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229.輜重隊出征18
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「確かにそうだな。
ここは強く出て、恐れてこちらに付くか、
反発するか観察するのも良しだ。
所詮はあの程度の小国、侵攻して、
王国の直轄領にしても良い」
鷹揚にドレルアンがアーロンを指示した。
「お待ちください。
せめて、引き渡しの場で恫喝する程度に
お納めください。
既にオニヤ殿によって、指の爪がございませぬ。
これ以上は必要ないかと。
勝手にあの竜騎士が王国の意を伝えましょうぞ」
レドリアン導師はそもそも前面の敵ですら、
持て余しているにも関わらず、無用に敵を作る愚を
嫌っていた。
「ふむ、よかろう。
では導師、公国に送る人選を頼む。
公国に拘束さてもいい様な者を送れ。
では解散としよう」
部屋を後にすると、アーロンが振り返らずに
剣豪に話しかけた。
「聞きたいことがあるのだろう、オニヤ殿。
寝室に着くまでに済ませてくれ」
「お言葉に甘えて、手短に。
アルフレート殿のことである。
かのように優秀な御仁を何故に廃嫡なさった。
その真意を伺いたい」
「そのようなくだらぬことを聞くために
珍しく軍議に参加していたのだな。
いいだろう、教えてやる」
一度、話を切り、アーロンは振り返った。
「簡単なことだ。
あいつが使用人を凌辱して、
死に追いやったこと。
神の啓示を受けたからだ」
「解せぬのう。
罪ならきちっと償わせるべきだし、
神の声が聞えるなら、それはこの世界では
祝福されることではないかな」
不思議そうな顔をする剣豪を
アーロンがあざ笑った。
「分かっていて、知らぬふりをするな。
くだらぬことで、代々続いたエスターライヒ伯爵家に
無用の疑いをかける訳にはいかぬ。
ふん、神の声!我ら伯爵家が忠誠を誓うは、
顔も知らぬ神ではない、王国だ。
神を敬うのは、そこら辺の生臭坊主にでも
させておけ」
剣豪は納得いったとの様に両手を組み、軽く頷いた。
「王を支えるのは我ら貴族の責務。
全身全霊をもって仕えられぬなら、
伯爵家の当主に相応しくない。
神の言葉など、まやかしにすぎぬ」
「あい分かった。
アルフレート殿が当主に
返り咲くことはないということですな」
納得顔の剣豪に向かってアーロンは、
高らかに笑った。
「当たり前だ。代わりなどいくらでもいる。
敢えて、天啓などいう訳の分からない言葉を信じて、
万の一にも王に牙向く可能性のある男を嫡子に
据える訳ないだろう。
片隅で王国の繁栄を享受して、生きればいい」
どうやらアーロンの寝所に到着したようだった。
話はこれまでと一方的に遮り、アーロンは寝所のドアを閉めた。
剣豪も物音ひとつたてずに暗い通路に消えていった。
ここは強く出て、恐れてこちらに付くか、
反発するか観察するのも良しだ。
所詮はあの程度の小国、侵攻して、
王国の直轄領にしても良い」
鷹揚にドレルアンがアーロンを指示した。
「お待ちください。
せめて、引き渡しの場で恫喝する程度に
お納めください。
既にオニヤ殿によって、指の爪がございませぬ。
これ以上は必要ないかと。
勝手にあの竜騎士が王国の意を伝えましょうぞ」
レドリアン導師はそもそも前面の敵ですら、
持て余しているにも関わらず、無用に敵を作る愚を
嫌っていた。
「ふむ、よかろう。
では導師、公国に送る人選を頼む。
公国に拘束さてもいい様な者を送れ。
では解散としよう」
部屋を後にすると、アーロンが振り返らずに
剣豪に話しかけた。
「聞きたいことがあるのだろう、オニヤ殿。
寝室に着くまでに済ませてくれ」
「お言葉に甘えて、手短に。
アルフレート殿のことである。
かのように優秀な御仁を何故に廃嫡なさった。
その真意を伺いたい」
「そのようなくだらぬことを聞くために
珍しく軍議に参加していたのだな。
いいだろう、教えてやる」
一度、話を切り、アーロンは振り返った。
「簡単なことだ。
あいつが使用人を凌辱して、
死に追いやったこと。
神の啓示を受けたからだ」
「解せぬのう。
罪ならきちっと償わせるべきだし、
神の声が聞えるなら、それはこの世界では
祝福されることではないかな」
不思議そうな顔をする剣豪を
アーロンがあざ笑った。
「分かっていて、知らぬふりをするな。
くだらぬことで、代々続いたエスターライヒ伯爵家に
無用の疑いをかける訳にはいかぬ。
ふん、神の声!我ら伯爵家が忠誠を誓うは、
顔も知らぬ神ではない、王国だ。
神を敬うのは、そこら辺の生臭坊主にでも
させておけ」
剣豪は納得いったとの様に両手を組み、軽く頷いた。
「王を支えるのは我ら貴族の責務。
全身全霊をもって仕えられぬなら、
伯爵家の当主に相応しくない。
神の言葉など、まやかしにすぎぬ」
「あい分かった。
アルフレート殿が当主に
返り咲くことはないということですな」
納得顔の剣豪に向かってアーロンは、
高らかに笑った。
「当たり前だ。代わりなどいくらでもいる。
敢えて、天啓などいう訳の分からない言葉を信じて、
万の一にも王に牙向く可能性のある男を嫡子に
据える訳ないだろう。
片隅で王国の繁栄を享受して、生きればいい」
どうやらアーロンの寝所に到着したようだった。
話はこれまでと一方的に遮り、アーロンは寝所のドアを閉めた。
剣豪も物音ひとつたてずに暗い通路に消えていった。
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