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森の獣 2章 召喚されたけど、獣が討伐されていたので、やることないから、気ままに異世界を楽しんでみる
いらつく
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「つまり、要約すると、あの妖精もどきは、
姿・形を変えることが出来るということですね。
みなさん、おつかれのところすみませんが、
今の姿の絵を描いて頂けませんか?」
と事の顛末を聞いたメープルがみんなに依頼した。
「次の町に着いたら、描くよ、司祭。
そのほうが旅も進むしいいだろう」
と才籐が言うと、メープルは、軽く頷いた。
「ところで、才籐さん、さっきは、なぜあのもどきの
防壁が解除されたのですか?」
と九之池が尋ねた。
「あれかっ!まあ、賭けだったけどよ、
なんとなく、魔術というより、
風の精霊の加護のような雰囲気だったから、
風の精霊と相性の悪いのが封印されている魔石を
投じたのさ。そしたら、防壁が揺らぐと思って」
「えっ、じゃあ確証なくやったんですか!
失敗してたら、あのもどきに何されてたか
分からなかったんですよ」
と九之池がむすっとして答えた。
「まー時には賭けも必要じゃん。
常に正解なんて用意されているわけないし」
と才籐はどこ吹く風で答えた。
九之池は納得できないのか、うーうー言いながら、
才籐と話していたが、他のメンバーが
旅路の準備を終えて、動き出したため、
一言、「納得いかない」
と呟き、馬車に乗り込んだ。
そんな九之池の姿にエドゥアールとメープルは
諦めきったかのような視線を送っていた。
ルージェナは困ったように見つめていた。
次の町でもどきの新しい姿の絵を
メープルに渡し、キリア王朝に向かった。
この旅路の野営で、珍しくエドゥアールと才籐が
同じ時間帯で警戒にあたることになった。
「才籐、確か、九之池と同じ出身でしたよね?」
エドゥアールが才籐に質問した。
「ええ、そうですけど、時代は
おっさんのほうが少し早いかなぁ」
と才籐。
「あれは、元の世界では何をしていたんだ?
どういう生活を送ればあんなになんるんだ?」
エドゥアールが少し怒気を孕んで質問を続けた。
才籐はおそらく、エドゥアールが内心、九之池を
忌避しているのだろう察した。
「それはなんともでもまあ、こっちでいう奴隷的な感じで、
思考を止め、ただひたすらに同じことを繰り返す仕事を
していたみたいですからね。
そして、帰って、寝て食べて起きて職場に向かう。
20年以上、繰り返せば、偏屈というかなんというかまあ」
「つまり、与えられた仕事で、心が徐々に
摩耗してしまって、あんなになったということか!」
エドゥアールは自分なりの解釈を才籐に言った。
「でもまあ、仕事の選択肢はあったと思いますよ。
働いたことないから、何とも言えませんけど、
僕らが居た国は、他の国に比べて、
恵まれていましたから。
それにおなじような仕事を
してもそうならない方も大勢いますよ」
「つまり、奴の元々の性格ゆえに
自己中心的というかあんな感じに
その仕事が拍車をかけてしまったということか」
「さあ、それはなんとも。
まあ、でも元居た世界であったなら、
話すら交わさない関係だったでしょうね。
裏であのおやじきもいとか
うぜーとか陰口をたたいていたかな」
と才籐が纏めると、エドゥアールも
同様のことを思ったのか、笑いながら、軽く頷いた。
九之池は野営にいまだに中々、慣れず、
たまにうとうととして、夜を過ごすことがあった。
今日もそんな夜だった。才籐とエドゥアールが
自分をネタに笑い話をしているのが聞こえる。
内容は分からないが、時節、自分の名前と
労働という言葉が聞こえることから、
元の世界での自分のことでも
嘲笑しているのだろうと感じた。
僅かだが、九之池の心を暗く塗りつぶした。
前回の戦闘で大して役にも立たなかった
プライドばかり高い連中が悔しくて、
納得できずに陰口を叩いているのだろう。
九之池は勝手に思い込み、イライラと歯ぎしりをした。
姿・形を変えることが出来るということですね。
みなさん、おつかれのところすみませんが、
今の姿の絵を描いて頂けませんか?」
と事の顛末を聞いたメープルがみんなに依頼した。
「次の町に着いたら、描くよ、司祭。
そのほうが旅も進むしいいだろう」
と才籐が言うと、メープルは、軽く頷いた。
「ところで、才籐さん、さっきは、なぜあのもどきの
防壁が解除されたのですか?」
と九之池が尋ねた。
「あれかっ!まあ、賭けだったけどよ、
なんとなく、魔術というより、
風の精霊の加護のような雰囲気だったから、
風の精霊と相性の悪いのが封印されている魔石を
投じたのさ。そしたら、防壁が揺らぐと思って」
「えっ、じゃあ確証なくやったんですか!
