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122.探索訓練1
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誠一たちは、モリス家の商館を拠点にして、
周辺の迷宮を攻略していた。
そこには何故かラムデールも同行していた。
「おい、おまえ、弟や妹をあの屋敷に
残してきて大丈夫なのかよ」
ヴェルは誠一より一通りの事情を説明されたが、
どうしても気になり、ラムデールに直接、尋ねた。
「ああ、それは問題ない。
リゲル様と直接やり取りをしていた取り巻きたちは、
牢獄でしん死んでしまったからな。
あのお方はお一人では何もできないから、心配ない。
それに先生がやる気になったから、大丈夫だろう」
「おっそろしい話だよな。
牢屋で背中と喉笛をバッサリとやられてたんだろ。
悪いことはするもんじゃないな。なあ、アル!」
話しかけられた誠一は、軽く頷いた。
やり口からすると、高レベルの暗殺者の
仕業だろうとは思っていた。
そして、脳裏に浮かぶのは、スターリッジであった。
高レベルな暗殺者、そして、モリス家に対する無礼、
主にシエンナであるが、その報復と実害が生じる前に
排除したのではないかと考えてしまった。
「おい、無駄話もそこそこにしろ。
少しは緊張しろ。低級だが、迷宮だ。
何が起こるか分からんぞ、集中しろ。
アルフレート君、君はそれが良く分かっている筈だが」
ロジェが気の緩みがちな若手の3人を叱責した。
「兄貴、そうは言っても出現するモンスターは、
ゴブリンにスライム、最深部のお宝はありふれた鋼の剣。
道中の魔物の魔石の方が価値ありそうだし、
こう何度も攻略しているといい加減、飽きてきた」
誠一も同感であったが、ロジェの事だから、
何か意図があってのことと思い、
会話に加わらずに成り行きを見守った。
「ヴェル、おまえは我がエンゲルス家の兄弟で
最も才能があると思っている。
この探索の意義が分からないようなことはないよな」
ロジェのトーンが一段、下った。
その声で近場にいたゴブリンは逃げ出してしまった。
ヴェルは真っ青な表情で頷いていた。
「ほほう、分かっているか。
ならば、シエンナ、説明しろ。
それをヴェルは評価して、添削・追記があるならしろ。
ここで小休止だ。キャロ、周囲を警戒しろ。
俺は、4人を少し指導する」
めずらしくキャロリーヌが何も言わずに
無言で頷き、周囲の警戒を始めた。
「ええっと、これは迷宮の雰囲気、主に暗さ・臭い、
大気といったものに慣れるためではないでしょうか?
4回目辺りから、ほぼ同じ時間で最深部に
到達しています。
それと先頭の順番を変えているのは、
マッピングトレーニングのためですかね。
中級のクラスなら、一層がここの最深部くらいまでの
広さになりますから」
ロジェが感心した様子でシエンナを見ていたが、
視線をヴェルに移した。
「いや、あのその通りです。
シエンナの言うと通りです」
おどおどしながらも取り敢えずヴェルは答えた。
周辺の迷宮を攻略していた。
そこには何故かラムデールも同行していた。
「おい、おまえ、弟や妹をあの屋敷に
残してきて大丈夫なのかよ」
ヴェルは誠一より一通りの事情を説明されたが、
どうしても気になり、ラムデールに直接、尋ねた。
「ああ、それは問題ない。
リゲル様と直接やり取りをしていた取り巻きたちは、
牢獄でしん死んでしまったからな。
あのお方はお一人では何もできないから、心配ない。
それに先生がやる気になったから、大丈夫だろう」
「おっそろしい話だよな。
牢屋で背中と喉笛をバッサリとやられてたんだろ。
悪いことはするもんじゃないな。なあ、アル!」
話しかけられた誠一は、軽く頷いた。
やり口からすると、高レベルの暗殺者の
仕業だろうとは思っていた。
そして、脳裏に浮かぶのは、スターリッジであった。
高レベルな暗殺者、そして、モリス家に対する無礼、
主にシエンナであるが、その報復と実害が生じる前に
排除したのではないかと考えてしまった。
「おい、無駄話もそこそこにしろ。
少しは緊張しろ。低級だが、迷宮だ。
何が起こるか分からんぞ、集中しろ。
アルフレート君、君はそれが良く分かっている筈だが」
ロジェが気の緩みがちな若手の3人を叱責した。
「兄貴、そうは言っても出現するモンスターは、
ゴブリンにスライム、最深部のお宝はありふれた鋼の剣。
道中の魔物の魔石の方が価値ありそうだし、
こう何度も攻略しているといい加減、飽きてきた」
誠一も同感であったが、ロジェの事だから、
何か意図があってのことと思い、
会話に加わらずに成り行きを見守った。
「ヴェル、おまえは我がエンゲルス家の兄弟で
最も才能があると思っている。
この探索の意義が分からないようなことはないよな」
ロジェのトーンが一段、下った。
その声で近場にいたゴブリンは逃げ出してしまった。
ヴェルは真っ青な表情で頷いていた。
「ほほう、分かっているか。
ならば、シエンナ、説明しろ。
それをヴェルは評価して、添削・追記があるならしろ。
ここで小休止だ。キャロ、周囲を警戒しろ。
俺は、4人を少し指導する」
めずらしくキャロリーヌが何も言わずに
無言で頷き、周囲の警戒を始めた。
「ええっと、これは迷宮の雰囲気、主に暗さ・臭い、
大気といったものに慣れるためではないでしょうか?
4回目辺りから、ほぼ同じ時間で最深部に
到達しています。
それと先頭の順番を変えているのは、
マッピングトレーニングのためですかね。
中級のクラスなら、一層がここの最深部くらいまでの
広さになりますから」
ロジェが感心した様子でシエンナを見ていたが、
視線をヴェルに移した。
「いや、あのその通りです。
シエンナの言うと通りです」
おどおどしながらも取り敢えずヴェルは答えた。
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