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57.隊商の護衛1

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誠一とリシェーヌは、ギルドの一件からも
近場での依頼をこなしてそれなりの金銭を稼いだ。
「アル、付き合ってくれてありがとう。
流石に隊商の護衛に無一文で参加と言う訳には
いかないから、助かったよ」

誠一はそのことを完全に失念していた。
エスターライヒ家にお金があろうとも
自分が自由にできるお金はどうなっているのか
全く把握していなかった。
そのため、一連の依頼で稼いだお金が
リシェーヌと同様に隊商の護衛時の資金になった。
「いや、こちらこそ助かったよ。
そのことを失念していたから。
廃嫡された時点で、自由になるお金なんてないしね」

「あっ、ごめんなさい」
リシェーヌがはっとした表情で
慌てて頭をさげた。
誠一に嫌な事を思い出させたと思ったのだろう。

「ん?どうしたのリシェーヌ」
誠一は謝られることに思い当たる節がなく、
首を傾げた。
黄金の鬣と評されてもいいくらいの
金髪が軽く揺れた。
その仕草にリシェーヌならずとも
ドキリとするだろう。
 
「なっ何でもないの、気にしないで。
アルはアルだし!」
動揺を隠す様にリシェーヌが言い繕った。

数日後、モリス家の主催する隊商が出発した。
総勢、78名という規模であった。
無論、誠一たち以外にも冒険者が雇われていた。
何故か見知った冒険者たちがいた。

隊商の先導する冒険者たちは、
冒険者クラン「氷帝」より派遣された一団であった。
戦士5名と1名の賢者という構成だった。

中団で護衛に当たるのは、ロジェ、キャロリーヌ、
ヴェル、リシェーヌそして誠一とシエンナであった。

そして最後尾を固めるのは、先日、
ギルドでひと悶着を起こしたストラッツェール家の
お抱えの冒険者たちであった。
どうやらあの件で首になったようだった。
彼等はそれなりに名の通った者たちだった。
おそらくモリス家が今後の繋がりを
持つために声をかけたようであった。

 隊商は、モリス家の当主であるボーリスが
リーダーであり、スターリッジが実務を
取り仕切っていた。
シエンナ曰く、
「本店は母が仕切れば、滞りなく業務が進む」
との事だった。

「二人きりで毎日、依頼を受けてたのかよー。
くそっ、ランクは上がってないよな?」
ヴェルはどうやら二人の関係よりランクで
後れを取ることを気にしているようだった。

「ん?それは大丈夫。薬草集めが主だし。
今回の護衛のための資金集めが主だしね」
疑わし気な目線をリシェーヌと誠一に
送るシエンナにリシェーヌが変わらぬ調子で答えた。
いつもと変わらぬ雰囲気と物言いにシエンナが
ホッとしたような表情をした。
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