失敗してたら、あのもどきに何されてたか
分からなかったんですよ」
と九之池がむすっとして答えた。
「まー時には賭けも必要じゃん。
常に正解なんて用意されているわけないし」
と才籐はどこ吹く風で答えた。
九之池は納得できないのか、うーうー言いながら、
才籐と話していたが、他のメンバーが
旅路の準備を終えて、動き出したため、
一言、「納得いかない」
と呟き、馬車に乗り込んだ。
そんな九之池の姿にエドゥアールとメープルは
諦めきったかのような視線を送っていた。
ルージェナは困ったように見つめていた。
次の町でもどきの新しい姿の絵を
メープルに渡し、キリア王朝に向かった。
この旅路の野営で、珍しくエドゥアールと才籐が
同じ時間帯で警戒にあたることになった。
「才籐、確か、九之池と同じ出身でしたよね?」
エドゥアールが才籐に質問した。
「ええ、そうですけど、時代は
おっさんのほうが少し早いかなぁ」
と才籐。
「あれは、元の世界では何をしていたんだ?
どういう生活を送ればあんなになんるんだ?」
エドゥアールが少し怒気を孕んで質問を続けた。
才籐はおそらく、エドゥアールが内心、九之池を
忌避しているのだろう察した。
「それはなんともでもまあ、こっちでいう奴隷的な感じで、
思考を止め、ただひたすらに同じことを繰り返す仕事を
していたみたいですからね。
そして、帰って、寝て食べて起きて職場に向かう。
20年以上、繰り返せば、偏屈というかなんというかまあ」
「つまり、与えられた仕事で、心が徐々に
摩耗してしまって、あんなになったということか!」
エドゥアールは自分なりの解釈を才籐に言った。
「でもまあ、仕事の選択肢はあったと思いますよ。
働いたことないから、何とも言えませんけど、
僕らが居た国は、他の国に比べて、
恵まれていましたから。
それにおなじような仕事を
してもそうならない方も大勢いますよ」
「つまり、奴の元々の性格ゆえに
自己中心的というかあんな感じに
その仕事が拍車をかけてしまったということか」
「さあ、それはなんとも。
まあ、でも元居た世界であったなら、
話すら交わさない関係だったでしょうね。
裏であのおやじきもいとか
うぜーとか陰口をたたいていたかな」
と才籐が纏めると、エドゥアールも
同様のことを思ったのか、笑いながら、軽く頷いた。
九之池は野営にいまだに中々、慣れず、
たまにうとうととして、夜を過ごすことがあった。
今日もそんな夜だった。才籐とエドゥアールが
自分をネタに笑い話をしているのが聞こえる。
内容は分からないが、時節、自分の名前と
労働という言葉が聞こえることから、
元の世界での自分のことでも
嘲笑しているのだろうと感じた。
僅かだが、九之池の心を暗く塗りつぶした。
前回の戦闘で大して役にも立たなかった
プライドばかり高い連中が悔しくて、
納得できずに陰口を叩いているのだろう。
九之池は勝手に思い込み、イライラと歯ぎしりをした。
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