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114.帰郷6

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馬車からこっそりと覗いていたリゲルが激を飛ばした。
「ディリアム、ロムデール、
人数で囲めば、訳ないだろう。
頭を使え、囲んで石を投げつけろ。
餓鬼二人なら、余裕だろ
ラムデール、お前はあのでかい男を抑えろ」

のろのろと誠一たちを
囲むディリアムたちであった。
市中の連中を相手にするのとは訳が違うと
内心、怯えながらもリゲルに従った。
リゲルの勘気が恐ろしかったが、目の前の冒険者たちも
恐ろしく、彼等の行動は、鈍くなっていた。

ひょいっ、1人が喚くリゲルを恐れて石を投じた。
それにならい、次々に石を投じたが、
誠一たちに到達する前に石は地面に落ちてしまった。

「ひいいっ、どういうことだ」

「むーシエンナ。魔術を使っているでしょ。
ずるいなー活躍して。じゃっ、私もやっちゃおう」

フードの覆われている頬を膨らますキャロリーヌ。
矢を放つにはローブは邪魔であった。

「もーめんどくさい」
そう言うと、ローブを放り投げて、
弓を番えて、何本か矢を放った。

石を投じようとした男たちの石を破壊して、
手の平に矢が刺さっていた。
無論、絶叫していた。石を持っていた男どもは、
慌てて石をそこら辺に放り投げて、両手を挙げて、
武器を持っていないことを示した。

「ちょっと、キャロリーヌさん。
恐ろし過ぎますって」
悲鳴をあげている男どもを見ながら、
シエンナが防御魔術の展開を止めた。

「んーそうかな。
武器を振り上げた以上、
それなりの覚悟あってのことじゃないとね。
それに手っ取り早いでしょ。
あの手のチンピラを黙らせるにはね。
それにアル君も容赦なかったねー」

至極当然のように言うキャロリーヌを
少々、恐ろし気に見つめるシエンナであった。
「さてと、転げまわる男どもはいいとしても
ごろつきの視線が集中するのはちょっと、不快かなー。
それー」
と言うな否やシエンナのローブを剥ぎ取ってしまった。

二人の魅力的な女性を馬車からリゲルも眺めていた。
馬車の中には激しい歯ぎしりが鳴り響いていた。
両脇に侍らしている女どもに比べ、
タイプの違う二人の見目麗しき女どもと行動を
共にするアルフレートにリゲルは嫉妬していた。

馬車の外では二人の魅力的な女性たちに
男どもが不躾な視線を送っていた。
寒い中、短いスカートで惜しげもなく美脚を露わにし、
胸を強調する深いⅤのスリット、色気のある表情。
方や慎ましやかな服装であったが、
抱き心地の良さげな隠しきれぬふくよかな胸と尻、
短く揃った髪にあどけなさの残る愛嬌ある表情。

「おいおい、こりゃ、マジかよ」

「なにあの女、まじ、ありえねー」

「たまんねーな、おい」

「まるっこいのも悪くねーな」

シエンナは、男どもの視線と言葉に不快になり、
誠一の後ろに隠れてしまったが、
キャロリーヌは平然と受け止めていた。

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