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エネルギー

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加賀見とロベリオが作業を終えて、
各々、部屋に戻って、休憩を取っているとき、
管理者専用会議室に4人の管理者が集まっていた。

「二名ほどいませんが、
今後の計画について、話しましょう」
と副船長が言うと、一人の管理者が質問を投げた。

「その前に一名の管理者は独房にいることが
分かっているが、もう一人は所在が不明だ。
何かしらの捜索をすすめるべきではないのかな?」

「ふむ、確かにそれはそうですね。
現場から人員を割くことは、現状、無理なことは
皆さんも把握しておられるでしょう。
あなた方で探すのが効率的な手段でしょうね」
と副船長が他の3人に当然の如く伝えた。

「いや、それは必要ないでしょう。
彼も大人だ。それなりの事情で
行動しているのでしょう」

「そうそう、自分の行動に責任を
持たないとなりませんよ。
部下に示しがつきませんな」

口々に捜索が必要ない理由を
唱える管理者たちだった。
そんな慌てふためく行為をにやにやとしながら、
満足そうに見やる副船長だった。

「では、二名がこの地に残るということで、
計画の修正を行います。
おそらくそれで、エネルギーの残量の件は、
問題なくなるでしょう」
と副船長が言うと、他の3人はほっとした表情になった。

副船長は、修理が完了するまでに人員を
何らかの手段で更に減らすつもりであった。
2名がここに残るだけではエネルギーが
不足することは計算ずみであった。
最低でも3名、余裕を持たせるために5名を
この地に残すことを考えていた。

帰国後の栄誉の取り合いで、邪魔に
なりそうなここにいる3人は当然として、
残りの二人は加賀見、織多にするかなと
思索している副船長だった。

織多さんより先に部屋に戻った加賀見は、
シャワーを浴びていた。
シャワーを浴びて、心を落ち着けることに努めた。
実際に手を下した訳ではなかった分、
死に際を見た訳ではない分、僅かながら、
心を慰めることが出来たが、
冷静な加賀見であっても殺害に手を
貸した事で心が落ち着かなかった。

「鬼畜な業務があったもんだな。
さて、このことは墓場まで持って行かないと」
と呟き、シャワールームを出た。
そして、日課の業務報告書を作成した。

加賀見が部屋に戻ってから、
2時間ほど経つと、織多さんが戻ってきた。

「おつかれさまです、加賀見さん。
ふぅぅー疲れました。会話もなく、何事もなく
凄く時間が過ぎるのを長く感じました」
と戻ると加賀見に伝えた。

「それの状況はですね。遥か昔のアジア地区で、
社員を退職に追い込むために
行われた手法に近い状況ですよ。
ちなみにその部屋は折檻部屋とか
追い出し部屋と呼ばれていました」
と加賀見が知識を披露した。

「えええっー何それ、怖いっ。
人減らしのためにもしかして、
ここだと船外に追い出されそうですよね」
と織多さんが頭を抱えて、答えた。

「まあ、流行ったのはごく一部のアジア地域ですから。
今は、もう、そんな怪しげな企業習慣はありませんよ。
いい経験をしたと思いましょう」
と加賀見が笑いながら、言った。

「加賀見さんがそう言うなら、大丈夫ですよね」
と若干、不安そうな織多さんだった。

「多分、あと6日もすれば、離陸できますよ。
それまでに異形種と事務局に
目を付けられないようにしておけば、
問題なく地球に戻れますよ」

加賀見は、不安をかき消すためにか、
努めて明るく答えた。
その声を聞いた織多さんは、軽く頷くと、
シャワールームに向かった。
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