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53.チーム戦7
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戦士の前に二人の少年・少女が
各々、杖を構えて、対峙していた。
「アルは二人、倒したんだ。
しかもエスターライヒ家でも歴代僅か
数名しか使い手がいなかった技で。
凄いね、その歳でそこまで成長するなんて」
なんだろ、褒められているような内容なのに
皮肉にしか聞こえない。
自分の性格のせいなのか、それとものニコリともせず、
淡々とした口調で話すリシェーヌの
醸し出す雰囲気のせいなのか判断に迷う誠一だった。
「ぶはっ、嬢ちゃんも十分に出来過ぎだぞ。
その纏っている鎧なんぞ、
冒険者の間じゃ伝説級だぞ。
俺だって、始めて見た」
どうやら、眼前の男は、リシェーヌの言葉を
皮肉と判断して、フォローを入れたようだった。
にぶそうなでかぶつの割には気が利いていると
誠一は、心の中で彼の発言に感謝した。
「精霊と話せれば、誰にでもできるけどね。
精霊を纏っているといえるほどの強度があれば、
本当に伝説級なんでしょうけど、私のは全然、駄目」
「よかろう、この俺様の一撃で試してやろう。
耐えれば、伝説級かどうかは別として、
その技は誇ってもいいだろうよ。
小僧、巻き込まれて死んでも祟るなよ。
死ね、大旋風豪爆斧」
このおっさん、死ねって言ったよ、死ねって、
その気合をびんびんに感じて、
誠一は可能な限りの防御系の補助魔術を展開した。
広域を対象にした斧の技が炸裂した。
先ほどとは比較にならないほどの砂塵が
舞い上がり、訓練場の地面に大きな陥没を
作っていた。
舞い上がった砂塵が降り落ち、視界が開けると、
戦士は険しい視線を陥没の中央で杖を構える少女に向けた。
「てめー一体、何者だ。あり得ねーだろうが。
手加減をしたとは言え、鎧が無傷で残っているだと」
戦斧を構え直すと、今までとは比較に
ならないほどの殺気を発した。
誠一は殺気に当てられて、鳥肌が立ってしまった。
先ほど濡らしてしまった服が肌に纏わりつき、
悪寒に拍車をかけた。
「うーん、無傷ではないけど。
色んな所に痣ができているし、
そもそもお節介な人たちが随分と
沢山いたみたいだしね」
殺気を向けられている当の本人は
どこ吹く風の如く飄々と答えた。
「ぬかせ。俺の殺気を受けて尚、
その態度、並みの14歳じゃあり得ないんだよ。
そこら辺も含めて、おまえは
あり得ないんだよ。ここで死んどけ、化け物」
緩慢な動作から、突然、速度を上げて
リシェーヌに迫る戦士。絶妙な緩急が
彼の速さを実際より早く見せていた。
経験のなせる技であろう、リシェーヌは一瞬、
幻惑されて判断が遅れた。
「その遅れは、戦場では致命的だ」
振り上げられた戦斧が少女を捉えた。
少女の防御は間に合わないだろう。
離れた位置に退避していた誠一は
全速力で助けに入ろうとしたが、
全てがスローモーションに見えていた。
「リシェーヌ」
誠一は叫んだ。
何故、あの時、回避のために離れたんだろう、
脳裏に悔恨の念がよぎった。
吹き飛ばされようとも砕かれようとも
彼女の側にいるべきではなかったか。
リシェーヌとの距離は3m程であったが、
その距離が永遠に縮まらなかった。
無情にも振り下ろされた戦斧は、
リシェーヌの横の地面に凄まじい勢いで激突した。
「ふん、いい度胸だが、おまえ、一回、死んだぞ。
そのことを真剣に捉えておけよ。
戦場ではそれで終いだからな」
リシェーヌは真摯な面持ちで
ぺこりと頭を下げた。
「ご指導ありがとうございました」
「ふん、キャロリーヌとはまた、
違った魅力のようだな。
おまえを育てた者に感謝するんだな。
