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75.とある居酒屋での情景2

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「ちょっと、清涼。
何、女性のコンピューターを覗こうとしているのよ」
莉々子が清涼を窘めた。
そして、徐に自分のパッドを二人に見せた。
「清涼はもう、既に何度も見ているでしょ。
千晴、これが私のキャラよ。
今、ソルテールで大きなイベントが告知されているから、
そっちに移動中よ。清涼もそうでしょ?」
6名ほどの冒険者風のキャラが街道を
馬車と馬で移動していた。

「おーあのイベントか!
俺のクランからも一応、10名程を向かわせている。
魔術院の小イベ、進級試験から派生したイベだろ。
王国の騎士団も動くから結構、大きなイベントに
なりそうだしな。佐藤さんは参加するの?」
そう言えば、アルフレートはソルテールに
向かっていた気がした。

千晴は、彼らに教えて貰いながら、
パッドからヴェルトゥール王国戦記を起動させた。
彼らを見ている限りでは画面が残りっぱなしになることは
無さそうだったからだ。

「これはまた、随分と刺激的なシーンだね」
清涼がアルフレートを見て、呟いた。
「あちゃー浮気現場に出くわしちゃったね。
千晴、指示ださないの?」
莉々子は画面上に映るアルフレートと
リシェーヌの濃厚なキスシーンを眺めていた。
千晴は、二人の情事が終わり、殺人蜂と
交戦している画面を見つめながら、
現在の事情を清涼と莉々子に説明した。

「いや、あり得ない、あり得ない。
この年齢、このゲームの期間で
『神々への反逆者』の称号を得るとか。
佐藤さん、どんだけおかしな命令をしたのさ。
しかもこのメンバー構成。
勇者には絶対になり得ないけど、
勇者候補のNPCリシェーヌ、
モリス商会、エンゲルス冒険一家と
グリーンシティのNPCでプレーヤーが
欲しがるキャラばかりじゃん」

「しかし、これだともうロムるしかないんじゃない。
結構、レアな能力あるけど、操作出来ないんじゃ
面白くないでしょう」

ふと、千晴は気になることがあり、清涼に尋ねた。
「このリシェーヌが勇者になれないのは
何か理由があるの?
それと『神々への反逆者』って解除不能なやつなの?」

「当代の勇者フリッツは、確かレジェンドレアだった。
そして、前代も前前代もレジェンドレアらしい。
NPCのウルトラレア勇者候補は、本命の当て馬みたいなもんさ。
魔神イベントのどこかで死ぬだろうね。毎回、そうだと思う」
清涼がネットを検索して、自分の情報に上乗せして説明した。

「というか何でこの子たち、適正が違うのに
魔術院に通っているの?
あっ、でもファウスティノが学院長のあそこかー。
基礎能力の底上げのためかな。
本職の魔術師を目指すなら、魔法都市に行くしね。
千晴は始めたばかりだから、間違えちゃったのかな」
莉々子がアルフレートたちのステータスを見ながら、
感想を述べた。
そもそも憂さ晴らしから、始めた千晴は、
見当違いな二人の感想にどう答えていいかわからず、
適当に相槌を打っていた。

 ゲーム談話に花を咲かせつつ、だらだらと3時間ほど
過ごして、おひらきとなった。
お互いにゲーム上でやり取りできるように
ID交換をして、各々、帰途についた。

 どうでもいいゲームの話ばかりであったが、
久々に外で呑むお酒はおいしく、酔いが
程よくまわっていた。
一人暗い部屋でアルフレートと
リシェーヌの濃厚なキスシーンを見ていたら、
また、暗い感情に支配されていたと思ったが、
今日はませたガキが背伸びしている程度に
みんなで笑いながら過ごせた。
ゲームには全く興味が無かったが、
千晴は、少し本腰を入れて、プレイする気になっていた。
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