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死亡者
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「あああああ!もうっ、何か台無しですよ、
加賀見さんのせいで!」
と織多さんが歩きながら、加賀見に話しかけた。
「どうしましたか?」
と加賀見が不思議そうに尋ねた。
「いや、何て言うのか、こんな状況ですから、
もっとこう、不安とか悲壮感に覆われて、
絶望してるはずなのに、何かこう、
心がモヤモヤしてるというか釈然としないというか、
そんな感じなんですよ。そもそも加賀見さんは、
地球に帰れると思っているですか?」
と織多さんが現在の気持ちを加賀見にぶつけた。
「それは、不時着した母船の状況次第ではないでしょうか?
それに戻らないと織多さんお薦めの漢方が入手できませんから」
とにこやかに笑って、答える加賀見だった。
「そっそうですけど、なんかもう話しても釈然としません」
とどうも現状の気分に納得できない織多さんが不満げに答えた。
その後、二人は、しばらく無言で歩いていた。
物資まで最短距離を歩いているが、距離はかなりあるため、
休憩を挟みながら、移動していた。
「織多さん、ちょっと待ってください」
と加賀見が立ち止まった。
「どうしました?異形種ですか?」
と織多さんが緊張感のない声で答えた。
「いえ、あそこにリュックらしきものが見えませんか?」
「あっ、確かに。でも割れたバイザーの破片らしきものも見えますね」
おそらく、異形種に殺害された探索者であろう。
遺体は、異形種によってどこかに搬送され、不必要な物が
置き捨てられたのだろうと二人は予想した。
「一応、確認しておきましょう。
何か役立つものがあるかもしれませんよ、織多さん」
と加賀見は言って、リュックの方に向かった。
リュックとその中にあった古い自作のPCを見ると、
二人は、目を閉じて、手を合わせて、冥福を祈った。
死んだであろう元宮のために。
「ふう、元宮さんは、生き残れなかったんだ」
と織多さんがぽつりといった。
異形種に叩き割られたのだろうか、バイザーの破片は、
飛散していた。どうしてこうなったのか、二人には知る由もなかった。
加賀見は、PCを起動させた。パスワードは、元宮が教えてくれていた。
『何してる、仕事ご苦労さん』とローマ字で打ち込むが、エラーを表示した。
???どういうことだ。嘘を教えたのか?加賀見が考えていると、
織多さんが、「何してる、仕事ご苦労さんがパスワードなんですか?」
と聞いてきた。
「そうですよ。元宮さんが以前、教えてくれました。
それをローマ字で打ち込んだのですが、エラーを表示しているんです」
「うーん、数字で724106、45105963とか数字遊びしてるのかな?」
と笑いながら、加賀見に背中から、腕を回して、ポチポチーとキーボードに打ち込んだ。
「ちょ、織多さん。パスワードはミスできる回数が、、、あっ」
PCは起動し始めていた。背景に尾賀の下着姿が映しだされていた。
そして、加賀見というフォルダが目に付いたためにクリックして、
開けてみた。
メモ帳に『read me』と書かれたファイルがあり、加賀見は開けた。
『これを読んでいるということは、僕がPCを無くしたか、
死んだかで加賀見さんが、手に入れたのでしょう。
他のフォルダにも役立つものがありまので、役立ててください。
ここのフォルダは特に役に立ちますが、絶対、女性に閲覧禁止です。
事務局の指示があったため、加賀見さんと織多さんを残して、
私は、母船に向かうことになるでしょう。
まあ、尾賀と一緒では、到着できる可能性は相当、
低いでしょうけどね。
私は、探索車両から置き捨てられて、異形種と相見えるのが
恐ろしかったのです。
もし、このPCを見ているなら、二人は生きているはずです。
必ず生還してください。
探索車両から置き捨てたお詫びにはなり得ませんが、
地球に戻ったら、私の遺産を相続してください。
ついでに各種解約もお願いします。
遺書は別のフォルダにありますので、ご確認を。
織多さんと幸せになれるように祈っております』
下位のフォルダには、ミラーワールド109号に
乗船していた美人どころの名前が記載されていた。
加賀見は嫌な予感がして、そのフォルダを開けずに
他のフォルダに移ろうと思ったその矢先、織多さんが
自分の名前のフォルダを開けた。
そして、動画を再生してしまった。
再生されている動画は、お互いに下着姿で加賀見が
織多さんの後方から、逸物を彼女のお尻に擦り付けていていた。
そして、いやらしい声と吐息を吐いていた。
そして、我に返った織多ささんが「ぎゃあああぁー」
と叫び、加賀見を放り投げていた。
そして、動画が停止した。
加賀見を後方から羽交い締めにして、
耳元で「加賀見さん、もちろん、廃棄ですよね。
このフォルダは????違いますか?」
と優しい声が聞こえてきた。
「はっ直ちに処置いたします」
と加賀見は、答えた即座に行動に移した。
優しい声とは裏腹に身体が苦しかった。
脳裏をよぎる無念な気持ちに後ろ髪を引かれたが、
命には替えられなかった。
「よろしい、私のだけでなく、他のフォルダもお願い」
とのささやきが聞こえ、これも即座に実行した。
加賀見はPCをリュックにしまい、背負うと、さて、
進みますかと織多さんに伝えて、歩き出した。
心なしかその歩みは、弱々しく感じられた。
加賀見さんのせいで!」
と織多さんが歩きながら、加賀見に話しかけた。
「どうしましたか?」
と加賀見が不思議そうに尋ねた。
「いや、何て言うのか、こんな状況ですから、
もっとこう、不安とか悲壮感に覆われて、
絶望してるはずなのに、何かこう、
心がモヤモヤしてるというか釈然としないというか、
そんな感じなんですよ。そもそも加賀見さんは、
地球に帰れると思っているですか?」
と織多さんが現在の気持ちを加賀見にぶつけた。
「それは、不時着した母船の状況次第ではないでしょうか?