それと後ろの方で転がっている小僧にもな」
戦士は、大笑いすると、ティモールの方へ
歩いて行った。
各々、杖を構えて、対峙していた。
「アルは二人、倒したんだ。
しかもエスターライヒ家でも歴代僅か
数名しか使い手がいなかった技で。
凄いね、その歳でそこまで成長するなんて」
なんだろ、褒められているような内容なのに
皮肉にしか聞こえない。
自分の性格のせいなのか、それとものニコリともせず、
淡々とした口調で話すリシェーヌの
醸し出す雰囲気のせいなのか判断に迷う誠一だった。
「ぶはっ、嬢ちゃんも十分に出来過ぎだぞ。
その纏っている鎧なんぞ、
冒険者の間じゃ伝説級だぞ。
俺だって、始めて見た」
どうやら、眼前の男は、リシェーヌの言葉を
皮肉と判断して、フォローを入れたようだった。
にぶそうなでかぶつの割には気が利いていると
誠一は、心の中で彼の発言に感謝した。
「精霊と話せれば、誰にでもできるけどね。
精霊を纏っているといえるほどの強度があれば、
本当に伝説級なんでしょうけど、私のは全然、駄目」
「よかろう、この俺様の一撃で試してやろう。
耐えれば、伝説級かどうかは別として、
その技は誇ってもいいだろうよ。
小僧、巻き込まれて死んでも祟るなよ。
死ね、大旋風豪爆斧」
このおっさん、死ねって言ったよ、死ねって、
その気合をびんびんに感じて、
誠一は可能な限りの防御系の補助魔術を展開した。
広域を対象にした斧の技が炸裂した。
先ほどとは比較にならないほどの砂塵が
舞い上がり、訓練場の地面に大きな陥没を
作っていた。
舞い上がった砂塵が降り落ち、視界が開けると、
戦士は険しい視線を陥没の中央で杖を構える少女に向けた。
「てめー一体、何者だ。あり得ねーだろうが。
手加減をしたとは言え、鎧が無傷で残っているだと」
戦斧を構え直すと、今までとは比較に
ならないほどの殺気を発した。
誠一は殺気に当てられて、鳥肌が立ってしまった。
先ほど濡らしてしまった服が肌に纏わりつき、
悪寒に拍車をかけた。
「うーん、無傷ではないけど。
色んな所に痣ができているし、
そもそもお節介な人たちが随分と
沢山いたみたいだしね」
殺気を向けられている当の本人は
どこ吹く風の如く飄々と答えた。
「ぬかせ。俺の殺気を受けて尚、
その態度、並みの14歳じゃあり得ないんだよ。
そこら辺も含めて、おまえは
あり得ないんだよ。ここで死んどけ、化け物」
緩慢な動作から、突然、速度を上げて
リシェーヌに迫る戦士。絶妙な緩急が
彼の速さを実際より早く見せていた。
経験のなせる技であろう、リシェーヌは一瞬、
幻惑されて判断が遅れた。
「その遅れは、戦場では致命的だ」
振り上げられた戦斧が少女を捉えた。
少女の防御は間に合わないだろう。
離れた位置に退避していた誠一は
全速力で助けに入ろうとしたが、
全てがスローモーションに見えていた。
「リシェーヌ」
誠一は叫んだ。
何故、あの時、回避のために離れたんだろう、
脳裏に悔恨の念がよぎった。
吹き飛ばされようとも砕かれようとも
彼女の側にいるべきではなかったか。
リシェーヌとの距離は3m程であったが、
その距離が永遠に縮まらなかった。
無情にも振り下ろされた戦斧は、
リシェーヌの横の地面に凄まじい勢いで激突した。
「ふん、いい度胸だが、おまえ、一回、死んだぞ。
そのことを真剣に捉えておけよ。
戦場ではそれで終いだからな」
リシェーヌは真摯な面持ちで
ぺこりと頭を下げた。
「ご指導ありがとうございました」
「ふん、キャロリーヌとはまた、
違った魅力のようだな。
おまえを育てた者に感謝するんだな。
それと後ろの方で転がっている小僧にもな」
戦士は、大笑いすると、ティモールの方へ
歩いて行った。
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