81 / 179
危険作業
しおりを挟む
尾賀から説明を受けた加賀見は、
深くため息をつき、織多さんは、
瞳を閉じて呼吸を落ち着けていた。
「小型探索機で作業状況は
監視されているんでしょうね」
と加賀見が言うと、
「異形種も当然の如く現れるよね」
と織多さんが言うと、
「探索車両と外部で異形種を攻撃します。
一名は作業者の護衛、もう一名は周囲の警戒。
それと、事務局との交信対応」
と尾賀が説明した。
「放射器を用いての作業は、
事務局の指名で加賀見、あなたです。
作業者の護衛は近接戦闘能力の高い織多で、
私は車内からの周囲の警戒、
元宮は、事務局との交信対応ね。
一旦、外部作業者は小休止を取り、
作業をはじめて、いいわね!」
と尾賀が命令を下した。
加賀見と織多さんは、尾賀の指示を受け入れ、
食事をしながら、作業の進め方について、話し合いをした。
「基本的には、火力を抑えて、
探索車両に付着した異形種の体液を
乾燥させるということです。
彼らに火は有効ですから。
注意すべきは探索車両にダメージを
残さないことになりますね。
おそらく左程の時間はかからないと思います」
加賀見は、自分がイメージした
作業のあらましを織多さんに話した。
「そですねー。火炎が異形種は苦手そうですから。
作業中、私は薙刀で周囲を警戒して、
少数だったら、撃退ですね。
大量発生の場合は、車両に戻って、全速前進ですよね。
でも、あのおばさんが待っていてくれのかな。
さっきから加賀見さんのことまで
呼び捨てにして、全く何を勘違いしていることやら」
と織多さんは、尾賀に対して隔意を露わにした。
加賀見はそんな織多さんをなだめつつ、
作業の準備を始めた。
織多さんもとりあえずは、不満を抑えて、準備を始めた。
「ふん、織多は当然としても
加賀見も意外と甘いわね」
と周囲を警戒しながら、元宮に話かけた。
「と言いますと?」
元宮には何のことか分からず、問いかけた。
「事務局からの告知を確認もせずに
粛々と私の指示に従っているからよ。
ふん、所詮は、要領の良い無知な学生と
職を転々とする無能な契約社員ね。
海千山千の爺を相手に企業でしのぎを
削っていた私と比べるすべもないわ。
特に織多は、先ほどの件を死ぬ程、
後悔させてやるわ」
と尾賀が珍しく感情を高ぶらせて、
元宮相手に話続けていた。
元宮は内心、あの二人がいなければ、
早々に事務局に役立たずとして、
ジェットプロダクションカンパニーのように
処理されていたであろうと思いつつも、
適当に相槌を打ちながら、やり過ごすことにした。
「元宮、事務局の伝達だと、
この場に探索車両を留めよとは
言っていなかったわね。
つまり、外部での除染作業が完了すれば、
進めるだけ進んで残りは徒歩という解釈」
と尾賀が、二人への呪詛、主に織多さんへの
話から突然、何かをひらめいたかのように
話題を転じた。
「はあ、確かにそうですね。
そのように受け取っていいじゃないかと思います」
と元宮が気のない返事をした。
元宮は、ここ1~2日の過度な疲労から、
思考が安定していないのか突拍子ない方向へ
彼女の話が進まぬことを祈るばかりだった。
外部には、さきほどまで、散発的とはいえ、
現れていた異形種が現れなくなっていた。
気味が悪いほど均一に揃っている草原の草が、
メトロノームの振り子のように規則的に
ゆらゆらと揺れていた。
そんな風景に見慣れてしまったのか
なんの感慨も沸かず、加賀見は、無言で
尾賀と元宮に合図をすると、外部へ降りた。
先行して降りた織多さんが安全を
確認できたのか、目線が合うと軽く頷きあった。
「さてと、仕事を始めますかな。
特殊勤務手当扱いでも会社に請求しますかね」
と加賀見がつぶやくと、織多さんが、
「ううっ、羨ましい。事あるごとに
手当てが請求できるなんて。学生は
単位のために頑張ります」
と泣き言を言っていた。
「まあ、契約ですから、比較的自由な時間が
ある学生さんと違って、死活問題ですので、
請求できるものは請求しますよ」
車両内で、尾賀が、
「元宮、あの二人のくだらない会話を
止めなさい。早く作業に入るように
伝えなさいと」
といらいらしながら、言った。
「はいはい、お二人さーん、
社会の世知辛い話は、母船で
話すこととして、早く作業を
進めてくださいね」
と元宮がおどけた調子で二人に連絡した。
