転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

68.鍛冶場3

鎧は革のタイプであってもサイズ調整が必要であり、
そこそこの時間がかかるために購入を控えた。
剣や槍は品揃えが豊富でどの店を覗いても
飽きることはなかった。ただしそれ相応の値段であった。

「たかっ、高すぎる。記念にナイフを
買う程度にするしかないな」
値札を見て、ため息をつくヴェルだった。

「鍛冶屋街の方も見てみよう」
誠一は鍛冶屋で寡黙なドワーフが
剣や槍を打っているところが見てみたかった。

家という家から、煙が出ていた。
先ほどいた場所より、建物全般が煤でくすんでいた。
トン、カーン、トントン、シュワワー、
鋼を鍛える音、冷ます音、皮を鞣す音、
様々な音が至る所から流れていた。
いやが上にも誠一のテンションは上がった。
リシェーヌはきょろきょろしながら、
ワンピースが汚れないか気にしているようだった。
3人が見学も含めて、うろうろしていると、
とある家から鋼を鍛えている音だが、
今までに比べると随分としょぼい音がした。

ヴェルは正直な感想を言ってしまった。
「ぷっ何この音。俺の方がマシかも」

すると突然、音が止み、ドアが開いた。
ヴェルは聞かれたと思い、焦った。

「ドワーフだ！」
誠一は叫んでした。
街中で見かけるドワーフと違い、
ごつい体躯に煤けた服、鍛冶屋の
イメージそのものであった。

「なんだ、小僧ども用か？」
不機嫌そうな表情で3人を値踏みするように
睨みつけた。
この辺も誠一のイメージ通りであった。

部屋の奥より甲高い声が聞えて来た。
誠一の想像だと、ここは無理やり弟子入りした
可愛い少女の登場であった。
「師匠、お客様ですか？
それとも取引先の業者ですか？」
ひょろ長い男が顔を出した。
到底、鋼を鍛えられるような男には見えなかった。

男が3人に目を向けると、
「これはまた、随分と可愛らしいお客様ですね」

「知らん、店の前で騒いでいたから、
顔を出してみただけだ。冷やかしだろう」
そう言って、ドワーフは家の中へ戻ろうとした。

男子二人がどうしたものかと顔を
見合わせていると、リシェーヌが行動に移った。
両腕で胸を寄せて、少し屈んだ。
胸部が緩いため、服に皺が寄った。
リシェーヌがイメージした本来のポーズとは
違ったが、十分に魅力的であった。

「どのようなご用件で？」
ひょろ長の男は、愛想よく尋ねた。
誠一は思った。美人にとって、人生とは
ちょろいもんだな。

「うーん、製法は、各鍛冶屋の秘技でしょう。
だから見れないですよね」
残念そうに呟き、続けた。

「お店に取り揃えてある武器だと、
まだまだ、私たちには大きいから、
鍛冶屋さんなら、上手く調整できるかなって」
満面の笑みで答えるリシェーヌだった。

「師匠、どうしますか？」
リシェーヌと師匠のドワーフの間を
視線が行ったり来たりするひょろ長の男であった。

「ふん、見られた程度で盗めるような
温い技術じゃないわ。
それと、おまえはもっと良く人を観察せぬか。
こいつらは騎士でもなければ、戦士でもないわ」

誠一とヴェルは驚いた表情でドワーフを見つめた。