それに戻らないと織多さんお薦めの漢方が入手できませんから」
とにこやかに笑って、答える加賀見だった。
「そっそうですけど、なんかもう話しても釈然としません」
とどうも現状の気分に納得できない織多さんが不満げに答えた。
その後、二人は、しばらく無言で歩いていた。
物資まで最短距離を歩いているが、距離はかなりあるため、
休憩を挟みながら、移動していた。
「織多さん、ちょっと待ってください」
と加賀見が立ち止まった。
「どうしました?異形種ですか?」
と織多さんが緊張感のない声で答えた。
「いえ、あそこにリュックらしきものが見えませんか?」
「あっ、確かに。でも割れたバイザーの破片らしきものも見えますね」
おそらく、異形種に殺害された探索者であろう。
遺体は、異形種によってどこかに搬送され、不必要な物が
置き捨てられたのだろうと二人は予想した。
「一応、確認しておきましょう。
何か役立つものがあるかもしれませんよ、織多さん」
と加賀見は言って、リュックの方に向かった。
リュックとその中にあった古い自作のPCを見ると、
二人は、目を閉じて、手を合わせて、冥福を祈った。
死んだであろう元宮のために。
「ふう、元宮さんは、生き残れなかったんだ」
と織多さんがぽつりといった。
異形種に叩き割られたのだろうか、バイザーの破片は、
飛散していた。どうしてこうなったのか、二人には知る由もなかった。
加賀見は、PCを起動させた。パスワードは、元宮が教えてくれていた。
『何してる、仕事ご苦労さん』とローマ字で打ち込むが、エラーを表示した。
???どういうことだ。嘘を教えたのか?加賀見が考えていると、
織多さんが、「何してる、仕事ご苦労さんがパスワードなんですか?」
と聞いてきた。
「そうですよ。元宮さんが以前、教えてくれました。
それをローマ字で打ち込んだのですが、エラーを表示しているんです」
「うーん、数字で724106、45105963とか数字遊びしてるのかな?」
と笑いながら、加賀見に背中から、腕を回して、ポチポチーとキーボードに打ち込んだ。
「ちょ、織多さん。パスワードはミスできる回数が、、、あっ」
PCは起動し始めていた。背景に尾賀の下着姿が映しだされていた。
そして、加賀見というフォルダが目に付いたためにクリックして、
開けてみた。
メモ帳に『read me』と書かれたファイルがあり、加賀見は開けた。
『これを読んでいるということは、僕がPCを無くしたか、
死んだかで加賀見さんが、手に入れたのでしょう。
他のフォルダにも役立つものがありまので、役立ててください。
ここのフォルダは特に役に立ちますが、絶対、女性に閲覧禁止です。
事務局の指示があったため、加賀見さんと織多さんを残して、
私は、母船に向かうことになるでしょう。
まあ、尾賀と一緒では、到着できる可能性は相当、
低いでしょうけどね。
私は、探索車両から置き捨てられて、異形種と相見えるのが
恐ろしかったのです。
もし、このPCを見ているなら、二人は生きているはずです。
必ず生還してください。
探索車両から置き捨てたお詫びにはなり得ませんが、
地球に戻ったら、私の遺産を相続してください。
ついでに各種解約もお願いします。
遺書は別のフォルダにありますので、ご確認を。
織多さんと幸せになれるように祈っております』
下位のフォルダには、ミラーワールド109号に
乗船していた美人どころの名前が記載されていた。
加賀見は嫌な予感がして、そのフォルダを開けずに
他のフォルダに移ろうと思ったその矢先、織多さんが
自分の名前のフォルダを開けた。
そして、動画を再生してしまった。
再生されている動画は、お互いに下着姿で加賀見が
織多さんの後方から、逸物を彼女のお尻に擦り付けていていた。
そして、いやらしい声と吐息を吐いていた。
そして、我に返った織多ささんが「ぎゃあああぁー」
と叫び、加賀見を放り投げていた。
そして、動画が停止した。
加賀見を後方から羽交い締めにして、
耳元で「加賀見さん、もちろん、廃棄ですよね。
このフォルダは????違いますか?」
と優しい声が聞こえてきた。
「はっ直ちに処置いたします」
と加賀見は、答えた即座に行動に移した。
優しい声とは裏腹に身体が苦しかった。
脳裏をよぎる無念な気持ちに後ろ髪を引かれたが、
命には替えられなかった。
「よろしい、私のだけでなく、他のフォルダもお願い」
とのささやきが聞こえ、これも即座に実行した。
加賀見はPCをリュックにしまい、背負うと、さて、
進みますかと織多さんに伝えて、歩き出した。
心なしかその歩みは、弱々しく感じられた。
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