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22.休日の予定2

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この世界はゲームの世界なのだろうか、
それとも別世界なのだろうか、様々な人に触れ合うほど、
そのどちらなのか分からなくなっていた。
たまに吹く冷たい風がぼんやりと考え事をしている誠一を
現実に引き戻した。
ふらふらと歩いていたが、いつの間にか誠一は、
シエンナの家に到着していた。

エスターライヒ家の屋敷ほどではないにしろ、
それなりに大きな邸宅であった。そして、門前は人で賑わっていた。

その賑わいを見て、誠一はさてどうしものかな思案した。
思案顔で門前をうろうろしていると、
不審者と思われたのだろうか、数人の大人たちが誠一を囲んでいた。

これじゃ、ヴェルと同じだと誠一は
含み笑いを浮かべてしまった。
「おい、小僧、何の用だ?
店の前でうろうろされると困るだな」
何人かの若い衆が凄んだ。

誠一は、シエンナの家はどうやら商家らしいことが分かった。
「おい、やめねえか。子供相手に恥ずかしい」
少し後ろに控えていた細面の男が一喝した。
若い衆は何か言いたげだったが、一先ず黙った。

「可愛らしい坊やが気難しい顔でうろうろしていると、
お客さんが不審に思うんです。
悪いけど、用が無ければ、
別のところに行って貰えないかな?」
これぞ営業スマイルと言わんばかりの
にこやかな表情であった。

「流石は、若頭!」

「えっ」
誠一は息をのんだ。
その言葉に商家でなく、マフィア的なアレだったと理解した。
そして、細面の男の迫力がそれを裏付けていた。
「おい、おまえら!俺は番頭だっ!
そう呼べ、いいな。
坊やの顔が引き攣っているじゃねーか」

いやいやいや、引き攣ったのはあなたのせいですと、
心の中で突っ込む誠一であった。

「すみません、シエンナさんに用がありまして。
魔術院の同級生のアルフレートです」
寒い中、立ちっぱなしも辛くなってきたので、
用件を伝えた。

「アルフレート様でしたか!
うちは独自に隊商を組むこともあるんで、
荒くれ者が多いんですよ。
お知り合いとは気付かずに申し訳ございませんでした。
お嬢様のご確認が取れ次第、直ぐに案内します。
申し遅れましたが、私、このモリス商会で番頭を
勤めさせて頂いておりますスターリッジ申します」
慇懃に挨拶して、その後、若い衆を怒鳴り散らして、
追い払うと、自ら誠一を商館の応接室に招いた。

「アルフレート様のお名前は、
シエンナお嬢様からよく聞いております。
随分と優秀だとのことで。
この大都市でも稀な才能の持ち主リシェーヌ様と
同等もしくはそれ以上と伺っております」
社交辞令を真に受けるほど、誠一は
阿呆ではなかったために適当に話を合わせていた。
会話を続けていくうちに段々とスターリッジの目が
細くなっていった。

先ほどの司祭と同様に観察されているような気がして、
不快だった。
そして、それが表情に現れていたのだろう。
慌てて、スターリッジが弁解した。
「すみません、どうも13歳の話術には
思えずに、失礼いたしました」

「そうですか、逆に尋ねますが、
何歳くらいに思えましたか?」
誠一は、試しに尋ねた。

「正直に申し上げますと、16,17歳くらいでしょうか。
感情が顔に現れる辺り、まだまだ、
経験が必要なのかではと思いまして、
その位の年齢に思えました」

無言で見つめ合う二人。
妙な緊張感が二人を支配していたが、
その緊張を解くかのようにドアが勢いよく開いた。

「アル、久しぶりー。どうしたの?」
シエンナが嬉しそうに声をかけた。
用件を伝えるとシエンナは、即答した。

そして、スターリッジとやり合うこと10分、
お目付け役を同行させることで話が落ち着いた。

誠一は、シエンナとスターリッジに見送られて、
屋敷に戻った。
スターリッジは、アルフレートの姿が見えなくなると、
配下の者、数人を呼び、指示を与えた。
「エスターライヒ家の廃嫡された長子、アルフレートに
関する情報を集めろ。
エスターライヒ領にも人を送れ。いいな」
呼ばれた者たちは、先ほどの賑やかな若い衆と異なり、
無言で指示を受けると、無言で街中に消えていった。

「あの餓鬼、一体、何者だ。
俺様の鑑定眼がキャンセルされやがった」
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