深くため息をつき、織多さんは、
瞳を閉じて呼吸を落ち着けていた。
「小型探索機で作業状況は
監視されているんでしょうね」
と加賀見が言うと、
「異形種も当然の如く現れるよね」
と織多さんが言うと、
「探索車両と外部で異形種を攻撃します。
一名は作業者の護衛、もう一名は周囲の警戒。
それと、事務局との交信対応」
と尾賀が説明した。
「放射器を用いての作業は、
事務局の指名で加賀見、あなたです。
作業者の護衛は近接戦闘能力の高い織多で、
私は車内からの周囲の警戒、
元宮は、事務局との交信対応ね。
一旦、外部作業者は小休止を取り、
作業をはじめて、いいわね!」
と尾賀が命令を下した。
加賀見と織多さんは、尾賀の指示を受け入れ、
食事をしながら、作業の進め方について、話し合いをした。
「基本的には、火力を抑えて、
探索車両に付着した異形種の体液を
乾燥させるということです。
彼らに火は有効ですから。
注意すべきは探索車両にダメージを
残さないことになりますね。
おそらく左程の時間はかからないと思います」
加賀見は、自分がイメージした
作業のあらましを織多さんに話した。
「そですねー。火炎が異形種は苦手そうですから。
作業中、私は薙刀で周囲を警戒して、
少数だったら、撃退ですね。
大量発生の場合は、車両に戻って、全速前進ですよね。
でも、あのおばさんが待っていてくれのかな。
さっきから加賀見さんのことまで
呼び捨てにして、全く何を勘違いしていることやら」
と織多さんは、尾賀に対して隔意を露わにした。
加賀見はそんな織多さんをなだめつつ、
作業の準備を始めた。
織多さんもとりあえずは、不満を抑えて、準備を始めた。
「ふん、織多は当然としても
加賀見も意外と甘いわね」
と周囲を警戒しながら、元宮に話かけた。
「と言いますと?」
元宮には何のことか分からず、問いかけた。
「事務局からの告知を確認もせずに
粛々と私の指示に従っているからよ。
ふん、所詮は、要領の良い無知な学生と
職を転々とする無能な契約社員ね。
海千山千の爺を相手に企業でしのぎを
削っていた私と比べるすべもないわ。
特に織多は、先ほどの件を死ぬ程、
後悔させてやるわ」
と尾賀が珍しく感情を高ぶらせて、
元宮相手に話続けていた。
元宮は内心、あの二人がいなければ、
早々に事務局に役立たずとして、
ジェットプロダクションカンパニーのように
処理されていたであろうと思いつつも、
適当に相槌を打ちながら、やり過ごすことにした。
「元宮、事務局の伝達だと、
この場に探索車両を留めよとは
言っていなかったわね。
つまり、外部での除染作業が完了すれば、
進めるだけ進んで残りは徒歩という解釈」
と尾賀が、二人への呪詛、主に織多さんへの
話から突然、何かをひらめいたかのように
話題を転じた。
「はあ、確かにそうですね。
そのように受け取っていいじゃないかと思います」
と元宮が気のない返事をした。
元宮は、ここ1~2日の過度な疲労から、
思考が安定していないのか突拍子ない方向へ
彼女の話が進まぬことを祈るばかりだった。
外部には、さきほどまで、散発的とはいえ、
現れていた異形種が現れなくなっていた。
気味が悪いほど均一に揃っている草原の草が、
メトロノームの振り子のように規則的に
ゆらゆらと揺れていた。
そんな風景に見慣れてしまったのか
なんの感慨も沸かず、加賀見は、無言で
尾賀と元宮に合図をすると、外部へ降りた。
先行して降りた織多さんが安全を
確認できたのか、目線が合うと軽く頷きあった。
「さてと、仕事を始めますかな。
特殊勤務手当扱いでも会社に請求しますかね」
と加賀見がつぶやくと、織多さんが、
「ううっ、羨ましい。事あるごとに
手当てが請求できるなんて。学生は
単位のために頑張ります」
と泣き言を言っていた。
「まあ、契約ですから、比較的自由な時間が
ある学生さんと違って、死活問題ですので、
請求できるものは請求しますよ」
車両内で、尾賀が、
「元宮、あの二人のくだらない会話を
止めなさい。早く作業に入るように
伝えなさいと」
といらいらしながら、言った。
「はいはい、お二人さーん、
社会の世知辛い話は、母船で
話すこととして、早く作業を
進めてくださいね」
と元宮がおどけた調子で二人に連絡した。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる