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247.出陣7

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アーロンは歓声が全く聞えないなのか、
誠一を一瞥するだけであった。
事務的な口調で必要なことだけを誠一に伝えた。
「目の前の魔物なら、7人でも十分だな。
後方の二人には少し足りぬ。
アルフレート、補助魔術を俺に展開しろ」
誠一、ヴェル、そしてシエンナは、
急ぎ補助魔術を重ね掛けした。

アーロンが槍を一振りした。
槍が尋常じゃない程にしなり魔人の発した何かを粉砕した。
「頃合い良し、化け物め。死ね」
アーロンが気負うでもなく、滾るでもなく、
魔人に向かって戦いを挑んだ。

「ふむふむ、7人ですか。
剣を交えてみたいですが、業深き技でござる。
アルフレート様の「絆」とは真逆ですな」
戦場にも関わらずひょっこり現れた剣豪であったが、
もはや、誠一はその登場に驚くことは無かった。
ゲームで言うところのヘルプ機能か、
説明ポジションのキャラとしか思えなくなってきていた。

エスターライヒ家の騎士たちに守られながら、
誠一も魔術を展開していた。
そんなことはお構いなしに剣豪が話しかけて来た。
「ご存じかと思いますが、あれは『死して尚、騎士たる誓いを守る』
というエスターライヒ家特有の称号です」

嫌な称号だと誠一は思った。
忠誠を誓った騎士が身を挺して、主を助けて死んだときに
発動するのだろう。
恐らく忠誠というより何かしらで紐付けされており、
主の能力が死ぬ数に応じて上がることは容易に想像できた。

「嫌な顔をなさるな。
魔人の領地と隣接するテルトリアでは、
人知を超えた化け物が幾度となく現れたのでしょう。
そして、生まれた称号でござる」

 剣豪の話を聞きながら、誠一はリゲルの無軌道な行いが
放置されていたことを理解した。
騎士たちがあのリゲルに心から忠誠を
誓う筈がなかった。
街の無頼漢たちがリゲルに接するうちに
忠誠が芽生えれば発現するかもしれないと考えて、
アーロンは放置していたと思った。
しかし、誠一は思った。
「先生、それって今、ここで話すこと!
それどころじゃないでしょう」

「百聞は一見に如かずです。
なので良き機会と思い、お話ししています。
あれは、己の平静を保てねば、技として成立せぬ」

それはそうだろうと誠一は剣豪の言葉に賛同した。
自分なら到底、耐えられない。そんな思いが去来した。
親しい者が目の前で次々と死んでいく。
見た目には平然とそれを受け入れているように
見えるアーロンの胆力に素直に感心していた。
平然に見えるが心は少しずつ摩耗し、疲弊しているに
違いなかった。

「アルフレート様、あなたは真逆の称号を得てしまった。
吉と出るか凶と出るかわかりませぬ。
あなたの祖父は、危地に陥り、力を欲した時、
自らエスターライヒ家の騎士を戦場で惨殺していたと
言い伝えられています。
生き残るための選択です。どう捉えるかはあなた次第」

誠一は僅かに頷いた。
様々な思いがあったが、それらを振り払うかのように
魔術を放ち、7面メイスを振るった。
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