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9.模擬戦

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練兵場に到着すると、地面に転がる同級生たちに
講師より紹介された。
そして、講師を含む同級生たちが彼の実力を
知りたかったのだろう。講師が提案をした。
「アルフレート君、これから君の実力を測りますが、
体力の続く限り走るとか、的に魔力を当てるとかより、
模擬戦をしてみませんか?」

同級生たちにどよめきが広がった。
一人の可愛らしい少女が指名されると
更にどよめきが大きくなった。
他の同級生のように無様に転がっておらず、
指名を受けた少女は、体育座りでちょこんと座っていた。

 指名された少女は頷くと立ち上がった。
周囲はどよめきから、歓声に変わった。
それだけでも彼女に人望のあることが窺えた。

誠一は、アルフレート・フォン・エスターライヒと
改めて名乗り、軽くお辞儀をした。
少女は、リシェーヌと名乗り、同様にお辞儀をした。
その容姿、仕草は誠一ならずとも惹かれるであろう
美しさがあった。
誠一の第一印象も不快なものでなく、
好意的なものであった。
周囲の歓声に耳を傾けると、男子だけでなく女子からの
声援もあがっており、男女関係なく人気の高さが窺えた。

 そんな彼女と対峙する誠一の心に
どす黒い感情が湧き上がってきた。
そしてその感情は、彼の心の内を
強制的に書き換えていった。

この女を這いつくばらせろ。
泣き叫ばせろ。犯せ、殺せ。

書き換えられた感情に身を委ねると力が
無限に湧き上がり、気分が高揚した。

晴天の中、講師の合図により模擬戦が開始された。

誠一は無造作にふらふらと彼女に向かって歩き始めた。
対して、リシェーヌは、杖を構えて様子を見ているようであった。
 誠一は手に持った杖を落とした。
次の瞬間、13歳とは思えぬ速度でリシェーヌの
後方へ移動していた。
その動きに誠一の四肢の筋肉は悲鳴を
上げているように軋んだ音を奏でた。

後方からリシェーヌの抱きしめると
膨張しているアレをリシェーヌへ密着させた。
そして、乱暴に成長過程の胸をまさぐった。

周囲の声援が静まった。
誰しもがこの状況に目を疑った。
リシェーヌも恐怖のために動けなくなっているのか、
微動だにしなかった。
感情の赴くままに誠一はリシェーヌの身体を
貪ろうとした。

リシェーヌから小さな声が聞えて来た。
その声に誠一は興奮した。

「風よ、吹き荒れろ、切り裂けエアカッター」
リシェーヌの詠唱が完了すると、誠一の背中を切り裂いた。

服は切り刻まれ、背中に無数の傷が生じた。

「ぐえっ、痛い」
誠一は、痛みのために一旦、
リシェーヌから離れた。
そして、ほんの僅かであるが、正気に戻れた。

顔には血管が浮かび上がり、目が充血し、
醜く歪んでいた。
そして凄まじい歯ぎしりをしていた。
口から血が流れていた。
握った拳は爪が皮膚にめり込み血が流れていた。
上半身の筋肉が隆起して、血管が浮かび上がり、
脈動していた。
とても13歳の少年には見えなかった。

「にっ逃げてくれ、がああっ。たっ頼む、離れてく、れ」
誠一は、全身に激痛を感じていた。
一瞬でも気を抜けば、先ほどの様に自分の気持ちが
上書きされそうであった。

心には、殺せ、犯せ、殺せ、殺せとどこからともなく響いていた。

「やめろ。嫌だ嫌だ、絶対にいや、だ」
口から血を吐きながら、叫んだ。

講師を含め、周囲の者たちは金縛りに
あったように動けなかった。
そんな中、リシェーヌは、トコトコと歩いて、誠一に近づいた。

「天啓を受けているの?余程、ろくでもない神意のようね。
そんなのに耳を傾けなくても大丈夫」

リシェーヌは、両手で彼の耳を塞いで、彼の眼を見つめた。

「たっ頼む、逃げて、くれ」
誠一はやっとの思いでそれだけを伝えた。

「あっあれは悪魔付きだ」

「狂信者!」

「皆殺しにされるぞ」
生徒たちは大混乱に落ちた。

「ふむ、天啓を受ける者であったか。
しかし、どうやら、碌でもない神に憑かれておるようじゃな。
これで少しは楽になるじゃろうて」

ふらりと現れた学院長が杖を振ると、
誠一とリシェーヌの足元から黄金の霧が
青空に向かって舞い上がった。

誠一は意識を失って、リシェーヌに抱きかかえられた。
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