異世界にもあった鬼畜な会社の鬼畜な業務異世界転移してきたのに変わらぬ社畜生活

ゆうた

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脅威

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 ロベリオは、視線を微動だにしない異形種から外さない。

加賀見はそんなロベリオを不思議思い、声をかけた。
「ロベリオさん、どうかしましたか?
確かに妙に瑞々しさを感じさせて、
今までの異形種とは少し違いますが、
何か他に気になる点でもありますか?」

加賀見が話しかけても答えず、油断なく異形種を凝視している。
そして、誰に話しかけるでもなく、呟いた。

「こいつ、動いた。白目がわずかだが動いた」

姿勢を低くし、如何なる攻撃にも
対処できるようロベリオが右手にレーザーナイフを構えた。
「おりた、獲物を構えな。杞憂だといいけど、
こいつは、私たちを認識しているかもしれない。
カーリン、こいつが動いたかチェック。
最悪、こいつと一緒にドアを閉じな。いいね」

ここまで加賀見や織多さんはいくつもの死線を
超えて来た。
しかし、そういった経験では、到底及ばないロベリオの
いつになく真剣な表情と行動に加賀見と織多さんも緊張した。

「確かに眼球が一瞬だけど、動いているわ。
そして、その方向はあなたたちね」
カーリンの声も緊張していた。

「じゃっ、カーリン、さっきの件、よろしくね。
さすがにこの部屋と通路までは、中抜きして、
仕様以下ってことはないでしょうから。
っとにやることがせこい。
資金が潤沢な地区なんだから、仕様を満たした上で
中抜きしろっての。
なあ、かがみぃもそう思うでしょ」

ロベリオは、軽口を叩くも表情に余裕はなかった。
周囲に目立った変化はないにも関わらず、空気が重く、
暑苦しさを彼らに感じさせていた。

「かがみぃ、先頭で部屋を出て、そのあとはおりたね」
加賀見は頷き、動き始めた。
そして、得物を構えながら、織多さんが続いた。
最後にロベリオが動き始めた。

ピシっ、ガラスにクラックが入った時のような音がした。
異形種は立ち上がり、ヨタヨタとクラック部に
向かって、歩き始めた。
そして、拳を振り上げ、ガラスを何度も何度も叩きつけた。
「ロベリオさん、急いでください。早く門を出ないと」

第2門付近で加賀見と織多さんがロベリオを待った。

「ふううぅ、参ったね、これは!」
一人、呟くロベリオだった。

ガラスは砕け散り、人型の異形種が歩き始めた。
眼球はクルクルと回り、焦点は定まっていなかった。
だらりと下がった両腕は、歩くごとに
ゆらゆらと揺れていた。
周りの採取物には興味を示さず、
ひたすら前進する異形種であった。
ロベリオさえも認識を
していないような素振りであった。

 異業種に斬りかかるロベリオ。
緩慢な動きで異形種は回避を試みつつ、
腕でナイフを防ごうとした。
異形種は左腕が引き裂かれ、床にぽとりと落ちた。
右腕が鞭のようにしなり、無造作に
ロベリオを叩き飛ばした。
ごろごろと転がり、第2門と3門の
中央付近までロベリオは後退した。
その瞬間、黒い3門は閉門を始めていた。
地面に転がる左腕がべちょりと門に潰された。

 加賀見は運んでいた手動台車を
後方へ蹴り飛ばし、ロベリオを素早く担いだ。

「すまない、かがみぃ。
右腕の骨が砕けたぽいよ。ぷらんぷらんしてるし。
あれはモーニングスターで殴られたような感じだった。
まさか、あんな速さで動けるとは予想してなかったよ」
額に汗を流しながら、答えるロベリオだった。

「あれは、随分と液体を溜めていますが、
実験と称して面白半分に液体を与えていたのかもしれませんね」
と加賀見が軽口を叩くロベリオに若干、安心したのか答えた。

「さてと、王子様に抱っこされるのは、
乙女の夢だけど、いい大人だし、
かがみぃ、降ろして」
ロベリオは加賀見から離れると、
左手に銃を持ち、その場に留まった。

「おりた、悪いけど、奴を足止めするのを
手伝って貰うよ。
かがみぃは管理センターに向かって。
カーリンをサポートして」

「はっはひ」
突然のことに織多さんの返事が裏返っていた。

「まーおりたを死なせるようなことはないから、心配無用。
それとアレは適当なところに放置しておけばいいよ。
例え、戻ったとしても使いもんにならないわ」

そう言って、頭を強く叩いた。

「ぎゃっ」
無様な悲鳴を上げる副船長。
いつの間にか起きていたのだろうが、
意識を失ったふりをしていたようだった。

織多さんがポツリと一言。
「最低な行動です」
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