転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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5.廃嫡

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エスターライヒ家の当代の
アーロン・フォン・エスターライヒは、
執務室で頭を抱えていた。
婚前の美しい娘の死について、領地で様々な憶測が
流れることは、容易に予想された。
更にマリアの死因に関して、伏せている点が多々あり、
そのことがアーロンの頭痛の種となっていた。

嫡子の部屋から退出した直後の死、
引き裂かれていた服、薬師によって報告された性交の後、
アルフレートと何かあったと思わざるを得なかった。

「アルフレートをここに呼べ」
アーロンが執事に伝え、10分程後、
執務室でアルフレートと面会した。

虚ろな目は腐った魚の目の様であり、
気だるそうな雰囲気は無気力な
おちこぼれの様であった。
病み上がりとはいえ、病の前の明朗活発な
アルフレートとは別人の様にアーロンには映った。
それは、ただ単に挙動不審な気持ちの悪いガキが
目の前にいるだけであった。

「話は聞いているだろう、アル。
昨晩、マリアとは何もなかったのだな?」
アルフレートは、きょろきょろと
落ち着きなく周りを見ている。
彼の纏う雰囲気と態度で有罪を下す人間も
いるだろうが、アーロンは、根気強く発言を待った。

「ここは?これは一体?分からない。
声が直接、命令をしてくる」
明らかに錯乱の様相を示していた。

「アルフレート、一言、答えてくれ。
昨晩、神の啓示を受けたのか?」

「わからな、い。わからない。
直接、脳に何かかが語り掛けてくる。
逆らえない」

アーロンは察した。
元々、アルフレートは、神の啓示を受ける資格を
持つものであった。
しかし、啓示は常に正しいと限らず、
10数年前に反逆者バッシュを生み出し、
世界が崩壊しかかったのは、有名な話であった。

アーロンには子供が沢山いた。
アルフレートが駄目であっても後継者に
困ることはなかった。
メイド一人の死など、この地域で絶大な力を
持つ伯爵家が闇に葬ることなど容易であった。
あとはこの男の処置であった。
下手に幽閉や死刑にすれば、下衆の勘繰りを
する政敵もでてくるであろう。

ふと、アーロンは尋ねた。
「アルフレート、おまえは、将来、伯爵家を継ぎたいのか?
それとも別にやりたいことはないのか?」

その言葉に反応するようにアルフレートは、
頭を掻きむしり、苦悶の表情をした。
「ま、まじゅ、魔術師となり、世界の理を解明した、したい」

「そうか、今、神託を受けていたのだな。
我が伯爵家は代々、王家へ騎士として仕えてきた。
魔術師を目指すなら、廃嫡とせざるを得ないな。
魔術院で学ぶがよい。
直ぐにでも準備しよう」
アーロンは内心微笑んでいた。
神託というこの世界での絶対の言葉を利用し、
体よくこの男を放逐できることを。
そして、十中八九、昨夜、罪を犯したこの男の醜聞を
隠せることを。
ぶつぶと何か言っているこの気持ち悪いガキを
早々に下がらせ、新たな嫡子について、
アーロンは考えを巡らせていた

 寝室にアルフレートは、戻されると、ベッドに倒れ込んだ。
そして、泣き叫んでいた。
数日間、部屋に引きこもっていたアルフレートだった。
その間に王都の魔術院への編入が早々に決まり、
屋敷を追い出されることになった。

ふらふらとしながら、馬車に向かうアルフレート。

「おい、アルフレート!一体何があった?しっかりしろ」
馬車の前でアルフレートの両肩を掴み、
激しく前後に身体を揺らされた。
顔つきは非常に似ており、年齢も同じくらいの少年であった。
唯一、違うのは、髪の色が黄金のアルフレートに対して、
紅いことであった。
そしてその後ろで小さい少女と少年が
上目遣いにアルフレートを見つめていた。

アルフレートはこの少年との関係を記憶のページを
開いて確認した。
それは、まるで彼らの履歴書を読んでいるようであった。

アルフレートより10日後に誕生した側室の子であった。
アルフレートへの礼節を欠くことはないが、
なにかと突っかかってくる弟であった。
小さい少女と少年は、更に別の側室の子であったが、
アルフレートは正妻の兄弟同様に接していた。
そのため、アルフレートに懐いていた。
そういった情報を得ることができた。

「わからない、わからない。君たちは一体?どうしてこんなことに」
生気の籠らない目でうわ言のように呟くアルフレート。

その言葉に反応するように少年は、
「アルフレート、おまえがそんな目をするな。
目を覚ませ!なんなんだよ、一体、マリアと何があった?」
更に激しくアルフレートに問い詰めるが、
荷物を運んでいる使用人たちに子供たちは、
押さえつけられて、屋敷の方に連れ戻されていった。

アルフレートの後方で怒鳴り散らす声が徐々に小さくなっていた。
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