上 下
109 / 179

面会

しおりを挟む
無言でロベリオの後に続く加賀見たちだった。
彼らの足音のみが通路に響いていた。
加賀見は前方を歩くロベリオを
注意深く観察しながら、ついて行った。
ふと、隣を歩く織多さんに目を向けると、
何故か睨みつけるようにロベリオを見ていた。

「織多さん、どうしましか?」

「いえ、理不尽ですよねー。
あんなに腰の位置が高くって、
それでいて、足がすらりとして、
後ろから見てもモデルみたいで
羨ましいですよね。
加賀見さんも腰回りを
ガン見していましたよね?」
それは質問というよりも断言だった。

オマエハコノジョウキョウデ
ナニ二チュウシシテイルンダ
と織多さんの心の声が聞こえて来た。

加賀見としては誤解であったが、
確かに自然と彼女の腰回りから、
臀部あたりに目が向かっていたような気がした。

 突然、ロベリオが後ろを振り返り、
「流石は二人だねー。この状況でまだまだ、
余裕がありそうだね」
と言った。

「管理者に会いに向かっているって
ことでいいですよね?」
と加賀見がロベリオの話を無視して尋ねた。

「そっ、当然のことながら、生存者の保護は、
重要な案件の一つだからね。
事務局にはその義務があるから。
それに元宮がどこまで、批判的なことを
書き残しているか分からないしね。
実績さえ残しておけば、彼の書き残したことが
妄言となるから」
とロベリオは言うと、ニコニコと笑った。
  
「つまり我々を保護するのは、保険と言うことですか」

「さあ?それを判断するのは管理者だし。
私は、判断する材料を提供するだけだよ。
まあ、加賀見たちがいる方がおもしろそうじゃん」
とロベリオは言うと、ゲラゲラと笑った。

この会話を境に話しながら、無機質な通路を
しばらく歩くと、管理者専用会議室と
書かれたプレートの前に到着した。
加賀見はそのプレートを見ると、
つい吹き出してしまった。
探索という目的の船に何と無駄なスペースを
割いているのだろうかと。
権威者たる者たちが己を特別視させるために
出航してから、このスペースを確保したのだろう。
流石に出航前から、このような無用なスペースが
あったとは思いたくない加賀見だった。

監視モニターが有効になっているのだろうか、
ドアのモニターから、「入り給え」と声が聞こえて来た。

ロベリオがドアを手で開けると、
加賀見たちの前に6人の管理者たちが
椅子に横一列に座っていた。
加賀見にとって、一名ほどよく見慣れた顔があったが、
無表情であった。そして、就職面接のような雰囲気と
レイアウトに加賀見はうんざりしてしまった。

加賀見は内心、思いとは別に
粛々とした表情で入室し、彼等の前に立った。
織多さんは、場の雰囲気に
驚きつつも神妙な顔つきで加賀見の横に立った。

尾賀は、二人の後ろで考え深げな表情で立っていた。

ロベリオが三名の名前を伝えると、
加賀見たちは彼等に着席するように促された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

処理中です...