがクラン『戦神に集いし英雄』の敵対勢力であることは勿論、
アルデット教の大敵でもありますな」
リーダーの男が司祭らしき人物に声をかけた。
その声は大きく、広間の隅々まで十分に届いたようであった。
周りの喧騒は、一瞬で止んだ。広間には物音一つしなかった。
0
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説

スライムばかり食べてた俺は、今日から少し優雅な冒険者生活を始めます。
いけお
ファンタジー
人違いで異世界に飛ばされてしまった佐藤 始(さとう はじめ)は、女神システィナからとりあえず悪い物を食べて死ななければ大丈夫だろうと【丈夫な胃袋】と【共通言語】を与えられ放り出されてしまう。
出身地不明で一銭も持たずに現れた彼を怪しんだ村の住人達は簡単な仕事の紹介すら断る有様で餓死が目の前に迫った時、始は空腹のあまり右手で掴んだ物を思わず口に入れてしまった。
「何だこれ?結構美味いぞ」
知らずに食べていた物は何とスライム、弱って死ぬ寸前だった始を捕食しようと集まっていたのだった。食べられると分かった瞬間スライム達がごちそうに早代わり、始のスライムを食べる生活が始まった。
それから数年後、農作物を荒らすスライムを食べて退治してくれる始をいつの間にか村人達は受け入れていた。しかし、この頃になると始は普通のスライムだけの食生活に飽きてしまい誰も口にしない様な物まで陰でこっそり食べていた・・・。数え切れない程のスライムを胃袋に収めてきたそんなある日の事、彼は食べたスライム達からとんでもない能力を幾つも手に入れていた事に気が付いた。
始はこの力を活かす為に町に移住すると、悪徳領主や商人達が不当に得た金品を奪う冒険者生活を始めるのだった・・・。
仕事中の空いている時間に物語を考えているので、更新は不定期です。また、感想や質問にも出来る限り答えるつもりでいますが回答出来ない場合も有ります。多少の強引な設定や進行も有るかもしれませんが、そこは笑って許してください。
この作品は 小説家になろう ツギクル でも投稿しております。

起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣
ゆうた
ファンタジー
起きると、そこは森の中。パニックになって、
周りを見渡すと暗くてなんも見えない。
特殊能力も付与されず、原生林でどうするの。
誰か助けて。
遠くから、獣の遠吠えが聞こえてくる。
これって、やばいんじゃない。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる