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26.遺跡探索4
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「じゃ、さっきの開いた扉に行こう」
誠一の服を掴み、奥へ向かおうとした。
「ちょっと、待って。一旦、戻って合流しないと。
少なくとも安否の報告くらいしないとロジェさんたちが心配するよ」
リシェーヌは、服を放し、無言でスタスタと奥へ向かった。
「ちょっと、リシェーヌ、待てって。危険過ぎる。待てよ」
誠一は後ろから乱暴にリシェーヌの服を掴んだ。
その瞬間、誠一の天地が逆転した。
「急がないとあの扉がまた、閉まってしまう。
遺跡のマッピング報酬とお宝の両方を失ってしまう。
邪魔しないで」
倒された誠一はリシェーヌに馬乗りにされて、
胸ぐらを掴まれていた。
こんな余裕のないリシェーヌは珍しかった。
「わっわかたよ。付き合うから、落ち着けって」
「さっきの戦いで訓練とは比較にならない位の
十分な経験値が入手できたでしょう。
SSRなら、能力値の上昇も早いから、
この遺跡でそうそう後れを取ることはないわ、心配しないで」
二人は立ち上がり、先ほどの隠し扉に向かって、歩き出した。
隠し扉の中を覗くと、暗かった。
リシェーヌの杖の先端に光が灯った。
簡単な補助魔術とはいえ、無詠唱をリシェーヌが行使した。
どんだけスペックが高いんだよ、誠一は驚いてしまった。
「無詠唱なんて、世間が思うほど難しいことじゃない。
声に出すか出さないかの違い。それより中、中!」
これだから天才は!と呆れつつ、隠し部屋に入った。
室内には、ご立派な椅子と怪しげな祭壇、
そして祭壇の中心に青白い光物が置いてあった。
壁は何故か赤黒く、錆びた鉄の臭いが充満していた。
「ふーん、そういうことね」
納得顔のリシェーヌだった。
「どうこと?」
「この部屋から長く出られなかったゴブリンが
同族どうしで殺し合いを続けていたのかな。
そのうちの一匹が長きに渡り、生きながらえて、
経験を積んで、ゴブリンマスターまで
成長したのでしょう。
恐らく祭壇にあるアレは、限界突破の宝物ね。
あの宝物が現れる刻を考えると恐ろしい位の時間が
刻まれたはず」
殺しても殺しても湧き出るゴブリン。
溶け出す前に死体を漁り餓死を免れ生きながらえて、
ゴブリンから、ホブゴブリン、ゴブリンマスターと
長き時間を経て、成長したのだろう。
「恐ろしすぎるわ」
それしか感想が出なかった。
「うん、私たちなら、絶望して、狂ってしまうかもね。
それよりこの宝物はどうする?」
切り替え早っ、と思うも
さてどうしたものかと誠一は考えてしまった。
「アル、一応、説明しておくと、
ロジェとキャロリーヌ経由でギルドに報告の義務があるわ。
所有の権利は私たちにある。
けど、限界突破の宝物は、凄く貴重だから、
色々と面倒事に巻き込まれるかもしれない」
二人のレアリティからすると、
一生必要にならないかもしれない。
URにSSR、限界値までレベルが上がることは、
稀であった。
面倒事を思うと、金銭に換金した方が
得策かとも思った。
しかし、透き通るような蒼、見ていると
何かしらの力を与えられるように感じられた。
ブルーサファイアのようであった。
確かブルーサファイアの天然石には、
不純物を洗い流し、細胞を活性化してくれる効用が
あったはず。
そんな力が付与されるかもしれないと思い、誠一は、
「リシェーヌ、これは僕が持っておきたい。
代わりにマッピング報酬と他のお宝の権利、
ついでに足りない分は、出世払いと
将来の分割払いでお願いします」
と伝えた。
「ぷっ、出世払いって、アル!
出世する気なんだ!
うん、その野望に私も乗ってみようかな。
いいよ、絶対に無くさないでね」
廃嫡された伯爵家の長子、
立身出世が非常に難しい立場に
立たされているにも関わらず、
誠一の真摯な表情にその可能性を
リシェーヌは感じ取り、彼の提案を
受け入れた。
誠一は、お礼を言うと、
台座から石を取り、二人は部屋を出た。
誠一の服を掴み、奥へ向かおうとした。
「ちょっと、待って。一旦、戻って合流しないと。
少なくとも安否の報告くらいしないとロジェさんたちが心配するよ」
リシェーヌは、服を放し、無言でスタスタと奥へ向かった。
「ちょっと、リシェーヌ、待てって。危険過ぎる。待てよ」
誠一は後ろから乱暴にリシェーヌの服を掴んだ。
その瞬間、誠一の天地が逆転した。
「急がないとあの扉がまた、閉まってしまう。
遺跡のマッピング報酬とお宝の両方を失ってしまう。
邪魔しないで」
倒された誠一はリシェーヌに馬乗りにされて、
胸ぐらを掴まれていた。
こんな余裕のないリシェーヌは珍しかった。
「わっわかたよ。付き合うから、落ち着けって」
「さっきの戦いで訓練とは比較にならない位の
十分な経験値が入手できたでしょう。
SSRなら、能力値の上昇も早いから、
この遺跡でそうそう後れを取ることはないわ、心配しないで」
二人は立ち上がり、先ほどの隠し扉に向かって、歩き出した。
隠し扉の中を覗くと、暗かった。
リシェーヌの杖の先端に光が灯った。
簡単な補助魔術とはいえ、無詠唱をリシェーヌが行使した。
どんだけスペックが高いんだよ、誠一は驚いてしまった。
「無詠唱なんて、世間が思うほど難しいことじゃない。
声に出すか出さないかの違い。それより中、中!」
これだから天才は!と呆れつつ、隠し部屋に入った。
室内には、ご立派な椅子と怪しげな祭壇、
そして祭壇の中心に青白い光物が置いてあった。
壁は何故か赤黒く、錆びた鉄の臭いが充満していた。
「ふーん、そういうことね」
納得顔のリシェーヌだった。
「どうこと?」
「この部屋から長く出られなかったゴブリンが
同族どうしで殺し合いを続けていたのかな。
そのうちの一匹が長きに渡り、生きながらえて、
経験を積んで、ゴブリンマスターまで
成長したのでしょう。
恐らく祭壇にあるアレは、限界突破の宝物ね。
あの宝物が現れる刻を考えると恐ろしい位の時間が
刻まれたはず」
殺しても殺しても湧き出るゴブリン。
溶け出す前に死体を漁り餓死を免れ生きながらえて、
ゴブリンから、ホブゴブリン、ゴブリンマスターと
長き時間を経て、成長したのだろう。
「恐ろしすぎるわ」
それしか感想が出なかった。
「うん、私たちなら、絶望して、狂ってしまうかもね。
それよりこの宝物はどうする?」
切り替え早っ、と思うも
さてどうしたものかと誠一は考えてしまった。
「アル、一応、説明しておくと、
ロジェとキャロリーヌ経由でギルドに報告の義務があるわ。
所有の権利は私たちにある。
けど、限界突破の宝物は、凄く貴重だから、
色々と面倒事に巻き込まれるかもしれない」
二人のレアリティからすると、
一生必要にならないかもしれない。
URにSSR、限界値までレベルが上がることは、
稀であった。
面倒事を思うと、金銭に換金した方が
得策かとも思った。
しかし、透き通るような蒼、見ていると
何かしらの力を与えられるように感じられた。
ブルーサファイアのようであった。
確かブルーサファイアの天然石には、
不純物を洗い流し、細胞を活性化してくれる効用が
あったはず。
そんな力が付与されるかもしれないと思い、誠一は、
「リシェーヌ、これは僕が持っておきたい。
代わりにマッピング報酬と他のお宝の権利、
ついでに足りない分は、出世払いと
将来の分割払いでお願いします」
と伝えた。
「ぷっ、出世払いって、アル!
出世する気なんだ!
うん、その野望に私も乗ってみようかな。
いいよ、絶対に無くさないでね」
廃嫡された伯爵家の長子、
立身出世が非常に難しい立場に
立たされているにも関わらず、
誠一の真摯な表情にその可能性を
リシェーヌは感じ取り、彼の提案を
受け入れた。
誠一は、お礼を言うと、
台座から石を取り、二人は部屋を出た。
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