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面談の結果

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「さて、よくぞ生還してくれました。
我々は大変、このことを誇りに思うよ」
と一人の管理者がまず、言った。

そして、別の管理者が続けた。
「そう、この渡航船ミラーワールドが非常事態の時に
君たちのような優秀な人物の帰還はうれしい限りだよ」
と加賀見たちにおもねるように言った。

他の管理者たちも各々、帰還を喜ぶ態の発言を発し、
一通りそれが済むと、場を沈黙が支配した。

加賀見たち3人も彼らの発言に軽く頷くだけで、
特に何も言わなかった。

沈黙に耐えかねたのか、一人の管理者が発現をした。
「君たちが過酷な環境を経て、戻ってきたことは
評価されるべきことだが、船内への強引な侵入と
事務局員への暴行は、看過できないな。
一つ間違えれば、船内の生存者が
全滅するリスクがあったのだよ。
それにそこの女と共謀していることは、
非常に問題であると思う。
君らは事情を知らないかもしれないが、
彼女は、事務局への反乱者であり、
逃亡者でもあるんだよ。
そこら辺のことを考慮して、君らの待遇を考えようかと思う」

その発言を聴き、織多さんが一瞬、
怒気を発したが、加賀見がそれを制した。

「うーん、それはちょっと違うんじゃないかなぁー。
かがみぃーとおりたは全く事情も知らなかったし、
警備部の事務局員は問答無用で銃を発砲していたいよ。
動画を見る?」
とロベリオが加賀見たちの後方から、発言をした。

「一事務局員が意見をするな。
発言を許した覚えはないぞ」
と管理者が一喝した。

「ふむふむ、そうですか、そうなんですね。
しかしここで最も大きな問題は、尾賀さんを
含む3名が乗船することになると、
2名ほどこの地へ残ることになりますねぇ。
さて、どうしたものでしょう」
とさらりと副船長がこの場に爆弾を投下した。
他の管理者たちもこのことは、把握していたのだろう。
何かしら加賀見たちの不手際や罪をでっち上げて、
ここへ放置しようと目論んでいたのだろうか。

「死線を掻い潜り、戻ってきた彼ら二人に
銃を突きつけるとは、これは、警備部の責任者に
何かしらのペナルティがあって然るべきですねぇ」
と副船長は、にやにやしながら、
警備部の責任者を見つめた。

「いやいや、あの場所を警備していた彼らには、
それ相応の判断力もあり、自分らの行動の責任は、
自分らで取ることができますわ」
と額に大粒の汗を垂らしながら、必死に弁解していた。

「ほほう、となりますと、殺人未遂の責を
取らせるということで、あの二名は、この地に
追放ということでよろしいのですかな。
それとも監督責任であなたがこの地に残りますかな?」
と副船長はにやにやしながら、警備部の責任者を追い詰めた。

警備部の席ん者は、全身を震わせながら、
びくびくしながら、答えた。
「むっむむむっ、無論、あの二人のかかかって
勝手な行動は、自己責任でしょうううう。
わたたたわたしには、関係ございません」

「そうですか、では、この地に放置する二名は
その二人ということで。
警備部の責任者から、罪が下されました。
ロベリオ、お手数ですが、二人を拘束しなさい。
追放に関しては特に伝える必要はありません」
と副船長はにやにやしながら、警備部の責任者に
向かって言った。

その言葉を聞いて、警備部の責任者は、
がたがたと震え、口から泡を噴き出しながら、
おれじゃないおれじゃないおれのせいじゃないと
同じ言葉を呟いていた。
他の管理者たちは、沈黙のままだった。

「さてと、加賀見君、再度、船が離陸するにあたって、
協力してほしいことがあります。
技術的にはロベリオが対応しますが、
君らも疲れているでしょうから、一旦、休みましょう。
部屋は事務局エリアのスペースを使って貰います。
申し訳ないですが、織多さんと同室でお願います。
さて、尾賀さん、あなたに関しては、
独房で大人しくしていて貰いましょうかな」
とこの会議で急速に立場を回復した副船長が言うと、
尾賀は逆らわずに頷いた。

加賀見と織多さんは、指示された部屋に
向かうために軽く会釈をして、管理者専用会議室を後にした。

「かがみぃー、8時間後に連絡するから、
それまでおりたと十分に楽しんでね。
食事は直ぐに運んでおくように伝えておくヨ。
尾賀はこっちだよ。副船長の温情で助かったけど、
今度、盾突いたら、本当にさようならになるからね」

加賀見は軽く手を振って、ロベリオと別れると、
織多さんと部屋に向かって歩き出した。

「加賀見さん、さっきは一言も話さなかったですねー。
ちょっと驚きました。ねちねちとあげつらうと
思ったんですけど」
と二人になると織多さんが尋ねた。

「少し違いますが、沈黙は金なりですよ。
尾賀さんから副船長の状況を聞いていましたからね。
恐らく力を示すために私たちを利用してくるのではと思って、
だんまりを決め込みましたが、予想以上の効果でした」
と言って、加賀見は苦笑いをした。

それを聞いて織多さんも苦笑いをした。
指定された部屋に入ると、そこには
ダブルベッドが一つだけだった。
二人は顔を見合わせ、どうしたものかと
お互いの表情を探りあった。
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